FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 17


■アヴィニヨン演劇祭2002IN

 2002年、第56回目のアヴィニヨンフェスティヴァルは7月5日に開
幕、約 3週間後の27日まで続く。今年のINのプログラムは初演約40
作品をはじめフランス初演5作品の演目が予定されている。

 フェスティヴァルの主会場である教皇庁中庭は、太陽劇団の建築
家ギィ=クロード・フランソワによって、1982年以来の劇場構成を、
今年は大幅に改造されて、客席はこれまでの2250席から1970席に減
少している。また、これまで3作品を上演していたここでの演目が2
つに減ってそれぞれの公演日数が増えている。しかし、のんびりと
していたこのフェスティヴァルも、最近は早々にチケットは売り切
れてしまうのが気にかかる。

 この会場で開幕を飾るのは、今回のプログラムのなかでもっとも
注目を集めているのは、2000年このフェスティヴァルに招かれて衝
撃的なチェーホフを上演しているエリック・ラカスカード。演目は
そのチェホフが22歳のときに書き、 5年後にタイトル・ロールの宿
命を書き換えて蘇らせた作品『プラトノフ』。演出家は1999年春に
オデオン・ヨーロッパ劇場でアラン・デエールと取り組んで上演さ
れたこの同じ演目を、アヴィニヨンで2年続いたスター主義を排除
して、短い期間に再度取り上げている。上演時間は4時間にわたる
(5日〜15日)。

 この会場のもうひとつの演目はダンスが取り上げられ、ベルリン
で活躍する女性振付家サッシャ・ワルツの『ノーボディ』(19日〜
27日)。

 近年、演目が増加しているダンスは、中庭のほかにフランソワ・
ヴェレ、ヨゼフ・ナジ、カトリーヌ・ディヴェレの名前の他、リア
・ロドリーグ、クリスチャン・リッゾ、ジャンヴィエ・フリュトス
などの作品が並んでいる。

 一方演劇では、近年において教皇庁中庭に登場した演出家が並ん
でいる。ジャン=ルイ・ブノワがゴルドーニの『避暑地三部作』(
カルム礼拝堂)を演出。ジ ャン=ピエール・ヴァンサンは、ボート
・シュトラウスの『狂人とその妻が、今夜パンコメディアにて…』
をオバネル体育館で提出する。

 サン=ジョゼフ高校中庭では、ジャン=クロード・フォールが、
70年前のブレヒトがアイスラーの音楽とともに書いた短編『決意』
と、30年前に書かれたハイナー=ミュラーの『モゼール』を組み合
せた作品を上演。続いて同じ会場ではブレヒトの『ガリレイの生涯
』をジャン・フランソワ・シヴァディエが演出する。その他ジョル
ジュ・タボリの『ファルス・わが闘争』をアガタ・アレクシスがシ
ャブラン・バラックで演出。

 最近は世界文化圏特集は設定されていないようだが、まず「東」
のポーランドから若い演出家の作品が二つ。クリジィズトフ・ワル
リコフスキー演出でサラ・ケイン作『浄められた人々』(サン=ジ 
ョゼフ高校体育館)とグルゼゴルツ・ヤルツィーナ演出でトーマス
・ヴィンテルベルグ他作の『宿命』(オバネル体育館)。またロシア
からも、ペニタン・ブラン礼拝堂で、エフゲニ・グリシュコヴィエ
作・演出の『惑星』と、アナトリ・ワシリーエフ演出のハイナー・
ミュラー作『メディア・マテリアル』の 2本。またブルガリアのス
テファン・モスコフ構想演出の『奉仕者のコメディア』を市立劇場
で上演する。

 一方「南」からは、イタリアのピッポ・デルボーノのスペクタク
ル『沈黙・戦争・猛威』(サン=ジャン高校)。今年のフェスティ
ヴァルのポスターを担当した同じイタリアのラファエル・サンチオ
が、恒例の展覧会とともに『アヴィニヨンA.#02 』の公演も行う。
その他スペインの若い劇作家ロドリゴ・ガルシアの作品が三つ。
『プロメテウス』はフランソワ・ベルール演出。セレスタン教会で
の他のふたつ『あなたは私を誤解していると思う』と『アフター・
サン』は作者自身の演出で上演。

 同じ会場では、アルゼンチンの劇団エル・ぺレフェリコ・デ・オ
ブジェトスによる『暗殺』を上演。ダニエル・クーネ作『建築家の
行進』(セレスタン教会中庭)はルノ・コヨの演出。

 その他のヨーロッパ以外の地域からは、まずカナダ・ケベックか
らドゥニ・マルロが、モーリス・メーテルリンクの『群盲』をサン
・ジョゼフ高校礼拝堂で上演する。チュニジアのファデル・ジャイ
ビは、ジャリア・バッカールとの共作の『精神錯乱』(セレスタン
教会中庭)を演出する。

 ロワール河を渡ったヴィルヌーヴ=デ=ザヴィニヨンでは、カミ
ーユ&マノーロ・クロがシェイクスピア原作を翻案した『マクベス
の悲劇』(修道院)。シャト・ブランでは、チェホフ『箱に入った男』
とモリエール『ドン・ジュアン』を一つにしてクレーヌ・ラスヌが
上演。

 最後は例年のとおり、アヴィニヨン美術館中庭でのフランス・キ
ュルチュールのコンサートの企画のほか、ヴィルヌーヴではシャル
トゥルーズのエクリチュール・センターでの現代作家たちの企画、
アカンサス現代音楽センターのセミナーとコンサート。 

[松原道剛]

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