詰パラでは構想作で大活躍、春霞賞の候補にももっとも多く選出されている作者、
その創作力は構想作には留まらず、おもちゃ箱では記録作で初登場です。
小駒全駒の初形から予想はついた方もいそうですが、本作は小駒煙の長手数記録作品(125手)です。 小駒煙の長手数記録作は、はじめての小駒煙黒川一郎さんの「嫦娥」103手から始まって、同じ黒川さんの「雪女」111手、田中鵬看さんの「神武東征」115手、柳田明さんの「白峰」も115手、添川公司さんの「サボテンの花」が117手と、このあたりが限界かとも思える更新状況でしたが、今回、一挙に8手も更新、120手台にのせました。
なぜ、ここまで長手数化が可能になったのか、いままでの歴代小駒煙長手数記録作の玉の軌跡を調べてみました。
Sが最初の玉位置、Eが詰上りの玉位置です。

「嫦娥」は4段目までで、途中の横送りは「落花」と同様のはがし送りで玉は1段目と2段目をノコギリ状に動きます。
「雪女」は全く追い方が違うのが軌跡を見ただけでわかりますね。
収束も「雪女」だけが別なタイプで、あとの5作はすべて「嫦娥」型です。
「神武東征」は横送りは「嫦娥」と同様ですが、序で中段で手数を稼いでいるのが長手数化につながりました。
「白峰」も横移動ははがし送りですが、2段目でなく3段目でばらしたのが新工夫。
序の角合もあって115手で並びました。
「サボテンの花」は右辺、左辺で手数を稼いでいるのが見てとれます。
その分駒数が足りなくなって横送りはシンプルになったため、117手と2手の更新にとどまりました。
「童祭」は「神武東征」と雰囲気が似ていますが、序の中段での動きが角合も入ってより激しく、
ここで大幅に手数を稼いだのが125手と8手更新できた要因です。
「神武東征」、「白峰」、「サボテンの花」は小駒煙の長手数記録作品(旧)で鑑賞できます。
さて、それでは手順を見ていきましょう。
86歩、イ同銀不成、
初手は、76とや84とでは99、89の2枚の香が働かず続きません。
そこで香筋を通すための86歩。
イ同銀成はのちの95角合を香で取られたとき取り返せず早い。
イ94玉は84と以下、作意の途中に合流して早い。
かなり手数のかかる変化が多いので、適宜分岐棋譜でご確認ください。
76と、94玉、A84と、同玉、75成銀、ロ93玉、
87と左、95角合、同香、同銀、84角、同銀、同成銀、同玉、
ロ83玉は、74成銀以下、作意の途中に合流して早い。
Aで先に87と左は、95角合、84と、同玉、75成銀、83玉、
74成銀、82玉、83金、81玉、72歩成、同金、同金、同玉で95角が73に利いてきて逃れ。
手順前後は成立しない。
85と、同玉、86と、ハ84玉、85と、同玉、78と、二86歩合、
B76金、同玉、77銀、75玉、74金、84玉、86銀、94玉、
C95銀、同玉、96歩、同玉、87と、ホ85玉、86と、94玉、
85と、93玉、84と、へ92玉、91桂成、同玉、92歩、同玉、
83と、91玉、
ハ94玉も可(非限定)。
二86銀合は、74銀、76玉、67金、75玉、65と、84玉、86香以下。
二87歩合は、同香、86歩合、同香以下、または74銀以下。
B同香は、同玉、87歩、85玉、86銀、94玉、85金、93玉で逃れ。
B76銀は、94玉、84金、同玉、86香、85歩合、同銀、75玉で逃れ。
C85銀、93玉、84銀、94玉、95銀、同玉の迂回手順あり。
ホ95玉も可(非限定)。
へ82玉は、72歩成、同玉、71桂成、同玉、72金、同玉、73と左以下。
やっと一段目まで落とすことに成功しました。
ここまでで既に50手かかっています。
81香成、同金、82と、同金、同香成、同玉、72歩成、同玉、
ここからは「嫦娥」と同様のはがし送りの趣向手順。 お楽しみください。
73金、61玉、D62歩成、同金、同金、同玉、
63桂成、61玉、52金、同と、同成桂、同玉、
53と左、41玉、42歩、同銀、同と、同玉、
