FESTIVAL D'AVIGNON

アヴィニヨン演劇祭公式ガイド 05


■OFF参加〜こんにゃく座の場合

 前号本欄で、パフォーマーのアヴィニヨンOFF の参加手続につい
て少し触れた。今回は具体的に、昨99年夏にOFF初参加した、"オペ
ラシアターこんにゃく座" の準備模様を、手伝った"黒テント"の横
田桂子さんから取材した。

 まず98年11月、国際交流基金と東京都歴史文化財団に助成金を申
請した。その決定が99年4月。 事務局へのプログラム掲載の申請期
限が4月1日なので、劇場の仮押えなどの準備を進めながらも、渡航
費用がかかる日本からでは、この時点でようやく参加の見通しが立
つ。助成決定後にいよいよ本格的に始動する。

 とはいえ、劇場を決める前に下見できれば一番だ。こんにゃく座
が仮押えしたフュナンビュル劇場は、96年に黒テントが使用した経
緯がある。ここはアヴィニョン市街西に位置する表通りからやや奥
まった場所にある、約 120人収容のミニシアターといった趣。しか
し、キャパや舞台サイズ、料金以外の劇場や周辺の雰囲気等はパン
フレットからは推測できない。 OFFの事務局に直接相談するのも有
効ではある。

 さて参加決定後、 5月に下見に渡仏。舞台美術家と横田さんが渡
仏。彼女は95年から3年間にわたる黒テントのOFF参加に加わり、手
続の経験者でもあり依頼された。

 下見といってもまず劇場責任者とパリで打合せ(責任者はアヴィ
ニヨン在住者とは限らない) 。劇場側に劇場図面や機材一覧などの
詳細な資料のない場合が殆ど。例えば他の劇団と共用する基本的な
照明と、追加や移動のできる照明の配置、またそのメーカーについ
ての打合せが必要。バトン数や音響システム等のリストは特には用
意されていない。こちらから質問表を作り、逐一確認、要求するこ
とが肝心という。加えて、コンピューター操作や万が一のトラブル
対応に劇場側から付く人はいるか、前後の劇団との時間区切りの目
安等、ソフト面の質問も忘れずに。

 翌日、アヴィニヨンに劇場実地の下見へ。ビデオカメラを活用し、
出入口の段差から照明器具の扱いまで隈なく録画したそうだ。

 さて、こんにゃく座は演劇祭後半の 7月22日から31日までの10回
の公演を計画。上演時間は午前10:15から1時間20分。時間は劇場仮
押さえ時点で、すでに午前と深夜の回のみしか空きがなく「セロ弾
きのゴーシュ」という演目と、座員が他の出し物を見やすいように
との配慮から午前中を選んだ。

 7 月15日より先行三名が機材やポスター等の準備に渡仏。ちらし
、ポスターは殆ど日本で印刷したが、現地でも追加した。現地のほ
うが割高という。これまであった立看板は、ミストラルの際危険と
いう名目で禁止になったそう。

 招待状やパンフレットは、プレスをはじめ、劇団、個人など前も
って日本から送付した。また現地でも、各プレスの支局、臨時支局
などをできる限り回っている。記事がでれば効果はあるだろうが、
その招待状などで来た人は少なくない。テレビの取材もあったとい
う。

 ところでアヴィニヨンでは口コミが大きな情報源だ。カフェで隣
会った同士でも面白い芝居の情報交換がさかんで、その点、新参者
でも良質の芝居なら楽日にかけて客足を見こめる。とはいえプログ
ラムの写真も大いに参考にされる。A3版の見開きに24劇団の中での
3〜4cm四方の紹介写真だが、かなりのイメージを伝えてくれる。 4
月1日までの参加申込み時点で事務局に送付するので、その前にし
っかりと用意した方がいい。

 さて本隊だが、19日夜到着、早速他の劇団の公演終了後の深夜と
翌早朝に仕込みに入る。20日と21日には、公演時間枠を使っての舞
台稽古である。『ゴーシュ』はオペラなので、ピアノを現地でレン
タルしている。その他舞台装置をつくり直し、演出もあらためてア
ヴィニヨン版をつくるなどの工夫もあった。大道具小道具の収容は、
劇場の倉庫を他各劇団とスペースを割り振りで共用する。また稽古
場は、宿舎の広い中庭と、集会室などのスペース等を利用して、連
日午後からダメ出しなどをしたとのこと。

 演劇祭らしい宣伝活動といえば、ちらし配りやパレードだが、こ
れはほぼ毎日おこなったそう。街あちこちの広場を、大道芸を邪魔
しないよう気を配りつつ、2〜3曲ごと演奏して廻る。多くの人が立
ち止まって絶賛してくれたそうだ。

 いよいよ初日。これらの甲斐あって初参加にして満員となった。
日本語のオペラだが、場面の要旨を紙芝居式の仏語字幕で伝えた。
これはことばを主軸に据えていたこの劇団が、身体と音楽を中心に
どこまで表現できるかという試みでもある。最後まで誰も席を立た
ず、拍手賛辞が起り、大成功であった。

 最後に横田さんに質問。「アドバイスは?」「まずは少しでもフ
ランス語から!」とのこと。こんにゃく座は海外公演を十年間暖め
ていたという。日本での公演と同じく、徐々に計画を煮詰めること
が、大切なのだろう。

[杵渕里果]
 

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