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フロム(ノルウェー) | ||
私がもっとも嫌いなのは,荷物を持って歩くことだ。列車で旅行するときは,あらかじめ2〜3日後に到着する目的地へカバン類を駅から送ったり,駅のロッカーに預けたりし,小さな荷物だけを持って動き,また自分のカバンと出合う。ヨーロッパの鉄道に信頼を裏切られたことはなく,一度もカバンが行方不明になったことはない。 この日はオスロからフィヨルドを見に1泊2日の小旅行に出かけた。カバン類はオスロ駅のロッカーに預けて,小さなバッグに最低必要なものだけを持って。 目指したのはソグネ・フィヨルド。ミュルダールで本線から乗り換え,急勾配の鉄路を下ってフロムに着いた。駅の前はすぐフィヨルド。終着駅とはいっても小さな村にすぎず,連絡船で渡る対岸の方が少し大きな町らしいように見えた。 この村に泊まることにしてフィヨルドに沿って歩いていくと小さなホテルが1軒見つかった。 |
フィヨルドの朝。さざ波ひとつなかった。 |
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このホテルでの夕食は,マダムが気を利かせてほかの泊まり客と一緒にひとつのテーブルに座ることになった。泊まり客は多くはなく,私たちはアメリカ人のご夫婦と一緒のテーブルだった。一緒におしゃべりをしながらの食事は,豪華なメニューとはいえなかったが楽しかった。食事の後一緒に散歩に行こうということに | なり,フィヨルドを見ながら4人で周辺を散歩した。とりとめのない話をしながら歩いた村は,これ以上静かな風景はないのではないかと思えるほど静かだった。フィヨルドは海というよりも山の奥の湖のように静まりかえり,村は静かさに包まれていた。遠くからかすかにカウベルの音だけが聞こえてきた。 |