「自分、副長の兄貴と同期じゃないですか。それでこの前会った時、聞
いたんですよ。やっとお見合いする気になってくれたって、そりゃもう嬉
しそうに言ってました。艦長、副長から何か聞いてます?」
「いや・・・・あれか、親と食事とか言ってたな・・・・」
「何だ、言ってないんじゃ、別に真面目にお見合いする訳じゃなさそうで
すね。親の顔たてて、会うだけ会って断るつもりなんでしょう。それなら
いいいんですけどね」
「・・・・お前も、変わってるな。俺らの心配までして」
「だって、自分副長が気に入ってますから。幸せでいて欲しいじゃない
ですか」
 それじゃあと立ち上がる南波に、俺も食堂を後にした。
 速水とこういう関係になって、もう4年になる。
 バツイチの自分はともかく、35にもなる男がいつまでも独り身というの
は、やはり。速水の親に会わせる顔がない。
 気にはなっていたが、考えないようにしていた。速水がそれでいいとい
うから。彼一人に負担をかけているのではないか ―――――


「台風1号が接近してますね」
 航海長が海図に示す。勢力が弱まり、速度が上がっているので、航路
に影響が出ると言う。
「影響の少ないうちに、充電しておいた方がいいでしょう」
 深く潜っている分にはうねりの影響も少ないが、充電のためにシュノー
ケリングをするとなると、そういう訳にもいかない。
「0300に浮上、充電を行う」
 きっとその浮上で、艦長は起きてきてしまうだろうな、と思いながら言っ
た。
 案の定起き出してきた艦長に、事の次第を説明する。艦長もすぐに同
意し、そのまま艦長室に戻るのかと思ったが、どうやらすっかり目が覚め
てしまったようだ。
―2― 
NEXT 
BACK 
TOP