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 国道を北へ。この時間、渋滞はないが、ガラガラという訳でもなかった。快調に飛ばして、横
浜へ。本牧埠頭から横羽線に入り、ベイブリッジを渡る。
 BGMはクラシックで、序曲「1812年」。
「どこまで行くんですか?」
 確かにドライブは気持ち良いが、さすがに気になってくる。
「まぁ、気にするな。たまにはいいだろ」
 曲は「スラブ行進曲」で羽田を過ぎ、湾岸道路に入った。東京をあっという間に通り過ぎて、
右手に巨大なテーマパークも見えてくる。こうなったら夜景を楽しむしかないかと、速水も開き
直った。
 湾岸習志野で東関道に入る。すぐにあるパーキングで一休みして、再び東へと向かった。
「成田山、とか」
「違うな」
「そっから先、知りませんよ」
「名前ぐらいは知ってるさ」
 ロミオとジュリエットの序曲をバックに、ムードのない会話を続ける。
 千葉を過ぎると、急に暗くなったように感じられる。成田空港を過ぎたら照明がなくなり、辺り
はもう真っ暗で、他の車もいつしか見えなくなっていた。
───鹿島、かぁ───
 潮来ではないよな、と思いながら、標示板を読む。鹿島港には、護衛艦で一度寄港したこと
があった。
「鹿島神宮・・・」
「当たり」
「行ったことあるんですか?」
「弟がこっちに住んでてな、一度」
 山がちの所を走っていたが、佐原香取のパーキングを過ぎた所で、急に眼前が開けた。
 道が高架になり、見渡す限りの地平線。それが街の灯りに縁取られて、綺麗に広がっていた。
 BGMはチャイコフスキーからヴァーグナーに変わっており、速水は夜景と音楽の広がりに、
思いがけず感動している自分に驚いた。
「工場があるから明るいんだ、あっちは」
 深町が右手の方を指した。港がある方だろう。
 そこで高速道路は終点である。標識に従って、水戸・鹿島方面へ向かった。
 国道51号線で、潮来から鹿島へ。思ったよりも車は多い。北浦を渡る神宮橋。
「この橋が出来る前は、鹿島は陸の孤島だったんだ」
「それでも大昔からあるんですよね」
 道場にある神棚の、鹿島・香取大神宮。名前だけはどこでも見掛けられるが、それがこの場
所なのだ。

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