次へ
次へ
詰将棋おもちゃ箱詰将棋研究室
研究展示室 No.3 吉田京平さん
詰将棋研究室
詰将棋研究室

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:

と金崩し。380手台


作者:
去年のパラ11月の自作と同じ「桂ではがしを行う龍追い作品」の趣向を、反転型龍追い×と金はがしで表現した作品です。 龍追いの軌跡やはがし順など、いくつか非限定がありますが、手順前後や迂回手順などのキズはないはずです。 構想を提示して下さった橋本さんに感謝します。

龍追い作品は繰り返しの機構としてはがし趣向を利用することが昔からよく行われてきました。 はがす仕組みとしては、龍で直接取りにいくか、はがす駒を龍追いの軌跡の上に移動させて龍で取るのが一般的です(図巧100番「寿」など)。

1995年4月に発表された広沢芳香さんの「古時計II」は、この常識を覆し、香でと金をはがす斬新な機構を採用し、巧妙な持駒変換機構と組み合わせて889手という長手数を実現しました。 残念ながらこの作品は不完全で作意手順が発表されなかったこともあり、ほとんど知られない状態が続いていましたが、詰パラ2009年8月号で橋本孝治さんが古時計の研究を発表して全貌が明らかになりました。

この研究の中で橋本さんが示したのが「桂で「はがし」を行う龍追い作品を作れ」という演習問題。 これに応えて吉田京平さんが創作したのが、詰パラ2010年11月号に発表したこの図です。

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

龍追いで36玉に来たとき48桂と打ち、続けて龍追いして64玉のとき56桂と香をはがします。 取った香で桂を合駒させて取り、次の香をはがしていきます。

今回の作品では、はがす駒を香ではなくと金にすることで、はがす駒数が4から7と増加。 また龍追いの軌跡も大きくなり、手数も167手から385手と2倍以上に延びました。

桂ではがすといっても、すぐには桂を入手することはできません。 まずは手順を進めてみましょう。

  43飛、35玉、33飛成、26玉、24龍、37玉、

ここで27龍では48玉で困ります。 28龍がポイントで、48玉なら39龍、同歩成、59金以下。 36玉と折り返します。

  28龍、36玉、27龍、35玉、25龍、44玉、34龍、53玉、43龍、62玉、
  52龍、73玉、72龍、84玉、74龍、95玉、94龍、86玉、
  97龍、85玉、86歩、84玉、94龍、73玉、74龍、62玉、
  72龍、53玉、52龍、44玉、43龍、35玉、34龍、26玉、25龍、37玉、

これで1往復。 52龍で歩を取って折り返しで86歩と歩を使ったので、持駒(歩歩)の増減はありません。

  28龍、36玉、27龍、35玉、25龍、44玉、34龍、53玉、33龍、62玉、
  22龍、73玉、72龍、84玉、74龍、95玉、94龍、86玉、
  97龍、85玉、86歩、84玉、94龍、73玉、74龍、62玉、
  72龍、53玉、52龍、44玉、43龍、35玉、34龍、26玉、25龍、37玉、

2往復目には22歩を取りました。

  28龍、36玉、27龍、35玉、25龍、44玉、24龍、34桂合、同龍、53玉、43龍、62玉、
  52龍、73玉、72龍、84玉、74龍、95玉、94龍、86玉、
  97龍、85玉、86歩、84玉、94龍、73玉、74龍、62玉、72龍、53玉、52龍、44玉、
  43龍、35玉、34龍、26玉、25龍、37玉、

3往復目には13香に狙いをつけて24龍、34桂捨て合でこれを阻止します。 局面は同じですが、持駒が歩歩から桂歩に変わりました。

  28龍、36玉、48桂、35玉、25龍、44玉、56桂、同と、24龍、34桂合、同龍、53玉、43龍、62玉、
  52龍、73玉、72龍、84玉、74龍、95玉、94龍、86玉、
  97龍、85玉、86歩、84玉、94龍、73玉、74龍、62玉、72龍、53玉、52龍、44玉、
  43龍、35玉、34龍、26玉、25龍、37玉、』 = と金はがし

4往復目には桂を48に据えて、56桂とと金を1枚はがします。 あとはこれを繰り返して7枚のと金をすべてはがします。

  『と金はがし』 × 5
  28龍、36玉、48桂、35玉、25龍、44玉、56桂、53玉、23龍、62玉、
  32龍、73玉、72龍、84玉、74龍、95玉、94龍、86玉、
  97龍、85玉、86歩、84玉、94龍、73玉、74龍、62玉、72龍、53玉、52龍 まで385手

最後は56桂を取ることができなくなって、44に行けなくなり収束します。

反転型の龍追いと桂によると金はがしを融合させた作品。 はがすと金群を中央に配置することで、7枚と最大限の繰り返しに成功しました。 無理のない配置、すっきりした手順で解後感は爽快。 龍追い+桂によるはがしのリファレンスとして歴史に残る作品です。

それでは皆さんの感想を(解答到着順)。
ほいさん:
と金がいなくなっても破綻しないんですね。
よくできてますねぇ。
S.Kimuraさん:
龍で往復する手順は早く気付いたのですが,
桂馬をどこに打つのか分からず悩みました.
48に打ち,56に跳ねて,と金を崩すとは驚きです.
池田俊哉さん:
「龍追い剥がし」になるかと思うが、剥がす駒が龍ではなく桂と言うのが面白い。
盤中央で剥がすことで最大限に手数を伸ばそうという構成が素晴らしい。
隅の老人Bさん:
捨合で手に入れる桂を使っての剥がし趣向、巧妙。
暑い暑い、汗だくで王を追っかける。
詰め上げて、手数勘定、合っているかな?
占魚亭さん:
桂馬をどこで入手するかが分かれば、後は一気呵成。
 (この手数で合っているか自信ありません)
嵐田保夫さん:
香取りを防ぐ桂馬の中合いを逆用して自陣桂から歩を稼ぐ循環手順を成立させるとは見事の一語。まさに芸術の域に達しておられる。Great !  

研究展示室No.3 解答・感想:7名 全員正解(下記)

  嵐田保夫さん  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  隅の老人Bさん  占魚亭さん
  橋本元希さん  ほいさん

当選者は、展示室で発表しています。