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ル・ノルマンディー のディナー(2)
バンコクでの楽しみのひとつは,このレストランでのディナーだ。このレストランに行くためにバンコクに行くという感じがしないわけでもない。このときのディナーは多分8回目だった。この夜,ペニンシュラからオリエンタルホテルに着くと,肩を出したドレスのMはアレルギーによるくしゃみをし始めた。テーブルに案内された後もくしゃみをしている。

アペリティフのシャンパーニュを飲みながら,セットメニューにするかアラカルトから選ぶか迷い,結局セットメニューを頼んだ。メニューはフォアグラ,オマールエビ,タルボ,ピジョン,チーズ,デザートと続いていて,それぞれの料理に合ったグラスワインがセットになっている。

くしゃみをしているMを見て,顔見知りのウェイターは,「マム,冷房が寒いですか? 風邪ですか? 温かいものをお持ちしましょう」と戻って行った。何を持ってくるのだろうと思っていると,ティーカップに熱いお湯を入れて持ってきた。お湯とワインと料理という奇妙な組み合わせの食事となった。お湯がなくなると,また注ぎ足してくれる。そのお湯の効き目のせいかどうか分からないが,Mのくしゃみがとまった。このお湯は,このレストランのサービスの奥ゆかしさの一端のように感じられた。この夜の料理の中では,私には特にタルボが素晴らしい味だった。

このノルマンディーは格式の高いレストランなので,

ペニンシュラホテルから見下ろすオリエンタルホテル。ノルマンディーは正面の最上階。



かつては少し緊張感を味わいながら食事をした。その緊張感がむしろ心地よいと思ってきたのだが,今回は違った居心地のよさを感じた。緊張感のかわりに心底までリラックスした気分での食事を楽しんだ。格式の高いレストランというものは,本当にゆったりとくつろげる雰囲気を作っているレストランのことなのではないかという気がしてならなかった。

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