■Cityscapes■  −4−  
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 雄一郎は寝室に入り、二人分の布団を用意する。祐介が大分参っているのは、予想して
いた事だった。しかし、彼の受けているダメージは、予想以上に大きなものだったのだろう
か。
 自分がここに居ることも、彼には慰めにはなっていないのかも知れない。
――――俺には祐介が必要だけど、祐介にはそうでもないって事か――――
 考えてみれば、祐介はずっと独りで生きてきているのだ。今更、心の支えなど必要とはし
ていないのかも知れない。
 しかし、自分は彼を必要としているのだ。彼のそばに居る為なら、どんな事でもしようと誓っ
た。
 居間のテレビをつけてぼんやりと眺めていると、祐介が風呂から上がってきた。
「・・・・君も入ってくればいい。寝巻きも置いてあるから・・・・」
「ああ、そうする。・・・・じゃあ、借りるな」
 祐介はプレゼントされたマフラーを、コートのハンガーに掛けている。その横顔はやはり、
記憶にあるものよりもやつれて見えた。
「祐介・・・・ここん所、あんまり眠れてないんじゃないか? 温まっててるうちに、早う寝た方
がいい。布団敷いといたから」
「え?でも・・・・」
「いいから、先に寝とけ。俺も風呂出たらすぐ寝るから」
「・・・・すまない」
「何や、謝ることでもないやろ・・・・もう遅いしな。俺は祐介の顔見れたし、別に他に用はな
かったんやから・・・・」
 湯冷めするからと祐介を寝室に追いやって、雄一郎は風呂に入った。
 もしかして迷惑だったかな、と少し心配になる。疲れきっている時は、人と会うのも負担に
感じたりするものだ。
 風呂を出て、台所で水を飲んでから、寝室に入った。部屋の明かりは点いていたが、布団
の中の祐介はもう眠っているようだった。
 常夜灯の明かりを残して電気を消し、布団に入る。少しして、眠っていると思っていた祐介
が、身動ぎをして声を掛けてきた。
「今日は、ありがとう・・・・」
「何で・・・・何もしとらん」
「ううん・・・・俺も、君に会いたいと思ってたんだ。でも、君に迷惑かと思って・・・・そうしたら、
君が来てくれた」
 背を向けていた雄一郎は、慌てて身体の向きを変えて、祐介の顔を見ようとした。
「ちょっと待て、何で迷惑なんや?会いたかったら、会おうとするやろ、普通?」
 自分が感じていた事を、棚に上げて言う。実行する前としてからでは、意味が違うからと、
自分にも言い聞かせる。
 小さなナツメ球の灯りの中窺うと、祐介は顔を少し背けて、半分近く布団に隠れている。
「でも・・・・君も忙しかっただろうし、俺もずっと大変だった。城山社長が亡くなったり、色々あっ
ただろう?それなのに、君に甘えてしまいそうだったから・・・・」
「甘えたらええ、そういう時は。なぁ祐介・・・・俺のこと、好きやないんか?」