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詰将棋おもちゃ箱記録に挑戦!

記録展示室 No.87
中村宜幹さん・芝勇輝さん「アンバーグリス」

記録に挑戦!
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棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)
出題時のコメント:
アトランティス作者の復帰記念作 600手台

記録展示室No.87 中村宜幹・芝勇輝「アンバーグリス」

歴代3位の長手数、アトランティス(951手)の作者の一人、 中村宜幹さんから、詰棋界に復活するといううれしいお便り。

作者:
長らくご無沙汰しておりました、中村宜幹です。
詰棋界に復活するにあたって、せっかくなので何か大作を土産にしようとと思っていたのですが、 このたび、芝勇輝と合作で、盤面成駒なしの長手数記録を605手に更新できる図ができましたので、 記録展示室向けに投稿させていただきます。
346手目の捨合の位置は33香/43香の非限定です。
手順の狙いは、22歩、12歩、13香の置駒を取るにあたって、玉方香捨合で粘るのですが、 玉方の香が尽きると同時に攻方の歩が尽きるため、左下の折り返しに香を用いねばならず、 玉方がそれを再回収して再び次の捨合に使用することにより、3枚しかない香で5回捨合が発生する点です。
実はこの構想、アトランティスの21歩配置が元になっています。

ということで、本作は盤面成駒なしの長手数記録作品(605手)です。 70作を超える300手以上の超長編作品の中で、盤面成駒なしなのは、山崎健さんの「表参道」455手、 深和敬斗さんの「宙船」339手、今村修さんの「天月舞」335手、山崎健さんの「馬×(馬+α)」331手の4作のみ。 超長編の創作にあたって、成駒なしというのが非常に厳しい条件なのがわかります。

本作でも使われている龍追い趣向では、往復または回転の回数を増加させるため、 置駒消去、持駒変換、と金はがしなどの手法が適用されますが、 超長編にするには複数の手法を組み合わせないと困難です。 例えば伊藤看寿の図巧83番「霞」は置駒消去で263手、図巧100番「寿」は持駒変換×と金はがしで611手、 両方の趣向を組み合わせた奥薗幸雄さんの「新扇詰」が873手という具合です。

盤面成駒なしの条件では、と金はがしが利用できないため、置駒消去と持駒変換が中心となります。 これまでの盤面成駒なしの長手数記録作品、 山崎健さんの「表参道」は置駒消去に香捨て合(持駒変換)2回で2往復追加して455手という長手数を実現しました。 本作も置駒消去+香捨て合(持駒変換)ですが、作者のことばにあるように、 3枚しかない香でなんと5回の捨て合を発生させ、一挙に記録を150手も更新しました。

さて、それでは手順を見ていきましょう。

  52飛成、44玉、43龍、35玉、34龍、26玉、25龍、37玉、
  27龍、48玉、38龍、59玉、49龍、68玉、

すぐに龍追いが始まり、68玉まで来たところで折り返します。

  79龍、57玉、59香、58歩合、同香、同玉、59歩、57玉、

折り返しで香を消費しますが、代わりの香は61、31で取れるので大丈夫。

  77龍、48玉、68龍、37玉、38龍、26玉、27龍、35玉、
  25龍、44玉、34龍、53玉、43龍、62玉、52龍、71玉、

ここで銀を取って舞台作り。

  81歩成、同玉、92銀、71玉、

これで82玉に91龍とすれば93に逃げられず折り返すことができます。

  61龍、82玉、91龍、72玉、81龍、62(63)玉、61龍、53玉、
  52龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、57玉、59香、58歩合、同香、同玉、59歩、57玉、
  77龍、・・・ 43龍、62玉、42龍、71玉、

次は61の香を取ったので、次に31の香が取れるようになりました。 なお、42龍に52歩の捨て合は同角成で簡単。

  31龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、57玉、59香、58歩合、同香、同玉、59歩、57玉、
  77龍、・・・ 43龍、62玉、32龍、71玉、

31香が消えたので32桂を取ることができました。

  41龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、

持駒に香がなくなってしまいましたが、代わりに桂があるので、今度は79龍に57玉とは逃げられません (57玉なら、59龍、58歩合、69桂、66玉、77銀以下)。

  79龍、58玉、59歩、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、33龍、43香合、同龍、62玉、52龍、71玉、

22歩を取ろうとする詰方に対して43香の捨て合で抵抗。

  61龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59歩、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、33龍、43香合、同龍、62玉、52龍、71玉、

  61龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59歩、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、33龍、43香合、同龍、62玉、52龍、71玉、

