本作は前作(No.68)と違って、これまでの金香問題とあまり変わらないように見えます。 配置でこれまでと異なるのは、95飛と53の駒がないぐらいでしょうか。 ところが、作者 「角香問題としては普通な初形配置ですが、色々な意味で上級向けだと思います。」
というように、いろいろな狙いを秘めた作品です。
まず最初の狙いは、作者 「主な狙いは以下の3つです。
(1) 初手63角の偽作意。定跡の72歩合は容易に詰むが、裏筋の受け72銀合で逃れ。」
No.68では74への守りがなく、41龍から74角成を防ぐ意味で72銀合をしましたが、本作は74には85銀が利いているので、その筋はありません。
では、63角に72歩合だと、どうなるのでしょうか。
63角、72歩合、84香、83銀合(銀以外は41飛成で簡単)、同香、92玉、
82香成、93玉、83成香、94玉、54飛以下21手で詰み。
40手台とヒントを出していることもあり、この解答はありませんでしたが、この順を防ぐのが72銀合で、84香には92玉で逃れ。
また、同角成は同角で、82銀とか84香とか有力な手はあるものの「惜しかったね」。
63角がダメなら84香しかなさそう。
83歩の中合に対して63角、同角、83香不成、71玉、41飛成で詰みだ! と思ったら、同角で奉納。
また、41飛成も71桂合で続きません。
一見ハマり手のようですが、83同香と取ってしまうのが実は正解。
95、85が埋まっているので成立する筋ですね。
84香、83歩合、同香不成、92玉、82香成、93玉、75角、94玉、
83成香まで引いてしまうと角が使えなくなってしまうので、93玉に75角と打ちます。
そして、ここからの手順が2番目の狙い。
作者 「(2)作意10手目〜12手目、受方の妙防74銀〜85飛の2連続移動合、さらにその合間に攻方も67角の限定打。」
54飛に74合は83角なので、74銀の移動合。
更に85を塞ぐために76角とすると、85飛と、連続の移動合で、
以下74飛、95玉、96歩、同玉、97銀、95玉、86角、同飛、94飛まで と思いきや同香!で奉納。
76角ではなく、一つ離して67角とするのが狙いの限定打です。
54飛、74銀、67角、85飛、74飛、95玉、86銀、同飛、
同角、96玉、
76角だと、86銀、同飛、同角を同玉と取られて、76角が74飛の利きを塞いでいるので逃れ。
そのための67角打でした。
そして3番目の狙い、作者 「(3)何もない空間に入玉させて追いまわす展開。
大道棋ではよくあるけれど本類型では初。」
97歩、87玉、77飛、98玉、76角、87歩合、同角、89玉、
76角に逃げるのは2枚飛車で簡単。
87歩と捨て合して延命を図ります。
69飛、88玉、68飛、78歩合、同飛引、87玉、
68飛に89玉は、98角、99玉、79飛まで。
そこでまたまた78歩の捨て合。
88飛、76玉、77歩、85玉、
ここから最後の5手は収束余詰、変同でいろいろな詰みあり。
最終手65飛、86馬(角)、83成香、83飛成、いずれも正解です。
53角成(64角)、94玉、83飛成、95玉、65飛(86馬(角)) まで41手駒余り
これまでとあまり変わらないように見える集客度75のシンプルな図なのに、
72銀合の逃れ、連続移動合、角限定打、入玉させてからも2回の捨て合と、いろいろな狙いを盛り込んだおもしろい問題。
No.68と共に、この類型の発展性を示した2題でした。
それではみなさんの感想を。解答到着順です。
- 山下誠さん:
- 歩の捨合と飛銀の移動合で延命をはかるも、大駒4枚の追撃には結局勝てなかった。
- 占魚亭さん:
- 74銀・85飛の連続移動合が上手い受け。
- 小山邦明さん:
- いろいろな大道棋が重なっているような印象を持ちました。
玉が7段目にきてからの攻防も驚くほど長かった。
- S.Kimuraさん:
- この形は75に玉方の駒がいることが多かったので,不思議に思っていたのですが,75角と打つ狙いもあったのですね.
移動合が2回連続で出るのもすごいと思いました.
- 隅の老人Bさん:
- 54飛に応える64銀の移動合、67角打には85飛。
これから先も長かった。
大道棋は黙って観戦、これが一番の好手です。
- 池田俊哉さん:
- 上部に追い出す角香問題。75角から54飛と攻めるが、下段玉を生大駒四枚では捕まえづらい。収束角の空き王手も良いが、こう攻めるのも面白いかも
最終5手、65飛、94玉、95飛、84玉、83成香の解。 もちろん正解です。
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