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ハノイ(ベトナム)
ハノイの旧市街を歩くと懐かしい思いに包まれた。日本では街路樹がそろそろ色づき始めている季節だったが、街には緑があふれていた。

おびただしいバイクの群れに圧倒されながら旧市街に足を踏み入れると、デコボコの歩道の両側に小さな商店が軒を並べていた。通りではときどき天秤棒をかついだ女性と出会ったりした。両方の籠に入っているのはさまざまで、果物や花だったり、日用雑貨品だったり、中には女性の下着だけをぎっしり詰め込んでいる姿も見かけた。しかし、歩いている姿を見かけることは多くても、道ばたで店を広げている姿などはあまり見かけなかった。彼女たちはあるいは一日中歩き続けているのではないかとさえ思われた。

道ばたにはしゃがんで名物のフォーや揚げ物・焼き物などを作っているおばさんがいた。ときどき、靴磨
きの道具を持って「シューシャイン、シューシャイン」と声をかけながら歩いている男たちにも出会った。一方で、男たちは道ばたにぼーっとした感じで所在なげに立っていたりする姿を見かけることも多かった。自転車の後ろではなく、前に車椅子のような客席がついたシクロという三輪車はこれまで見たこともない乗り物だった。

天秤棒の女性やシューシャインの男、シクロの男たちは目があったりすると、はにかむようなまなざしで声をかけてくるのだが、しつこい感じなどは全くなく、断るとあっさりと引き下がるのがベトナム風という感じだった。

近代的な街並みの都市では決して感じられない風景がそこにあった。人々の姿があった。懐かしい思いを喚起させてくれる街だった。

旧市街には懐かしさがあった。

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