授業日誌 2003年 9月

9月11日(木)授業

校内模試答案返しと解説

「遺伝」イントロダクション

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8月24日に実施された校内模試の答案を返しました。1学期に学習した内容を復習する宿題の問題集からの出題です。基本的な用語の理解と記憶を確認する問題でした。点数の悪かった人はもう一度見直しておくこと。

2学期は「遺伝」の学習から始まります。古典的な「メンデルの遺伝の法則」の学習の前に,「遺伝子とは何か」から,学習することにします。
メンデルは遺伝子を実体のない「要素(element)」として,仮定しました。しかしそれから約100年後,遺伝子は実体のあるものとして確認され,それが,「タンパク質の設計図」であることが明らかになりました。それではなぜ,「タンパク質の設計図」が遺伝子としての役割を持つのでしょうか。それは,タンパク質こそが生物の体の構造を作り,生物の体の中でおこる様々な化学反応を制御しているからなのです。つまり,どんなタンパク質が作られるかで,どんな生物ができるかが決まるのです。その続きは次回。

9月12日(金)授業

酵素

遺伝子は構造と酵素を作るタンパク質の設計図

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酵素は,生体内での化学反応を制御する「生体触媒」です。「触媒」とは,特定の化学反応を起こしやすくする物質で,その物質自身は反応の前後で変化しません。
普通,化学反応は温度が高ければ高いほどよく起ります。しかし,酵素の成分はタンパク質なので,タンパク質は高温になると壊れてしまい,「触媒」としての機能を失います。そこで我々恒温動物は化学反応がスムーズに起きて,なおかつ,酵素が壊れない程度の温度である,37度に体温を保っているのです。

次の時間はカタラーゼと言う酵素の実験をします。それがどんな生物に含まれるのか,どのような状態でよく働くのかなど,班ごとに調べてみましょう。

9月16日(火)実習

カタラーゼの活性

カタラーゼはどんなものに含まれているか?

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まず,肝臓片を入れた試験管に過酸化水素水を注ぎました。激しく泡が出て線香を近付けてみると,「ぽっ」と言って炎が出ました。酸素だと言うことが分かりました。次に無機触媒である酸化マンガン(II)でも同様に泡が激しく出ました。肝臓片と,酸化マンガン(II)をあたためて試したところ,肝臓片からは泡が出ません。熱により酵素の活性が失われたことが分かります。一方,無機触媒の方は激しく反応し,一瞬で酸素の発生が終わってしまいました。線香の火を近付けた頃には酸素の発生は終わっています。

そして,用意したいろいろな材料でカタラーゼの活性があるかどうかを確かめました。わずかながらも酸素が発生したのは,トウガラシ(写真左),味噌(同左から2番目),切り干しダイコン(同3番目)をはじめ,チーズや生の食品などでした。キノコのエリンギでたくさんの酸素が発生したのはちょっと意外でした。乾燥したものにも,酵素が残っていたのです。一方,フリーズドライの野菜(写真右端)や,小麦粉,魚肉ソーセージなどは酸素が発生せず,焼いたタマネギからも酸素が発生しなかったことから,熱を加えた食品や,成分だけを精製してあるものには酵素がないか,性質が変ってしまっていると言うことが分かりました。味噌やチーズは微生物(コウジカビ,乳酸菌)がその中に残っていると言うことが分かりました。

9月17日(水)授業

遺伝の法則

一遺伝子雑種の実験から「優性の法則」

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メンデルはエンドウを使って交配実験を行ない,その結果から「遺伝子」の存在を予言し,その遺伝子の動向によって,エンドウの様々な形質の遺伝のしくみを説明しました。

まず,種子(マメ)の形質が丸いかしわかという対立形質に目をつけ,丸いものとしわのものを交配したらその子(F1)は,すべて丸いものでした。これは,丸くする遺伝子(A)と,しわにする遺伝子(a)があり,両親はその遺伝子を2つずつ持ちます(丸いものAA,しわのものaa),子にはそのうち一つずつが渡されるので,子(F1)は遺伝子をAaというふうに持ち,この時,A遺伝子はa遺伝子に大して優性なので,子の形質は丸く(優性形質に)なると考えたのです。この結果が後に「優性の法則」と言われるようになりました。

エンドウは花が開かないので放っておくと自家受粉します。

2学期になったら説明がくどくなりました(B)

9月18日(金)授業

遺伝の法則

分離の法則と検定交雑

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メンデルは配偶子が形成されるとき,2つ持っていた対立遺伝子のうち一つだけが配偶子に入ると考えました。2つの内どちらが配偶子にはいるかは同じ確率です。すると,もしたくさんの配偶子が作られると,配偶子の持っている遺伝子は,半分が片方,半分がもう片方となり,親の遺伝子型がヘテロ(Aa)の場合,Aを持った配偶子と,aを持った配偶子が1:1の比率でできといいました。これが,分離の法則で,メンデル遺伝では最も重要な部分です。そうなれば,前の授業で説明した,F2の分離比が3:1になることが説明されます。

とにかく大切なのは2つの遺伝子のうち一方は父親,もう一方は母親からもらったということ。(B)

9月24日(水)実習

遺伝の法則

遺伝シュミレーション

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今日は金曜日の授業を振り替えたので生物が2時間ありました。遺伝の法則をシュミレーションしてみました。封筒に入ったマッチが,有性遺伝子(印付き)と劣性遺伝子です。同時にせいのーでマッチを2つの袋から出し,組み合わせを確かめます。班ごとにはじめの12回目では,11:1とか2:1と1:1の比が認められました。ところが,試行回数を多くすれば,結果は3:1に限りなく近づきました。クラス全体では下の表の通りです。これが遺伝,確率なのです。

120回まで

320回まで

1946回

丸(87),しわ(33)

丸(269),しわ(91)

丸(1462),しわ(484)

丸:しわ=2.64:1

丸:しわ=2.96:1

丸:しわ=3.02:1

けっこうヒマな実験でした。が,3:1になってなぜか不思議???(生徒)

9月24日(水)授業

遺伝の法則
「独立に遺伝する」ということ

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今日の2時間目は,2遺伝子雑種について考えました。同時に二組の対立形質に着目しても,結果は,ぞれぞれ1対の対立形質に着目してきたのとなんら変わりはありません。ただ組み合わせが増えるだけです。

9月25日(木)授業

遺伝の演習

ー57ー

1遺伝子雑種,2遺伝子雑種の演習です。「遺伝」の分野は唯一数学のように演習ができるところです。と言うことは,試験にもいろいろな問題が出ると言うことで,演習をすればするほど理解が深まり点数がよくなると言うことです。
ポイントは1つの形質に関して遺伝子を2つ持つと言うことと,その2つの遺伝子が配偶子が形成される時には1:1に分離すると言うことです。

パズルです。難しく考え過ぎないように。(B)

9月30日(火) 授業

遺伝の実習2

−58−

前回に引き続き遺伝の演習です。同時に二組の対立形質に着目した場合,親から作られる配偶子の組み合わせがわかれば,子の遺伝子型,表現型とその分離比も容易に分かります。分離の法則が成り立つので,二組の対立形質をそれぞれ分けて考えて,あとで組み合わせても同じことです。
次に,子の表現型とその分離比が分かっていて,親の遺伝子型,表現型を推定する問題です。これは,対立形質ごとに分けて考えるのが断然やさしくなります。問題集の問題もやっておきましょう。

「珍しく授業で当てられので,少し緊張」(生徒)

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