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シンプロン・エクスプレスの寝台車 | |
ある年の12月31日の夜,スロベニアのリューブリアーナからパリ行きのシンプロン・エクスプレスに乗り込んだ。ワゴンリーを連結していることが分かったので,これに乗ることにした。 ワゴンリーには車両ごとにホテルのバトラーのような係員がいる。前もって予約はしていなかったが,彼は無理を聞いてくれた。 列車は約2時間遅れですっかり暗くなってから到着した。待ちくたびれたので乗り込むとすぐリューブリアーナで買ってきたサンドイッチと1リットルのワインを開けてMとニューイヤー・イブのささやかな食事となった。ワインを飲み干し,持っていたスコッチを飲み始めたころにはすでにイタリアに入っていた。 新年まであと15分。Mは酔いつぶれてしまって,2段ベッドの上段へとはい上がっていった。もう少しで,「Happy New Year」の乾杯ができるというのに! そして時計は0:00を刻む。闇の中をパリへ向かって疾走するシンプロン・エクスプレスの中で,ひとり「新年おめでとう!」とつぶやいた。やがて列車はベネツィア・メストレ駅に到着し,哀調を帯びた女性のアナウンスが駅の構内に流れていた。爆竹がバーン・バンと響きわたった。 |
![]() 窓はフェルトのブラインド,床はカーペット。この絵は遠近法が少しおかしい。 翌1月1日の早朝,前もって頼んでおいたのにもかかわらず,車両のバトラーは降車駅のディジョンに到着寸前になって起こしに来た。ばたばたと荷物をまとめ,Mは歯ブラシをくわえたままホームに降り立った。このときほどあわてたことはない。 |