FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 21


■アヴィニヨンIN2003

 長年このアヴィニョン演劇祭を率いてきたベルナール・フェーヴ
ル・ダルシエが今年限りで退任し、来年から若いカップルが後任に
選ばれたことが、昨年の秋、フランス演劇界の大きなニュースとし
て流れた。

 このことによって、今年が、20年にわたるディレクトゥールとし
ての彼の最後のプログラムになる。その退任を惜しんだためか、い
つもにもまして豪華な内容となっている。演劇24演目(内、海外か
ら8演目)、ダンス9演目のほか展覧会や講演会のプログラムが組ま
れている。また今回は、中心会場の教皇庁中庭での、これまでにな
い「再演」が注目を集めている。会期は 7月8日から28日までの約3
週間。

 その教皇庁中庭から。開幕公演では、ベルギーの振付家アラン・
プラテルが『ヴォルフ』を上演し(8〜13日、 10日休演)、演劇は
昨年に続いてエリック ・ラカスカードが A.チェーホフの『プラト
ーノフ』を再演(16〜19日)。最後は、これも 2年前に上演された
ベルギーの造形作家・振付家ヤン・ファーブルの『私は血だ、中世
妖精物語』の新ヴァージョン(24〜28日)。

 そのほかの会場では、まずアヴィニヨンの城壁の外、南側のシャ
ト・ブランで、バルタバス率いる馬術劇団ジンガロとムヌシュキン
率いる太陽劇団が会期中を通して共演している。ジンガロは北イン
ド旧チベット領ギュートのタントラ教ヒンズー寺院を訪れたことか
ら生まれた『ラウングータ、風の馬たち』( 8〜28日休演日あり)を、
僧侶たちによる音楽とともに上演する。また、劇団創立20周年を記
念して1夜だけ教皇庁中庭での公演を行う(21日)。

 一方、太陽劇団も今年 4月からパリ郊外のヴァンセンヌの本拠地
カルトゥシュリで上演してきた、アフガンをはじめとする難民問題
をテーマとした集団創造による 4年ぶりの新作『最後のキャラヴァ
ンサライ(オデュッセイ)、狂える大河』をもって参加している
(9〜 27 日、月火休演、日曜昼夜2公演)。

 そのほか演劇では、スタニスラス・ノルデが世界中の劇場で上演
されている英国の現代作家マルタン・クランプの作品『彼女の人生
への到達』をとりあげる。ヴァレール・ノヴァリナは新作『舞台』
を、C.パクのシャンソンとベートーヴェンの音楽をもちいて自身で
演出(絵画も作家による)。ディディエ・ベザスがM.デュラスの『
スクエア』を演出、ベルギーのアクセル・ド・ブースレがロシアの
作家ユーゲニ・シュヴァルツの『ドラゴン』を演出する。そしてピ
ーター・ブルックが1985年にブルボン石切場での現代演劇上演史に
残る作品『マハーバーラタ』から、二人の出演者による『クリシュ
ナの死』(モン通りの庭園)を取り上げる。

 そのほかのプログラムでは、ヤン= ジョエル・コランやヴァンサ
ン・ゴタル、ミシェル・シュヴァイテェール、ジャン・ランべール
=ワイルドとジャン=リュック・テルミナリア、ルネ・ロワニヨンら
が演出作品を上演する。

 外国からの参加公演(フランス語以外での上演作品)では、まず
シェイクスピア作品。リトアニアのオスカラ・スコルスノヴァ演出
の『ロメオとジュリエット』(サン=ジョゼフ高校中庭) と、イタ
リアのアントニオ・ラテルラン演出の『十二夜』。同じ市立劇場で
はドイツのトーマス・オスターマイヤーが注目のH.イプセンの『人
形の家・ノラ』。

 リトアニアのジン・タラストがフランスの現代作家のジャン= リ
ュック・ラガルスの『遠い国』を上演。ポーランドからは、クルチ
トフ・ワルリコフスキーとクリスチアン・ルパが参加する。スペイ
ンのロドリーゴ・ガルシアは、昨年に続いて自作を演出。アルゼン
チンのリカルド・バルチスも自作を演出。

 ダンスでは、ヤン・ファーブルが教皇庁に先だって、サン= ジョ
ゼフ高校礼拝堂で『死の天使』を上演するほか、同会場でヴィデオ
・インスタレーションを行う。一方、現代ダンスを代表する振付家
ジャン= クロード・ガロッタとアンジュラン・プレルジョカージュ
が揃ってオーバネル体育館で公演する。また、アンヌ・テレサ・ド
ケールマーカーが、カヴァイヨン国立舞台センターで公演する。

 そのほかフェスティヴァル協賛企画として、ロアール河を渡った
ヴィルヌーヴ=レ=ザヴィニヨンの国立エクリチュール・センターで
のスペクタクルや現代作家の講演会が組まれている。アルジェリア
の作家カテブ・ヤシンの作品『ネジマ』が上演される。

 またアカンサスの現代音楽祭では細川俊之の作品と雅楽の演奏会
も組まれている。そのほかサン= ルイでのオルガンのシリーズ、フ
ランス・キュルチュールのプログラムなどが予定されている。

 フェーヴル・ダルシエは「フェスティヴァル・ダヴィニヨンは、
他にはないもだ。人々が出会い、罵声をあびせあい、あるいは知ら
ない顔をするというような世界なのだ」とプログラムのまえがきを
結んでいる。

[松原道剛]

 戻る ・ 次へ 

AVIGNON  GIDE  INDEX

THEOROS  FORUM  TOP