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国境を越える
日本から陸路で国境を越えることはあり得ないから,そのような経験をしたことはなかった。

かつてはヨーロッパに行って,車で国境を越えるときは緊張した。パスポートをチェックされるのは当然だが,トランクの中の荷物を調べ,車体の下まで鏡でのぞいて調べられたりする国境もあった。とがめられるようなことは何一つないはずだから正々堂々とした態度でいても,「すんなり通してくれ」と思わず祈るような気持ちになったこともしばしばだった。なにしろ国境警備員は自動小銃を手にしている。どこでどんな誤解が生じるか分かったものではない。

しかし,ヨーロッパの統合が進むにつれて次第に緩やかになってきて,EUが誕生した後は全くフリーパスになった。かつての国境の施設は無用のものとなった。わずかに速度規制の標識があるくらいで,人も物も自由に国境を越える時代がやってきた。犯罪者やスパイでさえも。

最近は国境を越えるたびに,何か物足りないような拍子抜けするような感じになったりすることもあるが,「自由」という人類の理想へ向かって一歩前進したことを実感する。同時に「統合」という壮大な実験に挑むヨーロッパの先進性を改めて感じないわけにはいかない。

オランダからドイツへ国境を越える。誰もいない。

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