FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 23


■弥次喜多 in アヴィニヨン2003

----演劇狂の友人 Tに、アヴィニヨン演劇祭に誘われる。意気揚々
と旅支度を始めた頃に、テレビでは演劇祭が中止になったとの報道
が流れた。私たちの、初めてのアヴィニヨン演劇祭は、招待公演で
ある INが軒並みキャンセルになるという状況に見舞われた。

----5月某日、大学の演劇の授業で出会ったひと際物好きそうな人に、
夏にアヴィニヨン演劇祭に行かないかと誘ってみた。彼女、なんと
すぐに行く行く、と。 

----遅ればせながら 7月半ばに現地に到着すると、自主公演である
OFF は大部分が公演中とのこと。意気消沈していた私たちの期待も
一気に盛り上がった。私たちは演劇を観るのが大好きなのである。

----そんなふうなで、小田部田中、アヴィニヨンに着く。 7月14日
のことだ。振り返れば光陰矢のごとし。東京でINが中止になるだろ
うことを聞いていたが、 OFFはかろうじてやっているとのこと。南
仏珍道中を覚悟していたが、良かった!来た意味があった!  

----客引きに、路上で派手なパフォーマンスを繰り広げるのもフェ
スティヴァルの醍醐味で、狭い路地を大掛かりな衣装で大行進する
のも、広場で寸劇を打つのも一興だ。フェスティヴァル気分を満喫
しようと意気込んだ人々に倣い、OFFの芝居を見に駆けずり回った。
INに集ま った人が流れて、もしかしたらOFFにとっては大きなチャ
ンスだったのかもしれない。どの公演に行っても、客席は大体が埋
まっていて、終わりには客席からの拍手が惜しみなかった。

----胸の詰まる思いをしたのは初日、土地勘を身に付けるのも兼ね
て観光スポットを回ったときだ。教皇庁で目にしたものは、大ステ
ージに用意された照明器具や客席の中止に伴う大撤収であった。公
演中止の理由は、失業保険問題に絡んだストライキであった。芝居
をしたくて集まった人も、芝居を見たくて集まった人も街に溢れて
いた。演劇は生活であると真剣に思う人達を目の当たりにすること
が出来て、INの中止は本当に残念であったけれど、今年のアヴィニ
ヨン演劇祭にいることが出来て良かったと思う。

----膨大なプログラムの中、写真を頼りに選び、<Plume> を見に行
く。小さな劇場、椅子一つの、暗幕尽くめの舞台。やんちゃそうな
俳優が入ってきて、一人芝居が始まる。照明と俳優の調和の取れた
演技が自由に時空を超える。言葉は分からないが、何となく分かっ
てしまった。面白い芝居は、言葉を越える。明日からが楽しみだ。

----しかし何で大多数がつまらないのか。簡素にしなければならな
いのは分かるが、真面目に取り組んで欲しい。もう、くじ状態だ。
特に日本人は酷い。何故白塗りにこだわるのか。こびないで欲しい。

----大盛況を収め、予約をしないと入ることの出来ないものも幾つ
かあり、<Du Pain Sur les Planches>もその一つで、キートンを思
わせるコメディアンっぷりに客席は大盛り上がりでした。帰りに役
者の方々にパンをいただいて帰りました。

----私たちの毎日の生活は、大体三本芝居を観て、あいだ猛暑に疲
れて昼寝かカフェ。カフェでチラシを貰い <Du Pain Sur les Plan
ches> を見に行く。でっかいおじさんと、ちっさいおじさんのでこ
ぼこコンビが実際にパンを作っていく、どたばた喜劇だ。リズム感
がよく、ちっさなおじさんの小回りの利く演技で会場を盛り上げた。
小劇場の直に伝わってくる楽しさは、 OFFならではと思った。のち
に、このちっさいおじさんと夜の劇場カフェで出会い話をした。彼
らは毎夜そこに集まっては演劇論を繰り広げているらしい。彼は日
本に来たいと思っているらしく、力になってくれと言われた。困っ
た。          

----<Le Sabotage Amoureux>を見に行く。主人公の少女の集中力に
圧倒される。戯曲が読みたい。

----夜10時に劇場に行ったものの、お目当てだったコメディアデラ
ルテが前々日に終わってしまったそうで、今やっている我々のカン
パニーは面白いと言われて見ることになった。学校の体育館で行わ
れた巨大な影絵は初めての経験だった。大きな布に包まれた人間が
次第に影絵の中に入っていく。こんなポエジーな舞台見たことがな
かった。二人とも微動だにしないで食いついて見た。ブラボ……!!!

----<Don Juan>を見に行く。これは近所のおじさんが演劇が好きす
ぎてついにやってしまった一人芝居と言う感じで、何役も演じるの
だが役分けがなく下手くそだった。けれど、これで私はようやくOFF
のことがつかめた気がした。みんな演劇がやりたくて、好きでしょ
うがないのだ。なんて素敵なんだろう。そういう人にも開かれてい
るのが OFFだ。その日、受付にいたおばちゃんに、あなたたち沢山
芝居を観ているのね、と自分の人形劇に招待してくれた。
 [小田部千夏/田中智佳]

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