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詰将棋おもちゃ箱詰将棋美術館
アート展示室 No.111
 衣川秀樹さん 「ピラミッド」

詰将棋美術館
詰将棋美術館

棋譜ファイル(柿木将棋kif形式)

出題時のコメント:
最終手非限定 20手台

アート展示室No.111 衣川秀樹 「ピラミッド」

詰将棋は将棋の終盤を独立させたところから始まったので、最初は将棋の実力向上に役立つかというのが中心的な価値観で、 実戦型、妙手、難しさなどが評価されていました。 やがて詰将棋単体でのおもしろさを楽しむ人も出現し始めて、曲詰、趣向詰など将棋とは離れた魅力的な詰将棋が創作されてきました。

曲詰では添田宗太夫の「象戯秘曲集」詰将棋博物館)があぶり出しの作品集として有名です。 非常に多彩な形や文字が表現されていて、それを誰でも楽しめるように手順は意図的に易しく作られています。

初形曲詰でもあぶり出しでも、その形が魅力の中心であり、現在でも新しい形に挑戦している作家も多いのですが、 作りやすいシンプルな形で普通の詰将棋としての手順のおもしろさを追及する作家もまた多くいます。 アート展示室では、アートとしての楽しみを追及したいと考えています。

さて、本作はピラミッドの初形曲詰。 枠だけの三角形は前例がありますが、この大きさの密集三角形の初形は初めて。 王がその中心にいるのも本物のピラミッドみたいですね。

まずは43銀引不成と桂を取るところ。 その桂を打つのは46桂は同と、66桂は同桂でダメそうなので、同銀と金を取ります。 55玉と角を取られて入玉が心配ですが、25角が利いているので何とかなるでしょう。

  43銀引不成、同金、同銀不成、55玉、

56金、同玉、48桂では67玉で金2枚では足りません。 66金と飛桂2枚利いているところに打ち込むのが強手。 同飛は同銀以下簡単なので同桂で、同銀、同玉と攻めます。

  66金、同桂、同銀、同玉、

一見広そうな玉ですが、85飛と25角の利きが強力。 持駒も金金桂桂と十分なので、ここからは玉の逃げ方に注意して最長手順を探します。

  78桂、56玉、48桂、67玉、58金、77玉、

78桂に76玉は86飛以下、77玉は88金以下、67玉は79桂以下いずれも19手以下で詰み、56玉が最長です。

  87金、78玉、88金、79玉、89金、69玉、65飛、同と、
  59飛(68飛、79飛などもOK) まで23手

77玉に88金と抑えるのは、76玉、86飛、75玉で失敗。 87金で潜らせるのが正解で、69まで追えば飛を取って詰み。

作者「玉は普通下段に落とす方がいいのですが、5手目6六金に6手目同桂7手目同銀と上段に追い込んで詰まします。」

ピラミッド型の珍しい初形から9段目まで追い込んで詰ますちょっと意外な手順のおもしろい作品でした。

それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。

蛇塚の坂本さん:
桂2枚と金2枚と質駒の飛で何とか決めたかった。
山下誠さん:
初形は堅いピラミッドだが、手順は易しい。
小山邦明さん:
初形からは想像しにくい桂を持駒にしての力強い手順でした。
占魚亭さん:
崩すのがもったいない初形。
おかもとさん:
立体曲詰を期待したが、さすがに望蜀だったか。
ootanowatasiさん:
ピラミッドから逃げ出す玉の動きが面白い。
大西智之さん:
5手目▲6六金からのごつい手順で玉を「南半球の大海」に逃した後、 桂連打により直ぐに包囲網を再構築する展開が印象的でした。 次題のNo.112で初手からの桂連打(No.111と同じく二間トビの関係)の後、包囲網を解き「北半球の大海」に玉を逃す展開と対照的かなと感じました。
S.Kimuraさん:
玉が9段目まで行くとは思いませんでした.
池田俊哉さん:
後半追い詰となったものの、この形で飾り駒なし、不動駒四枚と言うのは見事と思える
松崎一郎さん:
ピラミッドから追われた玉が九段目までゆき、質駒の飛がトドメの駒になるとは意外でした。

アート展示室No.111 解答:10名 全員正解

  池田俊哉さん  S.Kimuraさん  ootanowatasiさん  大西智之さん
  おかもとさん  小山邦明さん  占魚亭さん  蛇塚の坂本さん
  松崎一郎さん  山下誠さん

当選者は、全題の解答発表のあと、展示室で発表します。