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詰将棋おもちゃ箱くるくるおもちゃ箱
くるくる展示室 No.310 馬屋原剛さん
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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
持駒は双方なし 60手台

くるくる展示室No.310 馬屋原剛

詰将棋パラダイス誌で、今年から大崎壮太郎さんと共同でデパートの担当になった馬屋原剛さん。 全国大会握り詰で優勝裏短コンで優勝など創作も絶好調です。

おもちゃ箱では、主に記録展示室で活躍している馬屋原さん、双方持駒なしという受方持駒指定の作品で、くるくる展示室に初登場。 さてどんな作品でしょうか。

合駒がないので、77龍とか王手すると逃げる一手。 勘のいい人ならすぐに、あ、これは龍ノコで4枚の桂を取りにいくのだな、とわかったことでしょう。

ところが、受方もさるもの、最長に応手というルールにしたがって受けの妙手を繰り出し、不思議な趣向が展開されることになります。

  77龍、89玉、86龍、79玉、75龍、76桂

取られる寸前の84桂を76桂と跳ねて中合しました。 桂を跳ねずに89玉と逃げると84龍と1手で行けるところを、桂を跳ねることで、同龍、89玉、86龍、79玉、75龍、89玉、84龍と7手もかけざるを得なくなり、受方にとって6手の延命に成功しました。

これって無駄合じゃないの? と疑問に思う方もいるかもしれません。 無駄合は、取った合駒を使わなくても合駒しないときと同様の手順で詰む(したがって最後合駒が持駒に余る)のですが、本作の桂跳ねはもともと取られるはずの桂ですから、この桂を使わなくては詰まず、持駒も余りません。 このような移動中合を「ヤケクソ中合」と呼びます。

普通のヤケクソ中合は2手延びるだけですが、本作ではヤケクソ中合を龍ノコの引き戻しに使うことにより6手延ばすようにしたところが斬新。 本作は更に桂を4枚配置することで、それを何回も繰り返すヤケクソ中合入り龍ノコに仕立て上げました。 なお、2手延びのヤケクソ中合を入れた趣向作品は、くる展No.116(菅野哲郎さん)など、いろいろ作られています。

さて、原理がわかったところで、続きを楽しみましょう。

  76同龍、89玉、86龍、79玉、75龍、89玉、84龍、85桂
  同龍、79玉、75龍、89玉、84龍、79玉、73龍、74桂
  同龍、89玉、84龍、79玉、73龍、89玉、82龍、83桂
  同龍、79玉、72龍、89玉、81龍、79玉、

桂を4枚とも取ってしまったのに、なぜ、まだ龍ノコを続けるのでしょうか。  それは、69と以下収束に入ったとき、59玉に51龍と歩を取るためです。 桂を取るだけでなく、龍を一段目に動かすことも龍ノコの目的だったんですね。

  69と、同玉、78銀打、59玉、51龍、48玉、58龍、37玉、38龍、26玉、

舞台を右に移して、ここから取った4枚の桂を連打します。

  18桂、25玉、17桂、24玉、16桂、23玉、15桂、12玉、
  24桂、11玉、23桂不成、同歩、12歩、22玉、32龍 まで61手

この収束で桂4枚と歩が必要なので、それを取るための龍ノコでした。

作者 「創作のきっかけは、風さんの詰将棋用語辞典の「やけくそ中合」の項について考えていたときに、4手以上手数を伸ばすことができるのではないかと思ったことです。 本作では桂を用いて6手のばしています。角を用いればさらに伸ばすこともできるでしょう。」

今は「馬鋸や龍鋸に応用すれば2手以上伸ばすことも可能」と記述されていますね。 本作が登場したので追加されたのかも。 ヤケクソ中合は必ずしもノコ引きで取られる位置にある必要はないので、馬ノコ・龍ノコや龍追いなどと組み合わせれば、1枚で何十手も延びるヤケクソ中合いも可能なはずです。 どなたか作ってみませんか。

ところで、この作品を最初に見せてもらったときは、このような図でした。

趣向部以外にもヤケクソ中合が登場するおもしろい作品でしたが、ちょっと本格的すぎてくるくるには厳しいということで、やさしく作り変えていただいたのが出題作品です。

原図もなかなか味わいがあるので、ぜひ合わせてご鑑賞ください。

棋譜ファイルはこちら ===> くるくる展示室No.310原図

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

山下誠さん:
桂の移動合が、手数伸ばしのちょっとした嫌がらせ。面白い趣向でした。
波多野賢太郎さん:
最初、盤面を眺めて、桂馬四枚を取って右上で詰ますのがなんとなく予想できたので、意外とスンナリ解けました。桂跳ねの捨合も、初めの龍の動きを見てパッと閃きました。しかし、四桂捨合の粘りから四桂連打は見事な手順だなと思いました。
長谷繁蔵さん:
手数表示で大助かり
占魚亭さん:
前半の竜ソッポと桂移動合のサイクルが素晴らしいです。
永島勝利さん:
48手目で15玉を考えたのですが、ここでも持駒制約の威力を発揮するのですね。
長年の習慣があるので、なかなかなじめません。

1筋に逃げるのは3x龍で合駒がないので早く詰みます。

加賀孝志さん:
楽しい桂の捨て方、持ち駒限定、くるくる、の表題にピッタリ
原田雄二さん:
桂のとらせ方が面白い。また、51歩をとらないと一歩足りず詰みません。
鈴木彊さん:
79玉を89玉へ更に79玉と龍で桂4枚を取る間釘付けにする攻め方は見事。
この後玉を11玉まで追って22玉で終図とは予想もできない展開には驚きました。
ぬさん:
どうも早く詰むと思ったら、取られそうな桂を捨てて延命する手がありました。
S.Kimuraさん:
最初は,51の歩を拾わずに,龍を6段目に戻してしまい,詰まなくなって困りました.
竹中健一さん:
桂の配置の妙でうまく手数が伸びるんですね!
攻めダルマンさん:
途中桂馬を跳ねる所が面白い。
隅の老人Bさん:
次々と桂を跳ねての手数伸ばし。
4桂連打で易しく終局。「くるくる」は、かくありたいものです。
ハマGさん:
桂移動中合療法で還暦を迎えることができた王様。
池田俊哉さん:
やけくそ中合による変則軌道の龍鋸。51歩を持駒にすると帰りのルートが非限定になるのかな?

51歩が最初から持駒だと、4枚目の桂跳ねが成立しません(跳ねた方が早いので)。

小山邦明さん:
桂ハネで龍の進みを遅らせるのが面白く、入手した桂の使い方も上手い。
嵐田保夫さん:
うっかり41手詰かと思ったが流石に芸が細かい。何となく作者のスケールの大きさのようなものを感じる。

くるくる展示室No.310 解答:21名 全員正解

  赤井秀雄さん  嵐田保夫さん  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  加賀孝志さん
  キリギリスさん  日下通博さん  小山邦明さん  鈴木彊さん  隅の老人Bさん
  攻めダルマンさん  占魚亭さん  竹中健一さん  永島勝利さん  ぬさん
  長谷繁蔵さん  波多野賢太郎さん  ハマGさん  原田雄二さん  福村努さん
  山下誠さん

当選者は、全題の解答発表のあと、展示室で発表します。