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モンフォルテ・デ・レモス(スペイン)
ラ・コルーニャから列車でこの街に到着した。トーマス・クックの時刻表によれば,ここでビーゴから来る列車の1等寝台に乗り換えてパリへ向かうことができるはずだったが,実際にはその列車は1等寝台を連結していなかった。夜9時を過ぎていたので寝台車はあきらめて駅前のホテルに泊まり,翌日の列車に乗ることにした。

駅前には何もなかった。建物は並んでいるのだが,商店などはすべてシャッターを下ろしていたし,ネオンのようなものも全くなく,1軒のホテルがあることがかすかに分かる暗さだった。一つ星のホテルだが,このホテルに泊まるしかない。食事もこのホテルのレストランで食べるしかない。

チェックインしてレストランに降りていくと先客が二組食事をしているだけだった。メニューはスペイン語だけで,残念ながら見当もつかない。しかし,なんとかヴィーノティント(赤ワイン),ポークソテー,野菜サラダ,ソパを頼むことができた。

ウェイトレスは明るい性格で,とても感じがいい女の子だった。客は少なく彼女は暇そうで,厨房の人を相手にさかんに履いている赤い靴の自慢をしていた。今日買ったばかりの靴のようで,うれしくて仕方がないという様子だった。

食事の後,隣の雑然とした部屋で軽く飲むことにした。ここも彼女の担当のようで,明るい性格はこちらにも伝染して,気分が明るくなった。年の暮れ

駅のホームで。何の変哲もない写真だが,この街の名前を記録しようと撮った。この街はこの写真1枚しかない。


だったので,持っていた日本の民芸調のカレンダーを彼女にプレゼントした。彼女は目を丸くして「フォー・ミー!?」と叫び,喜びを体全体から発散させているようだった。

しばらくして,彼女はなみなみとウィスキーを注いだグラスを私たち2人にプレゼントと言って持ってきた。グラスは大きく,その量に驚いた。とても飲みきれず,部屋に持って帰ったがそれでも飲みきれなかった。

このウィスキーは効いた。翌朝はまったく食欲がなく,コーヒーとコーラだけの朝食となった。何もない街だった。しかし,この女の子のことを忘れることはできない。

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