ち り か ら こ ろ と、ちってしまいそうなこと
ほんのすこし 春がこぼした きいろが ナ ナ ナ ナ ナ ハナ ハナ ハナ ハナ ナ ナ ナ ナ ナ ハナ ハナ ハナ ハナ こーんなに なっちゃって 4-24 線路にそって 歩いてきたら おばあちゃんに抱かれた ななりちゃんに会った ななりちゃんは 泣きそうになった と思ったら 笑ったの またなきそうになった と思ったら 笑ったのよ 小さい下の歯がみえたわ それからすこし歩くと ほこらがあって お地蔵さんが菜の花に埋もれていた 4-24 おばあさんになった かあさんと おじさんになった むすこです むすこが 母さんの手をとって 葉ざくらの下を歩きます とこ とこ とこ ざっく ざく 小さな背中と
大きな背中 小さなくつと
大きなくつ 父さんのお墓にまいります とこ とこ とこ ざっく ざく おばあさんになった かあさんと おじさんになった むすこです 須磨寺で法事 母と弟 4-20 あんまりステキだから買ったけど 一度もかぶったことがない 黒いエナメルの帽子があった そのグレタ・ガルボの帽子に がばがば 雨合羽 首から懐中電灯 スコップを突いて キャラコにくるんだ 小さく固まった ミイコを抱えて 「もう、埋めてくる」と おこった顔で あなたはいった 雨が降りしきる夜に わたしが いつまでも泣くもんだから あゝ、あのときの あなたの格好ったら… 過ぎ去った おかしくて 愛しい時間よ ミイコは私たちの最初の猫だった 4-14 ナズナ ペンペングサ リンリンソウ どの名前がいーい? というなり 妹は あたしはリンリンソウ といった なんでも 妹は早いの 妹のリンリンソウと あたしのペンペングサ ハート形の実を ひっぱって 揺らすと おなじ音がしたわ 4-11 少し 水をください わたくしには約束があります 少し 水をください 花を咲かせたいのです それでも まだ 約束の半分です でも あとは 水をいただいたとしても むりです さくらんぼうになるのは 桜の小枝を拾った 4-11 父のあぐらの中にいた 幼いわたしは 父の膝で 家族と ババヌキをしていたんだろう、きっと どれを捨てる? と 父はわたしに カードを選ばせただろう、きっと 一枚のカードを指さして 父のお腹に 顔をもたせると キャメルという 煙草の匂いがしただろう、きっと あの場所に いつか 戻ることができるかしら 4-10 はじめまして あまなつさん おうわさはかねがね・・・ ハ、ハックション うちのリリィから でんごんが、 ネコじかん、ごぜん2じ22ふん ネコまちどおり やくばまえ まんかいの さくらのしたで おまちもうしております、と あまなつさん(アメリカンショートヘア10才♂) に会いに行った 4-8 ピンクと水色 どっちがすき? タンポポとスミレ どっちがすき? れんげを摘みに いきません? こんなこと きいてみたい日に おくさん、 いい おてんきですね と いっただけ 4-7 しゃっ しゃっ しゃっ と、こう? そう、そんなふう あしたから 自分でごはん 炊くんやね こんなことでナミダがでるなんて おもってもみなかった おかしいね おかしいよ 4-4 はじめて下宿する息子に お米のとぎ方を教えたこと おぼえてる? いつも バスケットをもっていたこと まいにち 会って 一日中 いっしょにいたけど 夜はうちにかえっていた そんなころ おぼえてる? ある日 あなたは まあたらしいハンチングをかむってきた あたしは いやがって ハンチングをむりやり バスケットに押しこんでしまった そんなことをするケンリが あったのね、あたしに 4-4 すみれの花の砂糖づけ ひとつ 白いカップにいれてごらん つめたい水をそそいでごらん むかしの かなしみが とけだしてくる ひとくち のんでごらん あまいだろ あのころの かなしみは あまかったんだ 4-4 お砂糖をまぶして 壜につめてきた わたしのすみれ色の時間 でも、 きのう蓋をあけてしまった いまとなっては ホリホリと ひとつずつ たべてしまおうか、とおもって すみれの花の砂糖づけを頂いた4-4 さくらは 水鏡に見入っている なんてうつくしい 水は流れても わたしの影は流れない ひとひら またひとひら やがて さきをあらそうように 花びらが流れ去る そのとき さくらは何を思うだろう さくらよ 最後のひとひらが散ったあとも さくらいろの日を忘れないよ 4-3 |