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What a wonderful world.
バンコクのペニンシュラホテルの玄関脇には「The Bar」というこのホテルのメインバーがある。

レストランでディナーを終えたあと,あるいはチャオプラヤ川対岸のオリエンタルホテルで食事をして戻ったときなど,飲み足りない感じがした場合にふらりと入ることが多い。

このバーは,オリエンタルホテルの「バンブーバー」に比べると素っ気ない感じがする。カウンターのほかにテーブル席が数席あり,男性ヴォーカルのピアノの弾き語りがあるが,女性ヴォーカルのJazzライブがアジアの濃密な空気を漂わせるオリエンタルホテルに比べれば,エンターテイメントは簡素だ。雰囲気は無機的だし,バンコクにいるという感じがしない。ここがNYかシカゴといってもおかしくはない感じだ。

このバーは私たちにはとてもなじみの店だ。ふらりと入っていくと,ピアノを弾きながら歌ういつもの男性はすかさず私たちの姿を見つけてにっこりほほえみ,「日本の方がいらっしゃったから,次は日本の歌を歌いましょう」などと言って,「愛しのエリー」を歌い始めたりする。

歌い始めると,彼はいつも私たちのことを思い出すようだ。すると,きまって彼は私たちが好きなサッチモ





の「What a wonderful world」をサッチモの歌声そっくりに歌い出すのだ。あまりにもサッチモに似ているので笑ってしまい,いつも大きな拍手を送る。この歌は彼と私たちのそれぞれの記憶を結びつける糸のようなものかもしれない。休憩時間になると彼は私たちの席にやってくる。そこで改めて再会をお互いに喜びあい,夜が更けるのを忘れてしまうのだ。

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