愛から始まる物語


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俺さま☆執事!?06



   *   *

 母のざらりとした冷たい手が徐々に上ってきて、俺の分身に触ってくる。自分以外がその部分を触る感触に、血が集まるのを感じる。母はうれしそうに笑い、俺のモノを口に含む。

「!」

 学校である程度習っていたので、自分の身体がどうなるだとか興味があって調べたりしてある程度知識はあったが、自分のその部分を他人が口にするとは思っていなくて驚く。 初めての感触にますます血液が集まり固くなっていくのが分かる。与えられる刺激にあっという間に俺は白い液を吐きだす。初めての経験に俺は羞恥で顔が真っ赤になったのが分かった。

   *   *


「あのばばあ……!」

 俺の話と記憶とを見て、兄貴は真っ赤になって怒っている。
 実の母の手で精通を経験してしまった俺は、あまりの気持ちよさにおかしくなりそうだった。

「それからだ、ことあるごとにあの女は──」

 話したことで少しだけ気が楽にはなったが、強い脱力感を覚えて椅子にぐったりともたれかかった。

「あいつは……実の息子になにをしているんだっ!?」

 握りしめたこぶしが震えている。

「これだけで済めばよかったんだがな」

 その言葉に兄貴は目を見開き、

「まさか……!」
「そう、そのまさか、だよ。あいつは俺にいろいろ教えてくれたよ、身体でね」

 女の扱い方から抱き方まで、母は実技で教え込んだ。正直言って、正気の沙汰だとは思えなかった。
『睦貴、いいわ、そう、そこ──!』
 嫌な声を思い出し、耳をふさぐ。

「俺があそこから逃げだすまでずっとだ」

 母が俺を探して尋常ではない表情でお屋敷内を探しているのを兄貴は何度も見ているはずである。

「俺を探しているあいつを見て、気持ちが悪かったよ。母親があんな表情するか? 男に捨てられたような顔で俺を探して」

 くしゃり、と大きな手で頭をなでられた。

「そんな泣きそうな顔で話をするな。泣きたいのなら、泣けばいい」

 兄貴にそう言われて鼻の奥がツンと痛くなったが、俺は我慢した。

「睦貴さま……お話は伺いました」

 ベッドの上のじいから声がした。いつから話を聞いていたのだろう。起き上がろうとするじいを俺は止めた。

「これは秋孝さまもいらっしゃいましたか」
「ああ。じいが倒れたと聞いてな。驚いたぞ。じいは俺たちの大切な家族だからな」
「もったいないお言葉でございます」

 気がついたじいにほっとした。

「じい、退院したら一緒に暮らそう。また倒れて発見が遅れたら、今度こそ命がないと言われたぞ」

 じいは首を振る。

「使用人であるじいが睦貴さまとお部屋をともにするのは無理でございます」
「じいは使用人じゃない。もう俺たちの家族だって、兄貴も」

 兄貴を見てもうなずいているが、じいは首を振っている。

「けじめはきちんとつけなくてはなりません」
「駄目だ! じいにもしものことがあったら俺──」

 泣きそうな表情をしているのは自分でもよく分かっていた。そんな俺を見て、じいは困ったような表情で、

「睦貴さまに泣かれるのも困りますから、退院したらお部屋をともにさせていただきましょう」

 にこやかな表情でそう言われ、ほっとする。

「睦貴さまはなにひとつ悪うございません。周りの大人が気がつかず、奥さまをお止できなかったのがすべて悪いのです。それは、だんなさまでも例外ではありません」

 じいの言葉に首を振る。

「もう過去のことだ。いまさら思い出したって仕方がないし、話したのもなにかをしてほしくてではない」

 過去は過去でしかないから、変えることなどできないのだから。
 母に抱かれながらその気持ち悪さを払しょくしたくて、他の女たちに救いを求めた。しかし、あいつらもみんな、母と一緒だった。だれひとりとして──俺を救ってはくれなかった。
 『娘』の文緒といるときだけ、心が安らいでいることに気がついた。
 あぁ、文緒は俺の『娘』だからか。
 だから……『娘』を好きになるなんて、あの母と一緒、なのだ。

「睦貴、ありがとう。十九年以上隠してきたことを話してくれて」

 微笑まれて、どういう顔をしていいのか悩んで顔をそむける。

「で、なんでそこで文緒を思い出している?」

 意地悪な顔で兄貴は俺を見ている。なんで考えていることまで読めるんだ、おまえはっ!? この変態めっ!
 だけど。
 兄貴とじいに過去を告白したことで気持ちが少し軽くなっていることに気がついた。そして、あんなに牙をむいていた過去のあの嫌な『記憶』の牙はどこかへ消え去ってしまったようだった。それでもまだとげとげとはしていた。
 その嫌な『記憶』に極力触らないようにまた箱の中に詰め、鍵をかけて奥にしまいこんでおく。
 凍りついてしまいそうだった心がそれで少し楽になる。息をするのもつらかったのが、ようやく普通に呼吸をすることができるようになってきた。
 病室のドアがノックされ、看護師が中に入ってきた。
 意識を取り戻したじいに驚き、看護師はくるりと百八十度回って病室を出て行った。しばらくして、医者を伴って戻ってきた。

「ご家族の方でいらっしゃいますか」
「はい」

 医者の言葉に力強くうなずく。じいは驚いたように目を見開いていたので俺は笑い返した。
 医者はじいも交えて状況を説明してくれた。
 とりあえず今日はもうお屋敷に帰ることにした。

「じい、また明日くるな」

 どうせニートだし。
 完全看護体制らしいので病院にお任せすることにした。個室だから泊まっていくのは構わないと言われたけど、確かに心配ではあったけど、少しひとりでゆっくりしたかったのもあるし、じいもひとりの方が気兼ねをしないだろうと思って思いきって帰ることにした。
 救急車で来たからそういえば帰れないことに気がついたが、兄貴が車で来ているようだった。なぜか兄貴から車のキーを渡された。兄貴だって運転できるだろう!?

「すがすがしい顔をしやがって。俺はまた頭が痛い」

 さっさと助手席に乗り込み、兄貴は憎々しげに俺の顔を見てそう言う。ぐい、と今度は手を掴まれて額に手を当てられた。

「しばらくそうやっていろ」

 なんのまじないだろう、と思っていたがふぅ、とため息をついて手を離された。

「ちぃの手よりおまえの手の方が頭痛が治まるのが早いのは、兄弟だからかな?」

 こんなものですぐに頭痛が治まるのならいつでもお貸しますが?
 釈然としないまま、車を走らせてお屋敷に向かった。

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