FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 08


■アヴィニヨン演劇祭OFF 2000

 今年のアヴィニョン演劇祭は7月6日から30日まで。南仏の中世に
栄えた城塞都市のミレニアム、の演劇祭ということになる。

 自由参加のオフには、530ものカンパニーが集り、市内外の100余
りの劇場で、期間中毎日、午前から深夜までのきなみ上演し続ける。
殆どフランスの劇団だが、これまでベルギーやロシア、アフリカ諸
国やアメリカの劇団も、1、2は必ず参加している。日本からは例年
ダンスのシャクティ、路上パフォーマンスで雪竹太郎。その他これ
までに黒テントが3度ほど、去年はこんにゃく座が初参加していた。

 毎年ダントツの人気作家は、モリエール。今年は10本。二番目に
多いのはシェイクスピアで、1998年は2本しかないが今年は6本。ほ
かにS.ベケット、B.ブレヒトから、V.ユゴー、マリヴォー、C.ゴル
ドーニ、J.ラシーヌまで、1〜3本の上演がある。またJ=P.サルトル
やA.カミュ、M.デュラスの名前を見出せる。ともかくテクストしか
知らない作品の上演をここにくれば見れるというのは邪道だろうか。
とはいえ所謂古典より現存作家の方が圧倒的に数は多く、全作家の
4分の3を占める。D.フォなどを除けば、座付き作家が自分の劇団で
上演するケースがほとんどで、そういった作家たちのために劇作家
会議などの呼びかけもある。あと複数の作家作品を組み合わせて翻
案したものも多く、また稽古を重ねながらストーリーを創り上げて
いく「集団創作」も27団体と相変わらず多い。 

 外国劇団では、同じフランス語圏のベルギーが目立つ。他にはロ
シア、ポーランド、カナダ、米国、スイス、イタリア、スペイン、
リュクセンブルグ、ドイツ、韓国など。アフリカ大陸からの劇団は、
去年はもっと目だったのが今年はどうも見当らない。

 日本から演劇部門には西山水木がダンスと演劇を混在させた東洋
的な作品『祈りのあとに』を提出している。またダンス部門に 5つ
のグループ。以前参加したコセキ・スマコは舞踏の非人間化された
身体性でもって私たち人間の存在の神秘を描く。『イマジネネール
な人物』のミズトアブラ(水と油?)のイリュージョン的な写真は中
原中也のような帽子の詩人が書物を読んでいる。驚きと奇妙さに溢
れた振付けは、想像的な世界に観客を誘う。シャクティは安部公房
の『砂の女』を題材にしている。それとコンテンポラリーダンスで、
NIBROLL 『東京市民プール』は日本社会をコンクリートで固められ
た海であるプールに喩える。もう一つは、アート・ダンス・シアタ
ー・ファンクションは『女郎−女性』で広義にとらえた女性のミス
テリアスな空間を表現する。純粋に演劇作品で日本から、というの
は今年はないもよう。そして雪竹太郎は健在。 3年分のプログラム
で彼は毎年提出する写真が同じよう。常連としての自信がうかがえ
る。

 なんとなく見たいと思ったのは、ハーケンクロイツの旗写真とい
う上演紹介。フランスの演劇祭で大丈夫なのかと作家を見たら、ブ
レヒト。タイトルは『キャバレ・ノワール』で、説明文には、ワグ
ナーと書いてある。どういう上演なのだろう。こうした紹介記事が
50 0もあるが、フランス国内の劇団が殆ど。全国からもし、これだ
けの団体が自分の近所に集って一ヶ月間、夜中午前まで上演してい
たら、相当耐え難いの気がする。一方、人が住んでいる市街地だか
ら、一ヶ月近くも多くの団体が滞在できるのだろう。

 プログラムには参加劇団が提出した紹介文と写真の一覧が、演劇
では現存作家とそれ以外の作家、子供向け公演、サーカス、ダンス、
路上パフォーマンスに分類され、アルファベット順に掲載されてい
る。これに対し作家別の他、スペクタクルのタイトル別、劇場別、
劇団別のインデックスがついており、さまざまな視点から本文にア
プローチできるようになっている。なかでも、朝10時から深夜にい
たる毎時間ごとのパフォーマンスの一覧表は、これを片手に城壁内
の、あるいはローヌ河を渡ったヴィルヌーヴ市の劇場をはしごして
駆け巡るのに役に立ちそう。その他、演劇関係の講演やらシンポジ
ウム、それにさまざまな展覧会の案内がついている。これにあとレ
ストラン ・ガイドもあれば鬼に金棒なのだが。

 このB4変型版の100頁をこえるプログラムは、教皇庁広場のコン
セルヴァトワール・ド・ミュジークの OFFの事務局あるいはレピュ
ブリック通りのオフィス ・ド・ツーリスムで無料配付されている。
このほか各劇団は、街中で宣伝カードを配る一方、上記の事務局で
すべての劇団用のカード棚が設置されている。また、ここには全国
紙や地方紙に掲載された各公演の紹介記事や批評記事がファイルさ
れて自由に閲覧できる。すべてのOFF公演が約30%割引になるカルト
は75フランでここで入手する。各公演の入場料金はカンパニーが自
分できめるが、割引になるとおよそ50〜60フラン程度。Tシャツ、
バックなどの OFFの記念グッズもここで購入できる。では実地につ
いては次号。 

 [杵渕里果]
 

 戻る ・ 次へ 

AVIGNON  GIDE  INDEX

THEOROS  FORUM  TOP