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シエナ(イタリア)
シエナには2回行った。初めての時はドゥオモやカンポ広場など、この古い町の中をひととおり見物しながら歩いた。中世の町並みの中は坂道が続く。カンポ広場に出ると5月の風が身を切るような冷たさだった。この広場で毎年競馬が行われるということは知っていたが、実際にその広場に立ってみて半信半疑でならなかった。どう考えても競馬が行われるような環境には見えなかった。私たちの旅はガイドを伴ってはいないので、このように半信半疑のままの旅になることもある。

この旅を終えて数年後、テレビでこの広場での競馬の様子を見て納得した。レンガを敷き詰めた広場なのだが、そこに砂を敷き詰めて競馬が行われていたのだ。

2度目の旅では、その映像を思い浮かべながらカンポ広場を眺めると、その競馬の光景が目の前に蘇ってくるような気がした。2度目でやっと納得してこの広場を眺めたのだった。考えれば無駄の多い旅を繰り返しているのかもしれないと思ったが、それは私たちの流儀なのだから仕方がない。シエナの町を出てふり返ると、小高い丘の上に独特の縞模様をほどこしたドゥオモの塔が見えた。初めての時は坂道が多い町という印象だったが、遠くからこの町をながめて、やっと全体のたたずまいが理解できた。

同時に「木を見て森を見ず」という慣用句が思い浮かんだのだった。

カンポ広場


シエナ遠望

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