テキスト ボックス: リリリン、と赤い自転車がとまりました。
「お・は・よー」
いきなり窓から顔をだしたのはクロネコです。
くまさんはびっくり、ゆり椅子がゴットン。
「今日から、ぼくが配達するんだよ」
新米の郵便屋さん、まだ子どもみたい。
そういえば冬はお休みですから、ネコにぴったりの仕事です。
 
「う・お」
くまさんは上手くしゃべれません。あんまり長いあいだ黙ってい
たので、顔が固くなってしまったのです。
「お・お・てがみ・もうこ・ない」
クロネコは目をパチパチしました。
「あたし・なまえ・が・なくなったの」
クロネコは目をクルクルしました。
「家の中、よーく、さがした?」
「・・え」
「お庭も、よーく、さがした?」
「・ええ」
クロネコは窓の下の茂みに頭をつっこんでガサゴソしました。
「ここにもないや」
くまさんはふーっと、ため息をつきました。
「じゃーね、ぼくが一緒にさがしてあげるよ」
クロネコは自転車を木につなぎました。
「こうしておけば、なくならないんだよ」
    
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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