FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 19


■黒テントの観たアヴィニヨン2002 
 
 フェスティヴァル期間中、INで40、OFFで700という演目から観る
ものを選ぶことは並み大抵のことではない。平均的観客は一週間滞
在、毎日4、5本の演目を観るというデータがある。としても20本を
観ることは至難の技だ。

 <街中が大きな学園祭のノリ>tkというのは的確だろう。そのなか
での観客同士の情報交換が不可欠。一方グループ内の情報が重点的
になってしまう。パレードも重要な選択要素。古典作品など知った
戯曲を選ぶのも一つの手だ。上演されない有名作品も戯曲化や翻案
という形で舞台にのっていたりする。期間中芝居をしながら綴られ
たこの『観劇の記録』もそんな目的があったのかもしれない。さら
に同じ芝居をする者としての視点が垣間見える。

 まずはIN。それも主会場の教皇庁中庭。 開幕公演は■<空気が違
う>『プラトノフ』ak。■<中庭の芝居をやっと見れる>『タンゴ』mh
■<さすがINの芝居だなあと>『ノボディ』ta。どちらもジャンルは
やすやすと超えられる。

■<今まで観たことのない種類の芝居。 芝居をしていない芝居、面
白いかというと首を傾げるが、ずっと不思議で興味をひかれ続けて
たのは事実だ>『プロロメテオ』mh■<パロディをテンポよく進め、
客の笑いは絶えない。何でもありといった芝居。やはり笑いは言葉
の壁を高く飛越えていった>『召使いのコメディ』km■<見ていて気
持ちのいいくらい洗練されていて、シャープでキレがあった>mh 『
運命』■<帰る客はその後もいて、 舞台の時が一瞬途切れそうにな
った。しかし観客は温かく、もっと役者への興味も強く、反応も敏
感になっていった>ms『プラネット』

 そして怒涛のOFF。■<若い芝居。役者も全員若かったし、感情を
ストレートに伝えようという気持ちが伝わって好感がもてた。熱い
>『西埠頭』tk■<何とも楽しそうに客にみせてくれる。「クサイな」
と思える歌や芝居もあるけれども、決してナルシスティックじゃな
い>『リリスとイカール』 ■<役者の気持ちが伝わってくる>『アン
チゴーヌ』yh ■<ひとつひとつがすごいという訳ではないが、スキ
がない。間もつなぎも上手>『サイのサーカス』tk■<テンポのよさ、
掛け合いの絶妙さに感動>『まな板の上のパン』mk■<好き勝手やっ
ている場の感じがあり…>『女中たち』ma
 あるいは直接的に感動する。 ■<歌を歌い、楽器を演奏し、踊り、
しゃべり、それを表現するのが役者でショ> と愕然として、朝から
目が覚めてしまう。js『カラ、火』■ <カバンをよこに動かすと波
音が聞こえてくる。その音がどんどん連なってしまいには音響の波
音となり、波音がたくさんの想いを運んできて…> 『ビドゥイユ』
ko

 一方よく知っている芝居、やったことのある演目となると評価は
厳しい。 ■<テンポもよいのだが、キチッと芝居をするので全体と
してストーリーの躍動感が感じられなかった>『三文オペラ』tk ■
<途中で出てくる郵便局員や召使いの登場・ 退場は何の工夫もしな
い。少し粗末>『大海原』yh■<たぶん音楽畑の出身者、演奏はすご
く上手いが芝居としてはどうなんだろう。芝居と音楽がつながらな
いのはこういうことなのか>ko『青い子供時代』■<何をやりたいの
やら見せたいのやら?客は16人。プログラムで見抜いていたのだろ
う。原作を読んでみよう>『レオンスとレーナ』yt■<演技はもっと
軽く、明るく、狂っていた方がいい>『象の鏡』tk

 しかし、さまざまなスタイルに目を奪われるのも事実。いろんな
意味で世界は広い。 ■<戦争の絶えない地域のことを真摯にうけと
め演技をしているようなのだが、悲劇になり過ぎていて> と書きな
がら、同行したモロッコ青年が感動したことを伝える。『アフガン、
アフガニスタン』yh ■鏡に客席を写し出されて、観客として<バカ
にされているような気分で憤りを感じる。しかし、刺激的で心に残
っている>『椅子』mh■<おそらく二人は精神病で隔離されているの
だろう。すべてが計算され尽くした動きだが、表情や感情が豊かな
ので。全然不自然さを感じさせない>『文字どおりに』tk■<四方を
客席が取り囲んでいる舞台では、アジアの伝統演劇を取り入れた形
式ばった演技スタイル。どこまでも突っ走る労力のかけかたに共感> 
『ジョルジュ・ダンダン』yh■舞台から、稽古に思いをはせるのは
俳優ならではだろう。■<4人の役者のリズム感、楽器演奏、パフォ
ーマンス、台詞、芝居の豊かさには驚かされる。台詞を喋り続け、
ゆっくり入ってくるスローモーションだ。本当に砂のようにくずれ
た>js 『オクル・ルージュ(赤い土)』 ■<プロスペールのユーモア
と役者のレベルの高さに圧倒される。一緒に芝居ができたらいい>
『同上』mk

 そして最後に観客参加型のパフォーマンスの新鮮さ。 ■<観客を
芝居の中に連れ去るような手法と現実への連れ戻し方が、ごく自然
で優しく感じられた>『アヴィニヨンのオッヂュセイ』sm。 さてこ
れでしめて25本。 
   
[松原道剛]

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