−8− 

 食事をしながら、気になっていたことを訊ねた。
「あの、速水さんとは、いつから同居を?」
 少し間があって、いずれ同居の件を聞かれると思っていた、というように速水さんは、言い
にくそうに話し出した。
「一緒に住むようになったのは、・・・まだ1年くらいですか。その前から、よく遊びには来てい
たんですけどね」
「俺、自分で言うのもなんですけど、あんまり何もしないでしょう。大変じゃないですか。家事
とか、結構やってもらっているようだし」
 しかし彼はそんなことは、というように、笑って首を振る。
「負担だったら、しませんよ。俺の方が押しかけてるようなものだし。まあ・・・変ですかね、
やっぱり」
 自嘲気味に笑う、その様子に、心の中にもたげた疑問を、はたして口にしても良いのだろ
うか。
「俺・・・俺は、あなたとその、・・・そういう仲だと言われても、別におかしくはないと思う。違っ
たらすいません。実際どうなんですか」
 速水さんは、驚いた様子で押し黙った。不思議なものを見るような目に、早まったかと後悔
する。
「いや、・・・だって速水さんみたいな人と、自分が一緒に居るっていうのは、やっぱり不思議
で。す・・・好き合っているのだったら、不思議でもないなと。変なこと、言ってますか」
「いえ・・・こちらこそ、すいません。そうですよね、深町さんには隠し事出来ない・・・。俺とは、
3年前から、付き合ってもらってます。だからといって、別に気にしないで下さいね」
 本当なら驚くべき事実かも知れない。でもやはり俺はこの人とそういう関係だったと知って、
ほっとしていた。胸のつかえが取れたような気分だ。それとも、俺の体がそれを覚えているの
だろうか。
「気にはしません。口説くかも知れませんけど」
 そう言うと、速水さんは更に驚いて、俺の顔を見つめた。

NEXT 
BACK 
TOP