セラム島(Seram Island) 1/3

 2007年の夏、むし社企画の昆虫採集・観察ツアーに参加して、 セラム島(Seram、インドネシア)を旅行した。 前回のスラウェシ(Sulawesi)島以来、3年ぶりの海外での昆虫採集・観察ツアーへの参加である。
 8月3日に成田を発ち、 13日に帰国するまで、Sulawesi島、Ambon島、Seram島の3ヶ所で観察・採集を行った。 主目的地はAmbon島とSeram島である。
 私個人の今回の旅行目的は、メガネトリバネアゲハやオオルリアゲハなど美麗種の採集と、 蝶の撮影に決めていたので、 持ち物も採集に最低限必要な道具とカメラだけにし、 身軽にしたつもりである。 持って行くカメラをなににするか迷ったが、 前回Sulawesi島での経験から、 蝶の生態写真を撮るならやはり一眼レフだと思い、 ペンタックスのK10Dにマクロレンズ(DFAマクロ50mmF2.8)の組み合わせにした。 風景などを撮るためには、 他にも交換レンズが必要だが、かさばるのでやめ、 リコーのコンパクトデジカメ(CaplioR4)で代用することにした。
 それで、旅行の結果はどうだったか?
 旅行中に予想外の出来事があり、 撮影はまったくだめだったのである。 予想外のこととは腰痛のことで、 旅行中は歩くのがやっとという有様だった。 おかげでK10DはSulawesi島で一回だけ持って歩いただけで、 あとはホテルに置きっぱなし。 採集地ではネットの竿を杖代わりに使ってそろりそろりと歩かなければならなかった。 蝶を目の前にしてもダッシュすることができず、 腰の回転を利用してネットを素早く振ることもできない。 おかげで、今回の旅行は散々だった。 採集できた蝶の種類や数の問題ではなく、 思う存分に歩き回れなかったのが一番心残りとなった。
 それでも持ち帰った採集品を整理してみるとかなりの数になった。 以下にその一部を紹介する。
 ・Ambon、Seram島で採集した蝶(1)
 ・Ambon、Seram島で採集した蝶(2)
 ・Ambon、Seram島で採集した蝶(3)

 次に、日付順に旅行の模様を紹介しよう。
 初日はBali島のDenpasarで一泊。 真夏の東京から来るとバリ島は意外に涼しいのに驚く。 特に夜は快適で、東京の熱帯夜とは別世界である。
 翌日はSulawesi島のMakassarまで飛び、 Makassar郊外のBantimurungで最初の採集を行った。 この時期は乾季にあたり、 小川も干上がっていて、 現地の人は川底を道路代わりに歩いている。 こんな状態なので蝶の数も少ないようだ。 それでもサビモンキシタアゲハやハリフロンキシタアゲハなどを採集することができた。 これらの蝶は前回のスラウェシ島の旅行では見かけなかった種類である。 Bantimurungで採集した蝶の標本写真は、 Sulawesi島の項に加えた。
 炎天下を歩き回って、体の異変に気がついた。 3日前の焼山登山の後遺症で足に筋肉痛があるのは分かっていたが、 腰にも痛みが出てきたのだ。 どうも焼山登山で長時間歩いたのが影響したようだ。
 この日はMakassar市内のホテルで一泊し、 翌朝は2時(!)に起き、 早朝の飛行機でMaluku(モルッカ)諸島の中心地Ambonに向かった。 Ambonの飛行場は入り江を隔てて町とは反対側にあるため、 ホテルのある街の中心部まで車で40分ほどかかる。 車窓から外を眺めていると、 道路沿いに見える家は割とこぎれいで、 人々の生活もSulawesi島より余裕があるように見受けられた。 マルク諸島が古くは香料諸島として栄えた名残りなのかもしれない。
 Ambonの街は活気があり、 人も車も多い。
 市内のホテルに荷物を置いてさっそく車で採集地に向かう。 30分ほどで集落に到着すると、 すぐに人だかりができた。 大きなネットを持った外国人が10人も車で乗り込んできたのだから、 住人にとって大ニュースなのだろう。
 いよいよマルク諸島での採集が始まる。 ところが腰の痛みはますますひどくなり、 満足に歩けなくなったのだ。 ゆっくりと足を前に延ばしてやっと進めるような有様だ。 とても蝶をめがけて走ることなど出来ない。 それで荷物も減らし、一眼レフカメラも持ち歩くのをやめた。 せっかく日本から持ってきたのに残念だが仕方ない。
 ここの地形は山地の入口にあたり、 少し川の中を遡ると山が迫ってくる。 深い川ではないので、ところどころで川の中を歩いて進む。 蝶の数が取り立てて多いわけではないが、 キシタアゲハ属の蝶が時折上空を飛び、 オオルリアゲハが青色の光沢を輝かせながら通過する。 結構速い。 ヒイロツマベニチョウがたまに通り過ぎていく。 前翅の赤色と後翅の黄色は遠目にも大変目立つ。 この蝶も敏捷で、ネットをかすめて飛び去った。

  セラム島 2/3 へ続く


 Seram島は大きな島で、 面積は四国より少し小さいだけである。
 これに対してAmbon島はずっと小さく、 佐渡島くらいである。

 Bali島Denpasarのホテル「PURI BAMBU」の部屋からの眺め。 観光客向けのリゾートホテルだけあって、 緑豊かな敷地内に建物がゆったり配置されている。

 Sulawesi島のMacassar郊外のBantimurung近くの採集地。 切り立った石灰岩の崖に沿って、 サビモンキシタアゲハなどの蝶が飛ぶ。
 畑ではブギス族の人たちだろうか、 稲の刈り取りをしていた。 我々外国人が通りかかると、 仕事の手を休めてものめずらしそうに眺めていた。

 Ambon島の採集地近くの集落。
 インドネシアは、どこに行っても子供が多く目につく。
 同国の出生率を調べてみると、 近年は2.3ほどで日本(1.32(2006年))の2倍弱だ。 だが、感覚的にはもっと多くの子供の姿が見られる。 表に出て遊ぶ子供が日本より多いのかもしれない。 この10年間で出生率は大幅に低下しているようだから、 一昔前はもっと子供の数が多かったことになる。

 上の写真の集落を抜けて、川原を歩くと採集地だ。

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