同じ顔で、同じ声で、すごいことを言う。驚いて見ていると、深町さんは笑って言った。
「俺、多分今・・・25の時にあなたと会っても、好きになっていたと思います。いえ、絶
対」
めまいがしそうだった。ていうか、どんな顔をしているか、自分でも分からない。でも
多分赤くなってしまっているだろう。
単純には喜べないけれど、やはり深町さんは深町さんだったと思って、ほっとした。
今日は疲れただろうからと、深町さんを早々に寝室に追いやって、食器を片付ける。
ふと、自分の手を見つめた。
気付かれたのは、やはり自分のせいだろうか。知らず知らずのうちに、感情がしぐさ
に表れていたのかも知れない。
こんな状態なのに、明後日には親と対決しなければならないのだ。
気が重いな、と思った。
次の日は、穏やかに一日が過ぎた。
深町さんも少し慣れてきたようで、ぎこちなさがなくなっただけでも、俺にはとても接
しやすくなった。もちろん、そこに好意があるというだけで、それまでとは全然違うのだ
が。
傷にかからないように髪を洗い、ようやく乾かし終えてさっぱりしたようだ。深町さん
はソファに横になって、テレビを見ている。
ソファの前の、いつも腰を下ろす位置に座ると、少し身じろぎをしたがそのまま横になっ
ていた。少しだけ、いつものように戻ったようで、安心する。
「俺、明日出掛けなきゃならないんですよ。申し訳ないんですけど・・・」
「大丈夫ですよ、俺だって子供じゃないんですから。随分慣れましたし、気にせずに行っ
て来て下さい」
振り返って見上げると、穏やかな笑みを浮かべていた。
上体を起こし、ゆっくりと顔を近付ける。あ、もしかして、と思ううちに、キスされていた。
試すように軽く触れるだけのそれは、それだけで胸を熱くした。もっと、とねだりそうに
なって、慌てて下を向いた。