FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 07


■アヴィニヨン演劇祭2000"IN"

 今年54回目を迎えるアヴィニョン演劇祭は昨年の盛況を反映、ま
た「2000年はヨーロッパ文化都市であるアヴィニヨンの年である」
として力を入れたイヴェントを組む。7月6日から30日までの期間中、
招待公演の"IN"では32演目の公演が予定され、そのキャパシティ
の総数は160000席になる。

 7月6日に主会場の教皇庁中庭でダンス部門としてはじめての開幕
を告げるのはピナ・バウシュの『窓ガラス磨き』(〜8日まで)。し
かしこの10年間の彼女の振付のなかでもっともツマラナイ作品との
酷評も。同会場では続いて12日から22日にジャック・ラサル演出で
エウリピデスの『メディア』。主役のイザベル・ユペールはアヴィ
ニヨン大デビューとなる。もう一つはジャン・ピエール・ヴァンサ
ン演出のミュッセ作『ロレンザッチオ』(26日〜30日)。タイトルロ
ールにジェローム・キルシェを迎える。

 2000年の世界文化特集地域は「バルティックからバルカンまで」
というタイトルで中央ヨーロッパを取り上げる。『THEOREM』 プロ
ジェクトは若い創造者たちによる8つのスペクタクルである。 今年
のヨーロッパ文化都市に選ばれた14都市とも協力してフランスでの
地名度の低いブルガリア、ラトヴィア、リトアニヤ、マケドニア、
ハンガリ、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ロシア、スロヴ
ェニア、チェコ共和国、ユーゴスラヴィアの演出家や振付家を招集
する。英国のピプ・シモン・グループは『An die Musik』の新しい
ヴァージョンをルーマニアの俳優と発表する。ハンガリのラツロ・
ユディはフランスで制作したチェホフの『桜の園』を上演する。ま
た、ヴォルポーニ工場が、観客を部屋に招いての汎ヨーロッパ的な
スペクタクルのための『ホテル・ヨーロッパ』に生まれ変わる。

 その他のヨーロッパの招待作品は、イタリアのロメオ・カステリ
ッチの『創世紀』、ベルギーのアラン・プラテルの『すべてのイン
ド人のために』は、ジェスチュアによる挑戦的な演劇だ。そして旧
ソ連邦の演劇史の生き証人、83才のユウリ・リュービモフ演出のペ
ーター・ワイスの『マラー=サド』も予定されている。またカナダ
のケベックからはドニ ・マルローがノルマン・ショレットの『Le 
Petit Kochel』を演出。

 フランス側からは、ヴァレール・ノヴァリーナが新しい戯曲『赤
い起源』を、ロラン・ペリーとアガタ・メリナンはオペレッタ『こ
れは人生じゃない?』を提供。演出では、ミシェル・ディディムが
ハノッシュ・ルヴァンの『ヤコブとリーデンタル』、ジャック・ニ
シェが『次に生まれ変わるときには』、パスカル・ランベールは『
ギルガメッシュ』、またエリック・ラカスカドはチェホフの三大悲
劇(『イワーノフ』『かもめ』『三人姉妹』)を上演する。

 目下注目されているのは、オリヴィエ・ピィの新作『愉快な黙示
録』。オバネル体育館で1995、96年のマラソンに続く上演時間 7時
間の超大作だ。 

 また曲馬のスペクタクル、バルタバス率いるジンガロがアムステ
ルダムで創作中の新作『トリプティック』を、ブーレーズの新曲と
ストラヴィンスキーの『春の祭典』『詩編交響曲』の音楽を用いて
フェスティヴァル期間中を通して上演する。ディディエ・ガラスの
『空約束』は仮面芝居をめぐるフランス、日本、中国の出会いをイ
メージしたものという。

 カリエール・デュ・ブルボンでは、フィリップ・コルベールの自
伝『ある俳優の物語』の未出版の2 章にもとづいた『クロディヌと
演劇』を自作自演。

 その他の演目として、長年アヴィニヨン"OFF" で公演を続けてき
た演出家たちが、これまでの劇場のままに"IN"に登場する。シェヌ
・ノワール劇場ではジェラール・ジェラスがモリエールの『守銭奴
』、デ・ザル劇場のアラン・ティマールはカフカの『審判』、スタ
ジオ・サン・ロッシュのルイ・カステルがチェホフをもとに『パッ
サージュより』とそれぞれ「古典」を取り上げるの対し、カルム劇
場のアンドレ・ベネデットは、自作の『ジョルダーノ・ブルーノと
の宿屋での一晩』を上演する。 "OFF"の活動家たちが一部を除きは
じめて、揃って"IN"に進出することになる。 

 城壁外のヴィルヌーヴ・デ・ザヴィニヨンはフットバーン・トラ
ヴェリング劇場のゴーゴリ作『検察官』を迎える。恒例のシャルト
リューズのセミナーはアンリ・ブショオのプログラミングで作家た
ちが現代のエクリテュールを探る。

 ヨーロッパ文化都市としての本年は、5400万フラン以上の予算が
組まれ、その内、国の助成金が約37%、アヴィニヨン市の分担は約
14%。またそのおよそ3分の1弱は、10万枚以上のチケットをさばい
てまかなうという。その常時の事務局はなんと20人弱…と聞くと、
ただ驚いてしまうばかり。

 自由参加部門のOFFの方は、新規参加者が例年20〜30本づつ増え
ているのだそう。ではまた、そのOFFの予告もおたのしみに。 

[杵渕里果]
 

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