FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 18


■アヴィニヨン2002"OFF"

 1982年に"OFF"が組織されてから、 今年は丸20周年のフェスティ
ヴァルとなる。しかし、アンドレ・ベネデットやジェラール・ジェ
ラスが、公式の招待作品とは別に公演をはじめてからは、すでに30
年以上が経っている。ますます巨大化していくこのオフは、そのこ
とへの批判も受けながら、いかに充実へと向かうかが今後の、かわ
らない課題として課せられてくるのであろう。夏のフェスティヴァ
ル期間中だけでなく、その他のシーズンも、全国中の劇場が割引と
いう形でアヴィニヨン・オフに協力する。

 ますます厚く重くなったような、大判のプログラムには、それぞ
れのカンパニーの演目リストの前に、主催者側の企画が並んでいる。
メゾン・デュ・オフでの連日数回の作家や演出家たちによる講演会
のほか、今年は教皇庁で、7月17日、18日の2日間、このオフの活動
を方向づけるようなセミナーのプログラムが組まれている。「皆の
ための芸術家、民衆の教育と芸術活動」のタイトルには、ディレク
トゥールであるアラン・レオナールの一貫した姿勢が伺える。

 7月5日から27日の期間に開催される今年も、まずは膨張を続ける
このオフの数字の列挙から。30分も歩けば反対側にたどり着く長径
1.5キロほどの中世の城壁のなかだけで、劇場は100をこえ、城壁の
すぐ外側やローヌ河に浮かぶペニッシュ(河船)、SNCF駅反対側の広
場やローヌ河の大きな中州に設えられたテント小屋など、アヴィニ
ヨン市内だけで、すでに117を数える(ホールは各劇場複数あり)。
これにローヌ河中州にかかる大きな橋を二つ渡って右折、しばらく
歩いたヴィルヌーヴ・デ・ザヴィニヨンにも12の劇場がひしめいて
いる。この他、城壁東側のベダリッド、モンファヴェのふたつの劇
場が加わっている。ベダリッドのサン=ロマン城では、昨年に続い
て、一日二回ベルナール・オルテガ演出で、モリエール『ミザント
ロープ』を上演。ホールを座席数で分類すると、およそ50席以下が
35%、51〜100席が30%、101〜150席が20%、151〜200席が10%、
201席以上が5%となる。

 参加カンパニーも597、 そのなかで複数公演をする団体も多く65
団体が2公演、3公演が9、4公演が4、5公演する団体2 である。演目
別では演劇(音楽)が495、 ダンス31、カフェ・テアトル(寄席芸)60
、サーカス7、子供向け64、大道芸16、その他22の合計695になる。
毎年フランス国内からの参加がほとんどだが、海外からは55団体が
参加し、その半数を欧州諸国が占める。日本からは演劇に5、 ダン
スに7、その他3とフランス語圏のベルギーと並んで多い。

 各参加団体は、基本的にはそれぞれの演目を、期間中毎日上演し
ている。ひとつの劇場(ホール)で朝の10時から深夜 0時15分開演ま
で、7〜8団体が入れ代わり公演する。全体のキャパシティ総数は60
万といわれ、2万9千枚発行のアデラント・パスをはじめ、国内をは
じめ世界中からの多くの観客を受け入れる。チケット料金は各劇団
が6ユーロから20ユーロ程度(1ユーロ=120円前後)に設定され、パス
で約30%割引になる。

 演劇公演は、現存作家とその他の作家に分けられている。このオ
フでは圧倒的に現存作家が多く、全体の7割を占める。それぞれの
カンパニーの座付作家が本を書いて、それを上演するというわけだ。
そのため、この現存作家は、ほとんどが一つの劇団に一つの演目を
提供している。有名作家ではダリオ・フォ、ヴァレール・ノヴァリ
ナ、フィリップ・ミンヤナ、ハロルド・ピンターなど。

 その他(没後)の作家では、古典が多い。W.シェイクスピアとモ
リエールがそれぞれ12演目を数え、P.コルネイユヌ(2)、 マリヴォ
(2)など。時代が下って目につくのは今年生誕200年で上演が相次い
でいるV.ユゴー(5)。そのほかにはG.フェイドー(5)、E.ラビッシュ
(2)が並んでいる。20世紀作家ではE.イオネスコ(4)、H.ミショー(4)、
J.アヌイ(3)、B.ブレヒト(2)、J.-M.コルテス(2)などのほかに、カ
ミュ(2)、サルトル(2)の名前も見いだせる。

 これほど演目が増えると、オフのプログラムにはもっとも優遇さ
れている現存作家の演目でも 1頁に10演目が押し込まれ、その他の
演劇、ダンス、サーカスなどは12演目が写真入り紹介文が並んでい
る。作家・作品別、劇場別、劇団別、開演時刻別インデックスがつ
いている。

 演出家別のものはなく、オフの活動家たちの演目を紹介しておこ
う。アンドレ・ベネデットは自作『一日の終わり』と『ジェノヴァ
2001年 危険にさらされた若者』(カルム劇場)、アラン・チマー
ルはイオネスコ『椅子』とノヴァリナ『ルイ・ド・フュネスに捧げ
る』(レ・アル劇場)、ジェラール・ジェラスは自作『ギャンタナ
ムール』とO.ミルボ『物事は物事』(シェヌ・ノワール劇場)、プ
ロスペール・ディスは昨年東京で上演した黒テントのミシェル・ア
ザマ作『十字軍』とサブリエ劇団の『蜘蛛の巣より、赤い土』(マ
ニュファクチュール劇場)。    

[松原道剛]
 

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