第22回
『記憶力を強くする――最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』
池谷裕二/著 講談社ブルーバックス、2001、\980+税
『海馬 脳は疲れない』を読んでますます脳の世界にはまり、この本を読んだ。『海馬』で取り扱っている記憶の仕組みについて、より突っ込んだ内容になっている。もちろんブルーバックスシリーズだから、一般向けにわかりやすく書かれているが、脳科学の最先端における成果が数々紹介されていて、知的好奇心を満足させてくれる。現代の脳科学は、「学習すること」「記憶を蓄えること」のしくみをかなり詳しく解明してきているそうだ(ちなみに、「思い出すこと」についてはまだまだらしい)。それらの行為の際に働く脳の精緻なメカニズムに、改めて驚いてしまう。
それだけでも十分に感動ものだが、さらに、脳の性質に添った記憶力増強法が紹介されていると、実用的効果も期待できる。その中で、強く印象に残ったことを二つあげておこう。1)記憶力にとってストレスは天敵だが、記憶力が増強されれば、ストレスもまた解消される。将来、避けられないストレスに直面するときの備えとして、普段から記憶力を鍛えておきたい。2)生徒がまじめに講義を聴くようになるのは、授業がおもしろくなるからか、生徒にやる気が出るからか。……脳の構造から導き出される答えは、「生徒にやる気が出るから」。なぜそうなのかは本書を読んでいただくとして、つまり、学習する側の意欲や好奇心がまず大切である、というごく当たり前の結論に達する。なーんだ、とがっかりするかも知れないが、その法則がどの年齢にも適用されるとしたら、ぼくたちは大きな可能性を感じるのではないだろうか。
11/7/2002
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