更新直前の71号  1994.8  
Photo by I.Ichihachi
※長尾線平木駅より仏生山工場に回送されてきた71号。この状態から奇跡の復活劇を演じることとなる。

   71号は、日本唯一の東芝製電車として極めて有名な車輌である。
  14m級の定員82名のかわいい小型車で、東濃鉄道が1950年に東芝車輌で2輌製造した
  モハ100形のうち、モハ101がその前身である。
  東濃鉄道が水害による休止を経て正式に廃止された後に、
  僚車72号(東濃モハ102)73号(同モハ103)81号(同クハ201)82号(同クハ202)と共に
  長尾線の1500V昇圧用として琴電に譲渡され、1976年に登場した。
  1998年まで志度線には72号と81号が残っていたが、いずれも廃車され現存しない。

  70形の原型は、前面が緩く弧を描く非貫通構造の3枚窓であったが、
  東濃時代に前面に貫通扉が設けられている。
  なお、高松築港方の前面は、フラットな構造で貫通扉も引戸になっているが、
  これは、東濃時代に電気機関車と接触事故を起こし、日本車輌で復旧工事を行った際に、
  このような形態になったのである。
  琴電では、東濃鉄道から車体と台車の両方を購入したが台車は改軌せず、
  手持ちのBW78−25−AAと組み合わせて登場させた。

  東芝の製造した電車としては、更新車体のみの製造(箱根登山鉄道モハ100形の例)や、
  他社の下請け製造(国鉄80系の例)など例外的なケースを除くと、この70形が唯一の例で、
  71号はまさに、日本の電車史上に名を残す貴重な車輌なのである。

Story of 71