これで受方の持駒に香はなくなりました。 一方、詰方の持駒は桂香3で歩がなくなりました。

  61龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59香、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、33龍、62玉、22龍、71玉、

やっと22歩奪取に成功。 続いて12歩を取りにいきます。

  31龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59歩、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、23龍、33(43)香合、同龍、62玉、42龍、71玉、

受方は前回の59香を取って再び香が手に入ったので、香の捨て合で抵抗。 捨て合の位置は非限定です。

  51龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59香、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、23龍、62玉、12龍、71玉、

12歩奪取に成功。 次の狙いは13の香です。

  21龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59歩、57玉、77龍、・・・ 25龍、44玉、
  24龍、34香合、同龍、53玉、43龍、62玉、52龍、71玉、

24龍に対しても香の捨て合で抵抗。

  61龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59香、57玉、77龍、・・・ 25龍、44玉、
  24龍、53玉、13龍、62玉、22龍
、71玉、

13香に続いて、14桂を取りにいきます。

  31龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59香、57玉、77龍、・・・ 25龍、44玉、
  14龍、53玉、23龍
、62玉、32龍、71玉、

14桂を取ったところで、持駒は桂桂香香。

  41龍、82玉、91龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、58玉、59香、57玉、77龍、・・・
  34龍、53玉、43龍、62玉、52龍、71玉、

ここから63桂で局面の転換を図ります。 1周前でもすぐに63桂と打てるのですが、前回は32龍型なので、63桂、同金寄、41龍と攻めると72玉で逃れ。 52龍型でないと63桂が打てないようにすることで、1周稼いでいるのはうまいですね。

  63桂、同金寄、61龍、82玉、81龍、73玉、85桂、62玉、

ここから龍追いを再開。

  61龍、53玉、52龍、・・・ 49龍、68玉、
  79龍、57玉、59香、58歩合、同香、同玉、59歩、57玉、
  77龍、・・・ 43龍、62玉、52龍、71玉、

持駒に桂がなくなったので、再び79龍に57玉が可能になっていることに注意。

  61龍、82玉、81龍 まで605手

85桂で93が塞がっているので、これで大団円。
龍位置以外の非限定もほとんどなく、龍追い14往復で、600手を超えました。
成駒なしという厳しい制約の中で「寿」に迫る605手という長手数を実現したのはすばらしいですね。

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

平井康雄さん:
折り返しの構造が巧妙で、作品自体はうまくできていると思います。
しかし、これを「初形成駒なしの最長手数」とすることには若干抵抗があります。
それは11玉の配置です。 この配置は、途中で香合しなかった場合に、右辺に逃げられて不詰になるのを防ぐための配置のようで、双玉に意味はありません。
現実に、「11と」の配置でも成立することを確認しました。
つまり、と金1枚で済むものをわざわざ攻方玉にして、成駒なしを主張しているわけです。
結局は、違反ではないので、認めざるを得ないようにも思われますが、何か割り切れないものを感じてしまうのは私だけでしょうか?

盤面成駒なしの記録は、単玉・双玉を区別していないので、記録としては全く問題ありません。 そもそも盤面成駒なしを意識して創作しているときに11との配置は考えないのでは?

池田俊哉さん:
自信はあまりありませんが、これで詰んでいると思います。
中盤梅田氏作「逡巡の恋」を思わせる香-歩変換の部分、そして収束の桂活用部分がうまくできている
たくぼんさん:
香の有無で微妙に手順が変わりなかなか先に進まない。 600手超も頷ける手順です。
隅の老人Bさん:
たぶん、手数は645手。この暑さ、手数勘定は1回だけ。
竜追いの長手順だが、さほどの新味は感じない。

1往復余分に回ったのでしょうか。 迂回手順と思われるので、解答としては正解として扱いました。

占魚亭さん:
手数が分からなかったら、延命の香合を見逃していたかも知れません。
S.Kimuraさん:
龍追いして桂馬を2枚したところまでは行きましたが, その後にどうすればよいのか分かりませんでした.

惜しい。もうちょっとでした。

山崎健さん:
すばらしい!
表参道の合駒位置・タイミングの非限定をみごとに消して長手数化。
龍追いのコース、機構もすばらしく、脱帽です。

前記録保持者も絶賛!


記録展示室No.87 解答:6名 全員正解(下記)

  池田俊哉さん  隅の老人Bさん  占魚亭さん  たくぼんさん
  平井康雄さん  山崎健さん

当選者は、展示室で発表しています。