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滑走路へ落ちていく!
プエルトリコを飛び立ったプロペラ機は約20人ほどの乗客で満席だった。離陸するまでに乗客は体重の程度によって座る場所を指定され,バランスがよくなったところで出発した。操縦席との間はカーテンがあるだけ,しかも開けっ放しで,おおらかなフライトだ。

約1時間のフライトでセントバーツの空港に着陸する態勢になった。この空港は滑走路の先端に小高い山がありもう一方の先端は砂浜ですぐ海になる。カリブ海はいつも貿易風が東から西へ吹いており,この空港の場合は海から山へ向かって吹いている。飛行機は風に向かって離着陸するから,着陸時には山のほうから進入する。しかしこの山がじゃましているのでふつうの滑走路に進入するような角度では不可能だ。そこで飛行機は山を越えてから急降下して地面が近くなったところで急いで体勢を立て直し,滑走路へ着陸する。

この空港のことは「スリル満点のG体験」などと旅行ガイドブックなどにもでており,このフライトがこのときの旅のもっとも大きな楽しみのひとつだった。

飛行機は機首を大きく下げた。乗客は固唾をのむ雰囲気で,全員が座ったまま座席は下を向いた格好になった。いよいよ滑走路へ向かって降下していくのではなく,落ちていくのだ。たぶんエンジンは停止しているのだろう。風の音だけになった。しかし,落ちる速度は意外に遅い。風圧のせいで,少し物足りなく思えるほど落下の速度は遅い。やがて地面に接近したところで機首を上げ,無事着陸した。機内にぱらぱらと拍手が起こった。

飛行機から降りると,果物のにおいが混じったようなにおいがするカリブ海の暑さだった。

小高い山のほうから見た滑走路。ここで見ていると飛行機は頭上を急降下して滑走路をめがけて落ちていく。


カーテンが開いたままなので,操縦席がよく見える。

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