FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 12


■アヴィニヨン2001年"IN"

 新しい世紀に入って、アヴィニヨンは例年の 7月に第55回目のフ
ェスティヴァルを迎えた。会期は 6日から28日までの23日間。40の
公演が予定されていた"IN"のプログラムを紹介しよう。
 フェスティヴァルのシンボル、教皇庁中庭において開幕を飾るの
は、ディディエ・ベザスの演出でモリエールの『女房学校』( 6日
〜16日、14日休演)。主演アルノルフを演じるピエール・アルディ
チと彼が率いる劇団アニス・スディヨンが出演する。演劇祭のディ
レクトゥール、ベルナール・フェーヴル=ダルシエは「偉大な俳優
が"フェスティヴァルのプロジェクト"に参加するのを承諾したので
あり、スター主義になったのではない」と強調するが、昨年のイザ
ベル・ユペールの大成功に続く、古典作品を取り上げて、有名俳優
を配しての「二匹目のどじょう」どころか、2200人収容の大会場で、
異例の10日間公演という大儲けを目論でいた。

 この会場では、開幕公演に続いて、オランダのアーティスト、ヤ
ン・ファーブルが、中世の妖精物語を題材にした、ダンス、演劇、
造形アートを組込んだ前衛的な作品『私は血でできている』を上演
(20日〜23日)。またこのアーティストは、彼の有名な「こがねむ
し」を動員して、今年のフェスティヴァルのポスターを担当すると
ともに、展覧会を開催している。

 教皇庁中庭での最後の三作目の作品は振付家B.T.ジョーンズの『
あなたは歩いている?』(28日〜30日)。D.ワルコットのホメロス
の詩からインスピレーションを受けたファド歌手ミシアの音楽との
コラボレーション作品である。

 例年の世界文化地域特集は、今年は掲げられていないが、昨年の
中央ヨーロッパ特集「バルチックからバルカン」の続編といったプ
ログラムが並んでいる。東と西の共同プログラムであるtheorem も
継続される。そのなかでもフランス・ポーランド・リトアニア・ロ
シアにおけるハンガリー年を記念して、マジャールの演劇と音楽の
舞台が繰り広げられた。なかでも一晩、ヴァイオリニストのフェリ
ックス・ラジュコのリサイタルが(教皇庁)中庭で組まれていた。

 ベルリンからは、シャオビューネのディレクトゥール、 T・オス
ターマイヤーが、一昨年に続いて招かれており、 G・ビュヒナーの
『ダントンの死』を上演する。また、英国人 D・デクランが、モス
クワからプーシキンの『ボリス・ゴドノフ』をもってきた。

 一方フランス国内からは、あまり知られていない約30の劇団が組
織しているFFTI(フランス国内演劇勢力)から、ADAMIの後援で、8
劇団がフェスティヴァルと共同制作している。J.ポワロ演出でJ.ジ
ュネの『バルコン』、L.ウルムセール演出でN.コリーダの『オジン
スキーのポロネーズ』、S.クローヴァとF.マックギネス原作『大地
の塩』(G=P.クロ演出)、O.ダルベリィと M.シャックランの『翼
をもった野兎は別の動物』、C・ヒスマン作『転落者』を作家と O.
ワーナーが演出、 P・ヴァンサン演出でH.ミュラー『タイタスの解
剖、ローマの泉』、S.モーリス演出で『マクベス』、F.フィスバッ
ク演出、B.モンテット振付の演劇とダンスを混合させたラシーヌの
『ベレニス』、以上の8公演。

 同じFFTIからあと5作品がある。 X.デュランジェの新作『約束』、
J.ヴァンセ演出でJ=M.ピエムの『栄光』、A=L.リエジョワの『壜
詰め』、そしてJ=L.ラガルス二作品『遠くの国』(F・ランシャッ
ク演出)と『ミュージック・ホール、浴槽、ハーグへの旅』(F.ベ
ルール演出)が組まれている。 その他のフランス組は、B.ソベル
がA.ジャリの『ユビュ王』、J.ニッシュが B=M.コルテスの『黒人
と犬たちの闘い』、C.トルジュマンがプルーストの『スワン家のほ
うへ』を要約のモノローグにまとめた『だから、私は肩で時を押し
出したのだ』、L.ウイルソンは『ベレニス』を提供していた。

 昨年、非常に少なかったダンス公演は、これまで通りの比重を占
めている。中庭の二作品のほかに、J.ナジが『襞の時』、A.プレル
ジョカージュが『ヘリコプター』『MC14/22』の二作品。 F.ラッテ
ュが国立サーカス学校の学生を率いて『I部隊』。その他 F.ルイー
ズ、F.トラオレ、K.ハーンのユニットの『犬と狼』とH.ファッドミ
による『ヴィフ ・デュ・シュジェ(主題の核心)』のプログラム。

 新規のフェスティヴァルの公演会場では、イロトピィ劇団によっ
て、ヴィルヌーヴ・デ・ザヴィニヨンのサン・タンドレ砦が加わる
が、今年度は経済的理由でもってブルボン採石場もシャトブランも
使用されない。

 ミレニウム特別文化予算のついた1998年から2000年の3年間と比
較すると、予算規模は小さくなり、会期も短くなり、演目も40に留
まっているが、それでも、これほどの内容ではもちろん"IN"だけで
すら、ハシゴするしかない。  

[松原道剛]
 

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