43桂成、31玉、32銀、同と、同成桂、同玉、
D62金、同金、同歩成も可(手順前後)。
以降は収束。 ここからも24と配置などで手数を延ばしていることに注目。
33と、21玉、E12歩成、同玉、13歩、同玉、14歩、同玉、
25金、13玉、24金、同玉、25と、13玉、14歩、12玉、
22と、同玉、33銀不成、ト21玉、22歩、11玉、23桂、12玉、
13歩成、同玉、24と、12玉、11桂成、同玉、21歩成、同玉、
32銀生、11玉、12歩、同玉、23と、11玉、21銀成、同玉、
32香成、11玉、22と(成香) まで125手
E32金は、11玉、12歩成、同玉、22金、13玉、
23金、14玉、24金、15玉で逃れ。
ト11玉、23桂、21玉、22歩、12玉も可(非限定)。
序の中段でのやりとりがおもしろく、ここで大幅な手数延ばしに成功。
これまでの記録を8手も更新した、小駒煙の長手数記録作品でした。
- 作者:
- 小駒煙の長手数記録作です。
添川公司作「サボテンの花」117手から8手更新しました。
収束は既成手順を利用していますが、序盤の手順は面白いと思います。
紛れ(A)(B)と変化との繊細な関係で作意が成立している点が気に入っています。
角合が出てくるので純粋な小駒煙ではないと主張する人がいそうですが、
「66成銀」と「74と」を入れ替えれば10手目の合駒は角銀非限定となり、
その場合安い銀合をするのが普通なので一応純小駒煙になります。
タイトルは東方projectの曲から引用。
「どうさい」ではなく「わらべまつり」と読みます。
「安い合駒をするのが普通なので」純小駒煙というのは、ちょっと無理があります。
もっとも、おもちゃ箱での記録の項目は小駒煙と純小駒煙は分けていないので、角合が入っても問題ありません。
小駒煙で角合させて馬ノコで150手超えとか、まだまだ可能性がありそうなところ。
もちろん、「純小駒煙の長手数記録作品」を別項目として立てることも考えられますが、
純貧乏煙、純歩なし煙とか、煙詰関連の項目がほぼ2倍に増えてしまうので悩ましい。
また、現在の定義は、「盤面飛角以外35枚、詰上り3枚」と持駒に触れていないので、
盤面小駒煙で持駒飛飛角角などという作品が登場したらどうするか。
これも悩ましいですね。
「純小駒煙だけは項目をたてるべき」とか、
ご意見のある方はおもちゃ箱掲示板でお聞かせください。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 長谷繁蔵さん:
- No.86も86歩同銀不成以下考えましたがギブアップ。
3題だけで宜しくお願いします(少し夏バテ気味)
「暑さに負けるな」と出題しましたが、やっぱり暑い時期には厳しかったですね。
- 平井康雄さん:
- 小駒煙の最長手数ですね。
序奏が難解で、角合が出てすぐに消えるのがご愛敬ですが、この点は柳田作に似ていますね。
「サボテンの花」だけでなく、「驟雨」も超えていることに価値あり。
駒場和男さんの「驟雨」は、普通の全駒煙で、
8手目で持駒金の小駒煙になるというおもしろい作品。
「童祭」の登場により参考記録作品ではなくなってしまったので、ここでリンクして残しておきます。
- 池田俊哉さん:
- 小駒煙最長手数でしょうか。
一瞬角合が出るので純小駒とは言いづらいが、序盤の捌きでうまく手数を稼いでいる感
- たくぼんさん:
- 後半はよくある感じですが、前半の面白さは抜群。
- 隅の老人Bさん:
- 途中に大駒が登場するのはご愛嬌。捌き良し、解けて気分は最高、煙大好き。
- 占魚亭さん:
- 玉を下段に落とすまでが考え所。小駒煙最長記録とは凄いなぁ。
- S.Kimuraさん:
- 86歩から入ってみましたが,その後にどうしたらよいのか分かりませんでした.
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