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詰将棋おもちゃ箱詰将棋研究室

研究展示室 No.9 やよいさん

詰将棋研究室
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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
馬×馬 350手台

研究展示室No.9 やよい

詰パラやおもちゃ箱でユニークな趣向詰を続々発表されているやよいさん、300手超えの作品で研究展示室に登場です。

本作でキーになるのは2枚の馬。 63の馬で玉をぐるっと移動させながら33の馬で馬ノコするのが基本的な構成です。

最初の目標は44桂を取ること。 初手は45馬の一手。 65玉と逃げると、43馬、64玉、63馬、55玉、44馬、と簡単に44桂を取られてしまうので、 57玉と逃げて、ここから馬の回転追いが始まります。

  45馬、57玉、46馬、58玉、47馬、68玉、69馬、77玉、
  78馬、86玉、87馬、85玉、96馬、94玉、95馬、83玉、
  94馬、73玉、72馬、64玉、63馬、65玉43馬、56玉、

63馬に55玉ならすぐに44馬と桂を取られるので、65玉と逃げて、43馬、56玉でもう1回転することになります。

  45馬、・・・ 63馬、55玉44馬、56玉、

2回転する間に33の馬が43、44と動いて44桂の奪取に成功しました。
44馬を同玉と取られたら? 実はそれが収束手順なのです。
取らせるためにはどうすれば良いかというのがポイントで、そのために馬ノコで11歩を取りに行くというのが本作のストーリーです。

さて、この馬ノコ、馬が動く度に56玉と逃げられ、ぐるっと回転することを余儀なくされます。 添川公司さんの「桃花源」と同様の構成(いわゆる「一手馬ノコ」)で、 「桃花源」では一手ごとに左右を往復していますが、本作ではここの部分が馬の回転追いになっているわけですね。 では、実際に11歩を取りにいってみましょう。

  45馬、・・・ 63馬、65玉43馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、55玉33馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、65玉32馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、55玉22馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、65玉21馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、55玉11馬、56玉、

ようやく11歩奪取に成功。 このあと取った歩を使って収束するのですが、その前に馬を43まで戻さなければいけません。

  45馬、・・・ 63馬、65玉21馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、55玉22馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、65玉32馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、55玉33馬、56玉、
  45馬、・・・ 63馬、65玉43馬、56玉、

43馬型に戻したあともう1回転して、14回転目で63馬のところで65歩と打って収束にはいります。

  45馬、・・・ 72馬、64玉、65歩同と上、63馬、55玉44馬同玉、

65歩を同と引と取るのは、63馬、55玉、33馬と合駒請求して早い。
44馬に56玉と逃げるのは、45馬右とこっちの馬で追えば簡単。 これが馬を43まで戻した意味でした。

  45金、43玉、52馬、同歩、44香、32玉、24桂、22玉、
  21銀成、23玉、22成銀、同玉、12香成、23玉、13歩成(成香) まで353手

2枚目の馬も消して、きれいに収束。 回転馬追い×1手馬ノコのシンプルな機構で、14回転、300手超えはすばらしいですね。

作者 「回転馬追いに1手馬ノコを組み合せた図です。 ご覧の通り至極単純なメカニズムながら、300手を超える長手数になりました。
攻方はまず収束に必要な44桂を入手、このとき玉は44馬を取ると直ちに収束に追い込まれるため、取らずに周回移動を続けます。 この馬を取らせるには65地点を塞がねばならず、そのために必要な11歩を取りに行く…という流れです。
333手目63馬以下の迂回手順はやや残念ですが、解消困難のようです。」

迂回手順とは、65歩のところで63馬、55玉、45馬、64玉としてから65歩を打つ順で、余り気にならないところ。

それでは皆さんの感想を(解答到着順)。

吉田京平さん:
図面とヒントから、回転型馬追い×馬ノコはすぐに見えました。
ただし馬ノコの軌跡が短いように見えるため、これで350手超えを達成するのは難しそうに思ったのですが、なるほど一手馬ノコですか!
シンプルな意味づけで一手馬ノコが成立して、他の追い趣向とも組み合わせられそうですね。
この趣向で全着手馬の長手数記録更新も期待しています。
山下誠さん:
左右の馬を使って桂馬と歩を入手するために14サイクル。 収束も分かりやすく、趣向手順を堪能した。
S.Kimuraさん:
左の馬で追って,玉を1周するところまではできたのですが, 右の馬で11の歩をいきなり取りに行こうとして,失敗しました.
小山邦明さん:
馬の回転と馬ノコの組み合わせが、シンプルな手順でできている。 傑作。
津久井康雄さん:
いきなり趣向手順から始まるので、あまり迷いなく解けました(と、思います)。
しかし、長手数のサイクル趣向モノは手数カウントに不安を感じます・・・
おかもとさん:
馬鋸で11歩を取るのはなんとなく想像できても、最後まで破綻なくまとめる手腕はさすがですね。
岡田武夫さん:
馬追いと馬鋸の斬新な組み合わせで350手超えは、見事と言うしかない。 400手超えも可能でしたら創って貰いたい。
池田俊哉さん:
回転馬追い+馬鋸であるが、回転馬追い一周に対して馬が一度動く、所謂「一手馬鋸」であり、 特に凝った仕掛けもなく実現できているのはすごい。
「馬X馬」は仮とは思うが、あの名作があるのでしっかりした命名がほしい気もする

「馬×馬」は題名ではなく出題コメントです。 本作のように、あとで参照される可能性が高い作品は、できれば命名がほしいところですね。

たくぼんさん:
馬追いと馬鋸を上手く組み合わせてメリーゴーランドのような手順に子供たちも喜びそうです。
占魚亭さん:
馬追い+馬鋸。大活躍した馬2枚が消える、やさしい収束も良い感じです。
嵐田保夫さん:
配置間違いもあり大苦戦、丸一日かかってしまった。 おかげで締切過ぎてしまいました。 いつも思う事だが、解くことはさることながら、このような大作を作られている作者さんの労苦は並大抵のものではないと拝察いたします。 それにしても、手數表示には大いに助けられたのはありがたいが、情けないことでもある。

研究展示室No.9  解答:11名 全員正解(下記)

  嵐田保夫さん  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  岡田武夫さん
  おかもとさん  小山邦明さん  占魚亭さん  たくぼんさん
  津久井康雄さん  山下誠さん  吉田京平さん

当選者は、展示室で発表しています。