盤面全駒豆腐図式、香一色持駒、と金と歩の並びが美しい、「芸術の秋」特集のトリを飾るのにふさわしい初形。
三段歩の例の古作物(左図)を思い浮かべた人もいるかもしれません。
おかもとさんによると、この図は引用回数が最も多い、一番有名な詰将棋だそうです。
誰でも詰将棋を始めた頃見せられる、「はじめての詰将棋」の一つですね。
菅野さんの本作は、初形が美しいだけでなく、手順も楽しい趣向詰。
詰将棋初心者に趣向詰の楽しさを教えるのに絶好の作品として、今後広く使われるようになっていくのかもしれません。
この趣向自体は霜田雅弘さん(詰パラ1978年3月大学院81手)にあります。
菅野作はくるくる展示室向けの投稿作品でしたが、くるくるおもちゃ箱でほぼ同一手順の作品を紹介済(左図、くるくるNo.111)です。
机書斎さんの詰パラ1990年12月発表作品(棋譜ファイル)。
菅野作はこの形で実現したところに価値があり、アート展示室での出題とさせていただきました。
さて、手順を見ていきましょう。
香が8枚あれば、ずらっと並べて詰みですが、4枚しかないので、二筋に1枚しか使えません。
初手26香に35玉と逃げて、次に香が打てないとすると、34ととと金を捨てるしかありませんね。
すぐ45玉と逃げるのは44と引以下ずっとと金を引いて詰み。
いったんは同玉と取る一手で、24とからと金を引いて、結局45に行かせることに成功します。
26香、35玉、34と、同玉、24と、35玉、25と、45玉、
香1枚で二筋移動できました。
まだ香は3枚残っているので、この手順を繰り返せば9筋まで追い詰めることができそうです。
あと3回楽しみましょう。
46香、55玉、54と、同玉、44と、55玉、45と、65玉、
66香、75玉、74と、同玉、64と、75玉、65と、85玉、
86香、95玉、94と、同玉、84と、95玉、85と まで31手
余分な手は一切なくそのまま収束。
初形の盤面と持駒、手順、そしてきれいな詰上り。
様式美の塊のような作品でした。
作者 「初形一発(笑)。」
あの古作物の作者も同じことを言っていたかも。
形でも手順でも楽しめるくるくるアートは、詰将棋を始めてまだ手筋物しかしらない初心者に詰将棋の世界の魅力を伝えるのにぴったり。
解かなくても鑑賞するだけで十分楽しめるので、くるくるアートのBGVとかあったら嬉しくなりますね。
それでは、みなさんの感想を。 解答到着順です。
- 占魚亭さん:
- と金引きの味がいい。
- 山下誠さん:
- 手順はくるくる。 しかし初形と終形はみごとなアートです。
- 蛇塚の坂本さん:
- と金と玉のコミカルな動きが面白かった。
- 長谷繁蔵さん:
- 優しかった。30手越えるのかと心配しながら解く。心配症かな
- 小山邦明さん:
- 初形、持駒ともきれいで手順もすっきりの好作。
- きたさん:
- この形でちゃんとした趣向詰になっているのが驚き
- 鳥本敦史さん:
- 楽しいくるくるアートでした。
- S.Kimuraさん:
- 最初は香車を4枚並べそうになりましたが,くるくるになる手順が分かって今月唯一自力で解けた問題になりました.
- 池田俊哉さん:
- 古典名作を思わせるような初形-持駒だが、左に動きたがらない玉をどう追い立てるか、と言う作品。
8手一組で手順を書くとすごく奇麗
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