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ハイデルベルク (ドイツ) |
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この時の旅は,フィルムカメラに標準レンズと望遠レンズを持っていた。リューベックからマインツへ向かう列車の中で,不注意で望遠レンズを床に落とした。「ガシャッ」といやな音がした。あわててケースから取り出し,レンズを見るとひびが入っていてもう使い物にならないことは明らかだった。 ハイデルベルクに着いたのはこの出来事の2日後だった。このレンズのことが気になって仕方がない。この街なら直してくれるところがあるのではないかという気がして,かすかな望みを持っていた。有名な古城に向かう途中に写真店があったので,そのレンズを見せて修理してくれるところを知らないかとたずねると,「Krinik」という店の住所を教えてくれた。カメラ修理を専門にしているところのようだった。 なかなかたどり着けず,学生たちに何度もたずねた。やっと見つけたその店は,狭い階段を上った2階にあり,小さな古びた実験室のようなたたずまいで看板もなかった。出てきた男は神経質そうな顔立ちで陰気な感じがした。壊れたレンズを手に取り,3時に来てくれと言う。はたして直るのかどうかはっきりしなかった。 城を見た後,食事をして3時にその店に行ってみると,彼は約束通りきちんとレンズ修理を終えていた。ドイツ人の技術力に頭が下がる思いだった。場合によっては,レンズの修理が終わるまで,このハイデルベルクで延泊せざるを得ないかもしれないと覚悟を |
ハイデルベルク城の城門 決めていたが,その必要はなく,この夜スイスへ向かって出発することができたのだった。 ハイデルベルクといえば赤い屋根の家々,哲学の道,ハイデルベルク城だが,私にとってはなんといってもカメラ修理の「Krinik」。 |