Sweet darling, Sweet honey


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【結果発表】



 試験の次の日、久しぶりに彼方がわたしのもとにやってきた。
「智鶴ちゃん、お疲れさま」
「彼方もお疲れさま。どうだった?」
「うん、さすがに一級は手ごわかった。微妙な線だな」
 といった彼方の表情はものすごくすがすがしくて、たぶん大丈夫だろう。引き続き通常の勉強と簿記の勉強と並行してわたしたちは日々を過ごした。
 そして、結果発表。ドキドキしながら送られてきた合否通知書を開ける。予感はしていたけど、通知書を開けて、その思いが確信に変わる。
「どうだった?」
 彼方はわたしの顔を不安の表情を浮かべて見守っている。わたしはそっと彼方に通知書を見せた。
「……合格!」
「うん、彼方のおかげだよ、ありがとう!」
 合格、ときれいに印刷された紙を見て、わたしはほっとした。
「うん、よかった。次は一級だね」
「彼方はどうだったの?」
「まだ結果を知らないんだ。郵便が来て、中を確認して連絡くれるって」
 しばらく勉強をしていると、内線が鳴った。
「はい」
 出るとじいからで、彼方宛てに電話がかかっているという。彼方と変わり、彼方は緊張した面持ちで電話を聞いている。彼方はどんどん青ざめていく。まさか……と思って彼方を見ていたら、電話口で怒鳴っている。
「そんな冗談、いらないっ! 心臓に悪いな!」
 ぎゃんぎゃんと怒鳴っていて、びっくりする。乱暴に受話器を置き、彼方は少しばつが悪そうな表情をして戻ってきた。聞くのをためらわれた。
「智鶴ちゃん、ごめん」
 いきなり謝られ、だめだったのかな、と泣きそうになった。わたしのしゅんとした表情を見て、彼方は困ったな、と少しそっぽを向いて、
「残念ながら、合格だったよ」
 その言葉にはっとして彼方を見た。
「お、おめでとう!」
 うれしくて、彼方に抱きついていた。彼方はわたしの行動にびっくりしていたけど、ふっと微笑んでぽんぽん、と頭をなでてくれた。
「ほんと、よかったよ。くくく、秋孝の悔しがる顔を見るのが今から楽しみだ」
 彼方はすごく楽しそうに笑っている。そういえば、あのふたりもどうだったんだろう。
 夕食の時、彼方の合格の話をしたら深町は自分のことのように喜んでいて、アキはものすごく悔しそうな顔をしていて、わたしは彼方と顔を見合わせて笑った。ふたりの結果も問題なく合格だったようで、安堵した。
「次は一級だな」
 アキの言葉に彼方は、
「先生がいいから、受かるさ」
「ちぃが無事に受かったらなにかご褒美を買ってあげるよ、彼方ちゃん?」
 その言い方がものすごく馬鹿にした言い方で、彼方はアキに食ってかかっていた。
「子ども扱いするんじゃない!」
「悔しかったらちぃを合格させるんだな」
 それから後……勉強も大変だったけど、別の意味でいろいろ大変になるとは……このときは思ってもいなかった。







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