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ミューレン(スイス)
ここは小さな村だ。村の住人は車で登ることができるが,外部の人は麓のラウターブルンネンから電車で登らなければならない。この電車の運転士とはすぐ顔なじみになった。滞在したホテルは線路脇にあり,ホテルの前を通るとき,彼はいつも手を振って通り過ぎた。

滞在2日目にはシルトホルンにケーブルカーで登った。約3000mの山頂からはアルプスが一望できた。ユングフラウ,メンヒ,アイガーが連なる風景はさすがに世界の観光地として十分な眺めだった。夜は村のレストランに通った。レストランのウェイターたちともすぐ顔見知りになり,この村の住人になったような気がした。

ホテルには一人の男が滞在していた。彼は,僕らが着いた日にも翌日にも電車の到着に合わせて駅へ出かけて行った。誰かを待っているのだが,待っている人はなかなか現れない様子だった。ホテルの喫茶ルームで彼と一緒になったので話しかけたが,貝の中に閉じこもっているようで心を開くことはなく,とりつく島がなかった。3日目に喫茶ルームで女性と一緒にいる彼の姿を見つけた。待っていたのはこの人だったのだと分かった。人ごとながら,ほっとした思いだった。

この村を発つ日,チェックアウトをすませると,このホテルのオーナーの息子で中学生ぐらいの男の子が,はにかみながら手押し車に僕らのカバンを積んで駅まで運んでくれた。5月も終わりに近いこの時期は,スキーシーズンが終わって観光客は少なく,ホテルもほとんど閉まっていた。そのため,3泊4日の短い滞在だったが,この村の住人になったような気分で普段着のスイスを楽しんだ。

左からアイガー,メンヒ,ユウグフラウ


いつも運転士は手を振って通り過ぎる。

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