瑞龍寺(富山県高岡市) 2013年 12月
 富山県高岡市にある瑞龍寺は、曹洞宗の寺院で山号を高岡山と称し、 加賀藩二代藩主前田利長の菩提寺として、17世紀に三代藩主前田利常によって整備されている。
 筆者が最初にここを訪れたのは、2007年10月のことである。 当時は三百名山の登頂を目指していて、その最後の仕上げとして 鷲ガ岳大笠山を登ることにし、合間に高岡市に宿を取り、 瑞龍寺を見学したのである。 まだ本格的に寺院巡りをしていなかった頃のことで、地方都市の高岡にもずいぶんと立派な伽藍を持つ寺院があるものだと、 ただ感じ入って境内を歩いた憶えがある。
 その後、多くの寺院を巡る機会があり、寺院に関する知識も少しは増えたので、 瑞龍寺をもう一度じっくり見たいと思うようになった。 そんな次第で、2013年12月に高岡を再訪した。
 早朝の飛行機で富山空港に降り立ち、レンタカーで瑞龍寺に移動した。 移動中は、まだ雲が広がっていたが、少しずつ青空がのぞき始めていた。 冬の北陸は、寺院巡りに適した季節とは言い難い。 雨や雪に遭わずに済むだけでよしとしなければならないのに、これはかなり幸運なほうだろう。
 久しぶりに見る山門は、最初のときの印象と同様、やはり大きくてどっしりとしていた。
 山門から中に入ると、一面に広がった芝の中に仏殿が現れる。 そして、ぐるりと回廊が取り囲んでいる。 こういう左右対称で樹木のない整然とした配置をみると、日本的というより欧州的、大陸的なデザインを連想してしまう。 我が国で、左右対称の伽藍配置を基本とする禅宗寺院は多いけれども、広い空間には、たいてい松などの木が植えられている。 そのため、幾何学的な厳密さが和らいでしまうように思える。 ところが、瑞龍寺の回廊で囲まれた内側には木がないので、左右対称性が露わになっているようだ。 もっともこの瑞龍寺でも、当初から樹木がなく、芝が敷き詰められていたのかどうか知らないが。
 山門、仏殿、法堂、大庫裡などの堂宇はどれも興味深い。 このうち、山門、仏殿、法堂の3つは国宝に指定されている。
 主要堂宇の外見上でまず目につくのは屋根だ。 山門はこけら葺き、仏殿は鉛瓦葺き、法堂は銅板葺きなので、それぞれに色合いと趣きが異なる。
 中でも、仏殿に使われている鉛瓦葺き屋根というのは大変珍しい。 屋根の光沢の具合が他の材質とは違うことが、一目でわかる。
 法堂の中央奥の仏間に、二代藩主前田利長の位牌が安置されている。 外陣の格天井には草木の絵が見えるが、惜しいことにかなり傷んでいる。
 韋駄天像が祀られた大庫裡の調理場も、大寺院だけあって規模が大きい。
 一通り境内を歩いたのち、瑞龍寺から1km近く東に離れた前田利長墓所を訪れた。 この墓所も規模が大きく立派で、一見の価値がある。
 今回、6年ぶりに瑞龍寺を拝観して、前田利長の異母弟である三代藩主前田利常の 兄を慕う思いの強さと加賀藩の財力に改めて感心した。
 写真は、CANON 5D Mark U・EF24-105mm F4L IS USMで撮影。


正面から見た薬医門形式の総門
主要伽藍配置が、総門から奥に、山門、仏殿、法堂が一直線に並ぶ禅宗寺院独特の形であるが、 軸は南北ではなく、ほぼ東西方向を向いている。
2013/12/8撮影
上の写真からさらに総門に近づくと、豪壮な山門(国宝)が見えてくる。 今の山門は、19世紀初めに再建されたもの。 上下の屋根が同じような大きさのため、上部が大きく見える。
2013/12/8撮影 山門に近づくと、軒の出の深さが強調されて見え、離れてみたときとは見え方がずいぶん違う。
山門をくぐると、正面に仏殿が現れる。 周りは芝生で、外側は回廊で囲まれている。
回廊の内側には木がないので、左右対称性がより強調されているようた。 左に見える回廊の屋根の色が赤いのは、落ち葉のせいである。
2013/12/8撮影
国宝の仏殿
裳階(もこし)付きの重厚な建築で総欅造り。 屋根は鉛瓦葺きで、鈍い金属性の輝きを放っている。 鉛板を使った屋根は、ほかに金沢城石川門に例があるだけだそうた。
2013/12/8撮影
仏殿内部
釈迦三尊像が安置されている。
床は四半敷きで、天井が高い。 屋根の構造が見える。
2013/12/8撮影
法堂(国宝)
こちらは総桧造りで、屋根は銅板葺きだ。
右端に見えるのは仏殿の一部。
2013/12/8撮影
法堂内部
入口(写真右手)から中に入ると、まず土間の廊下があり、回廊とつながっている。 そこから一段高いところに並行して板張りの広縁がある。 その中央奥の部屋(写真の左、戸が開かれている)に二代藩主前田利長の位牌が安置されている。
隣の間には、烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)像が祀られている。 もともとは東司(トイレ)に祀られことの多い明王で、瑞龍寺でもそうだったようだが、 火事などの理由で移転され、今はここに落ち着いているそうだ。、
2013/12/8撮影
大庫裡
奥に、かまどなどが見える。
左手前には韋駄天像が祀られている。
天井は漆喰だそうだ。
2013/12/8撮影

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