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ネッカーゲミュント(ドイツ)
シカゴを経由してフランクフルトに着いたのはまだ朝の早い時間だった。シカゴで大西洋路線に乗り継ぐための約6時間の待ち時間を含めると、成田から約26時間かかったことになる。長時間のフライトは疲れるが、疲れよりも長時間空を飛んでいる楽しさの方が私の場合は大きい。それに、この時は帰りにニューヨークにも寄りたかった。

フランクフルトでは予約したローバーが用意されておらず、フィアット・ブラヴァで出発したのは10時を過ぎていた。ハイデルベルクは知っているので通過し、まだ走ったことのない道を行こうとネッカー川沿いに走らせると、昼過ぎにネッカーゲミュントという小さな町に着いた。街角のレストランでホワイトアスパラガスのフェットチーネと白ワインだけの簡単な昼食だっ
たが、やっとヨーロッパに着いたという満ち足りた気分が湧いてきたのだった。

食事の後、ネッカー川に出てみるとまぶしいほどの5月の光だった。川岸に座って男がひとり本を読んでいた。ボートが川面を滑るように通り過ぎていくと、あたりはまた静寂さに包まれた。長いフライトの後そのまま空港から車を走らせてきた疲れも一瞬のうちにその静寂の中に消えていった。

この町には昼食のためにわずかな時間しか滞在しなかったが、後になってみると記憶に残る町になった。「ドイツ」という言葉からは、いつもこの町のネッカー川の風景と澄んだ空気のにおいが蘇ってくる。
  対岸にホテルが見えたので、この町に泊まってもよかったと後になって思う。    

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