ドーハの出来事


2006年の夏はどこにも行かない予定であった。
左目が白内障にかかり、6月中旬にはほとんど左目が見えない状態であった。
手術の予定が8月下旬だったので、左目を考えると旅ができる状態ではなかった。
6月下旬、病状が急速に悪化したため、7月下旬に緊急に手術することになった。
そのため術後の経過次第だが夏休みに旅にでることが可能になった。

イスタンブール便のチケットを捜していたら、10万円というバカ安チケットが出てきた。
関空発ドーハ経由イスタンブール行き。
これだけ安いと第1希望日はアウト、第2希望日で席が取れた。
最近、原油高騰のあおりを受けてサー・チャージという名目で結構な額が上乗せされるのだが、カタール航空は産油国というのもあり8,000円と、他社と比較しても安い設定となっていて、空港使用料など含めても12万円を切る額であった。


8月16日深夜、関西空港。
待合室で待っている人を見ているとビジネス客はわずかで、ほとんどが観光客である。
夏休み中というのもあるが、石油以外のビジネスでどれだけ需要があるのだろうか?
ほぼ満席で離陸。イスラム圏の航空会社なのでアルコールサービスが無いのかと思っていたが、ちゃんとビールもワインも積んでいた。
10時間のフライトでカタールの首都ドーハ着。


ドーハと言えば、日本人にとっては93年サッカーワールドカップ予選でロスタイムにイランに同点に追いつかれ初のワールドカップ出場が夢と消えたという「ドーハの悲劇」で有名だが、これ以外には何も無いという国である。


カタール。アラビア半島のアラビア湾に面した秋田県ほどの広さで、人口約75万人の国。ちょっと調べてみたが観光というか、観光ポイントらしきものはほとんど無い。

旅行記でもトランジットの合間のカタール航空の市内観光バスサービスのルートの報告が大半である。
ラクダ市場ぐらいは面白そうだが、それ以外はショッピングモールや地元市場である。
ガイドブックを見ても、カタールの紹介は基本的なことしか書いていない。


今回のチケットだがイスタンブール便の接続が悪い日で、ドーハで30時間のトランジットとなってしまった。
最初、どうしようかとも思ったが・・・こういうことでもないとカタールという国に行くこともないだろうからチャンスだと思うことにした。
24時間以内ならカタール航空でホテルの手配をしてくれるのだが、30時間だとトランジットではなく入国しなければならないし、ホテルも自力で手配しなければならない。

入国時にVISAは必要だが、イミグレーションのカウンターで55QR(1カタール・リアル=約30円)をクレジットカードで支払っておしまい。入国カードもないし写真も不要。
パスポートに挟まっているのはクレジットカードの領収書だけ。
荷物をピックアップして出ると、学校の教室ぐらいの空間が一つ。
そこには「リッツ・カールトン」などの各ホテルのカウンターがいくつか、銀行が一つ


午前5時前なので殆ど閉まっている。それにインフォメーションが無い。そして外、夜明け前なのに相当な暑さと湿度。
困ったなぁ〜、両替はとりあえず米ドルがあるので何とかなるかな。
ホテルどうすればいいのか、見当がつかない。
時間を潰すスペースなど無い・・・タクシーは何台か待っているが、自分がどこへ行けばいいのかわからないのに乗るわけにもいかない。
観光客などこないので客引きという概念などないのであろう。

出口のところで突っ立っているオヤジに声をかけてみた。
「どこかホテル知らないか?」
「おまえはホテル予約していないのか?」と驚いた顔をして逆に聞かれた。
一瞬反応にとまどったが「そうだ。できればダウンタウンにあるホテルを教えてほしい。」
オヤジは携帯を取り出してホテルに電話をした。
「4ツ星で600QRならあるが?」
ちょっと高いと思ったが、ボルという雰囲気ではなかった。
断ってもホテル・インフォメーションは無いし、リッツ・カールトンやシェラトンだともっと高くなりそうだ。
どちらにしても私にあんまり選択肢はないようである。
「わかった。それでOKだ。」
と言うと、オヤジは私の荷物を持って歩き出した。
タクシーの運転手と見当をつけていたのだが、そのままタクシー乗り場をすぎ
て、ワンボックスの車が何台も停まっている駐車場にでた。
どうやらホテルの送迎のようである。
「名前は?」「カタールに来た目的は?」などお約束の会話をしながら15分でホテル着。ホテルの名前はメルキュール。
フロントに案内してもらい運転手は去っていった。

ここのホテルのフロントの対応が抜群に良かった。
朝の5時半すぎなのに、3人ほどのフロントにいて、私の対応したホテルマンは、
「すまない。貴方の部屋は9時に用意できる。それまで待っててくれ。」
チェックインは午後からしかダメだと思い、荷物だけでも預かってもらおうと思っていたので、朝9時に部屋に入れるなんてラッキーである。
とりあえず30ドル両替をした、紙幣に書かれた本場のアラビア数字は全く読めない・・・

私は一旦荷物を預けて外出し街を歩いたり、朝ゴハンを食べてもどってきたのが8時前、ソファーに座って待っていたら、件のホテルマンが、声をかけてきた。

「ながらく待たせてすまない。コーヒーか紅茶飲むかい?」と聞いてきたので、
「コーヒー」と返事すると、ホテル内のレストランから出前をしてくれた。
ビックリして「いくらですか?」と支払おうとすると、「いや待たせて申し訳ないのでサービスだ。気にするな。」と笑って言ってくれた。
早朝にやってきた客にここまでの対応をしてくれるとは、ちょっと嬉しくなってしまった。


ドライ・デーな一日

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