人類学的な断片... |
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内山田 康 |
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神の熱を帯びた身体を冷やす不可触民プラヤの労働者だったスレーシュは2003年の初めころからカーリーが憑依するようになり、スワーミーと呼ばれる。スレーシュスワミは、悪魔払いのクライマックスにカーリーとなって燃える床絵の上をぐるぐる回り気を失う。仲間がスレシュの足を水で冷やす。スレーシュは歌が上手い。カセットに録音された歌を2回聞けば空で歌えるようになると言っていた。最近は悪魔払いの注文が沢山入ってくる。スレーシュは携帯電話を持っていて、クライアントからの注文は携帯電話でも入ってくる。このカーリーの前世は不幸な死に方をしたクラヴァの女性(クラティ)だ。クラティはシヴァ寺院のブラーマン祭司の愛人だったと伝えられている。彼女が身ごもると村の有力者たちはクラティとブラーマンの愛人を殺そうとやってきた。クラヴァたちによるとクラティは殺される前に森の中で鎌で自分の首を切って死んだ。非クラヴァの様々なヴァージョンでは二人は殺されたという。クラヴァの女神を管理しているのは、寺委員会の有力者たちだ。彼らはクラヴァではない。クラティの恋人だったブラーマンに縁のあるブラーマンの一族は、数百年前からカーリーを祀った祠があった森の所有者だったが、最近、寺院の土地所有権を巡る訴訟で破れた。女神とつながりのあるクラヴァたちも寺院の経営には関わりを持たない。夜になって寺院が閉まるとカーリーが憑依するのは寺院の北向かいに住むプラヤの若者だ。このカーリーを頼って町からひとびとがやってくる。その中にはイスラーム教徒やキリスト教徒たちもいる。 |
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フィールドワーク南インドのケララで1992年2月から一年半のフィールドワークを行なった。1996年からほぼ毎年ケララに戻る。『地域研究スペクトラム』5号(2000年)に書いた私のフィールドワークフィリピンのボホールには1997年から2000年にかけ7回、合計で半年ほど滞在した。より良い生活への願望とファンタジー、日本兵のイメージ。Industrial Sewing Machines, Work-Disciplines and Aesthetics. Critique of Anthropology 20(3): 243-264 (2000年)お堀に面した官僚機構では、1995年から2000年まで研究員をした。一日が過ぎるのがとてつもなく長かったこの期間、私は参与観察する人類学者ではなく、自律性を制限された現地人だった。エディンバラに引っ越して、カフカとオネッティを読みながら、この5年間を事後的にフィールドワークに翻訳した。官僚機構の人類学的研究3つ。[1] 開発の二つの記憶『民族学研究』67(4): 450-477(2003年)原稿 非短縮版[2] Architecture of immanent power. Social Anthropology 12(1): 3-23 (2004年)[3] The face of the Japanese body politic. PoLAR 28(2): 282-306 (2005年)エッセークラティとカーリー:階層的な合目的生の袋小路と動く身体が繋ぐ考えられない系列『歴史人類』37号(2009年)原稿芸術作品の仕事:ジェルの反美学的アブダクションとデュシャンの分配されたパーソン『文化人類学』73巻2号(2008年)原稿 非短縮版沈黙する死者『歴史人類』36号(2008年)原稿インドモダンのアレゴリーと瞑想する卵 川那部保明編集『ノイズとダイアローグの共同体』(2008年)原稿カトリーン・ゴフの小農と帝国主義『歴史人類』35号(2007年)原稿景観、顔、(上位の)符号『公共研究』3巻2号(2006年)視座は提示できたか『歴史人類』34号(2006年)原稿。短縮版は『文化人類学』70巻1号(2005年)2005年3月に卒業した文化人類学専攻の学生6人に2時間ずつ話を聞き、ほとんど読まれない学内広報誌に書いた遠くから還ることの創造性と突然の終わり官僚機構の原住民だった頃、非常勤で教えた中央大学の『中央評論』231号(2000年)に書いた、官僚機構の中でジェンダーを考察することの制約、ジェンダーで考えることの限界Passions in the Landscape: Ancestor spirits and land reforms in Kerala, India. South Asia Research 20(1): 63-84(2000年)Soil, Self, Resistance: Late-modernity and locative spirit possession in Kerala. Purusharta 21: 289-311(1999年)文化人類学特講II,III [文化人類学I]レポート課題と格闘した痕跡への期待文化人類学概論B [文化人類学概説]のレジュメなど |
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