FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 13


■アヴィニヨン2001年"OFF"

 今年2001年は、1982年に"OFF"が組織されてから、ちょうど20回
目のフェスティヴァルとなる。「昨日のユートピアは今日の現実の
姿になった」と事務局長のイヴ・デシャンが巻頭で述べている傍ら
で、ディレクトゥールのアラン・レオナールは「1982/2001、20回
目のプログラム、お祭りは続く」と淡々としたものである。節目で
あっても継続こそが肝心というわけなのだろうか。「映画に行くよ
うに、芝居に来ていただきたい」ということなのであろう。そうい
う状況  それは現実的なユートピアに違いないが  を作り上げ
てきたことは事実であり、そのことは特筆されるべきであろう。あ
るいは「レストランでの食事と同様に、すべての人びとに提供され
る演劇」を、かの地では、そしてとくにフェスティヴァル・ピュブ
リック・オフではたしかに現実のものとなっている。

 いつもの大判のプログラムには演目リストの前に興味ある企画が
並んでいる。メゾン・デュ・オフでは、連日、午前、午後、夕方と
数回作家や演出家たちによる講演会が予定されている。また人形劇
やコメディア・デラルテ、子供向け演目など、テーマをしぼったシ
リーズのセミナーや朗読会等の案内が並ぶ。 

 メゾン・ジャン・ヴィラールでは、ジャン・ヴィラールのTNP(
国立民衆劇場)創設50周年として「はじめに観客ありき。ほかは常
にそれに従う」と題された前ディレクトゥール、ジョルジュ・ウィ
ルソン展が催されている。また、中国系フランス人のノーベル賞作
家高行健(ガオ・シンジャン)の回顧展が教皇庁チャペルで、フェ
スティヴァル期間に合わせて開催されている。

 それでは年々膨張を続けるこのフェスティヴァルの数字の列挙。
劇場はアヴィニヨン市内だけで、すでに 100を越えて(ホールは複
数ある場合あり) 111を数え、これに近郊のヴィルヌーヴ・デ・ザ
ヴィニヨンの11劇場をはじめ、ベダリッド、ロニョナのふたつの劇
場が加わっている。ベダリッドのサン=ロマン城は魅力的なスポッ
トのようである。一日二回ベルナール・オルテガ演出のモリエール
の『女房学校』を上演している。

 参加カンパニーも 550近くにのぼり、そのなかでも複数公演をす
る団体も多く全体の一割半ほどをしめる。演目数は演劇(音楽)が
533、ダンス31、子供向け61、サーカス 2、大道芸12の合計629にな
る。基本的にはそれらの演目が期間中毎日上演されて、全体のキャ
パシティ数は60万といわれている。

 演劇公演は、現存作家とその他の作家に大きく分けられている。
このオッフでは圧倒的に現存作家が多く、全体の 7割を占める。ま
ずカンパニーがあるのではなく、物書きがいて「物語」を出版する
よりは、劇団をつくって上演してしまおうということなのかもしれ
ない。そのためか、この現存作家は、ほとんどが一つの劇団、一つ
の演目を提供しているだけだが、なかには連日 2種類の公演を偶数 
・奇数日相互に計 4演目の自作自演を行なっている作家もいた。有
名作家ではダリオ・フォとヴァレール・ノヴァリナが各 3演目とい
ったところである。

 その他(没後)の作家では、古典が多い。今年はモリエールが圧
倒的に多く、13演目を数え、W.シェイクスピア(5)、J.ラシーヌ(4)、
マリヴォ(3) で、それぞれ異なった演目が、はからずも網羅されて
いる。そのほかにはG.フェイドゥ(4)、 V.ユゴー(3)、 A.チェホフ 
(4) など。20世紀ではM.デュラス(3)、E.イオネスコ(3)で、B.ブレ
ヒトは一つのみで、 S.ベケットの名は見当たらない。J.-M.コルテ
スも『西埠頭』のみ。いずれにせよ1 00名近い没後作家がならび、
ばらけているのは、このオフの、あるいはアヴィニヨン/フランス
の特徴であるといえるのかもしれない。

 このオフのプログラムには、1頁に9演目、あるいは12演目の写真
入り紹介があるほか、作家・作品別、劇場別、劇団別、そして朝10
時から深夜までの開演時刻別インデックスがついている。

 しかし、演出家・振付家別のものはない。オフの活動家たちの演
目を紹介しておこう。オフの実質的な創始者であるアンドレ・ベネ
デットは自作『根底のうねり』(カルム劇場)、アラン・チマール
は高行健作『人生に沿って』(レ・アル劇場)、ジェラール・ジェ
ラスはミシェル・カン作『恐怖の庭』と再演作『アルトーの物語』
(シェヌ・ノワール劇場)、プロスペール・ディスはミシェル・ア
ザマ作『カオスの天使』(ロワ・ルネ礼拝堂)。

 シェヌ・ノワールでは、ワン・テイクの音楽とともにリシャール
・ボランジェが『夜の町の美しさ』という自作自演の公演を行って
いる。有名人の気紛れなのか、新たなる試みと受取るべきなのか判
断は難しいが、紹介しておこう。

 日本からの参加は演劇に2、音楽1。ダンスに「シャクチ」や「珍
しいキノコ舞踏団」など8、大道芸は例年の雪竹太郎の2公演と近年
にもまして参加団体は多い。ダンス部門では全体の4分の1を占める
にいたっている。
  
[松原道剛]
 
 

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