授業日誌 2003年 10月

10月1日(水)授業

いろいろな遺伝

中間雑種,致死遺伝子,複対立遺伝子

−59−

マルバアサガオの花の色は赤,桃,白があります。赤くする遺伝子Aと白くする遺伝子aは互いに優劣がないのでAaの遺伝子型を持つ個体は中間雑種である桃色になります。
ハツカネズミの体毛を黄色くする遺伝子Yは,体毛を灰色にする遺伝子yに対して有性です。ところが,Y遺伝子は,ホモに持つと発生の途中で死んでしまう致死作用があります。ですから,遺伝子型YYの個体は存在せず,黄色のものどうし(Yy×Yy)の交配では,黄色のものと灰色のものが2:1であらわれることになります。
ヒトのABO式血液型はA,B.C3つの遺伝子が一組の対立遺伝子であり,ABOから2つの遺伝子を持っていることになります。また,AはOに対して,また,BもOに対して優性ですが,A,B間には優劣がはっきりしない不完全優勢です。遺伝子型AOのA型と,BOのB型の両親からは,4通りの遺伝子型の子が生まれてくる可能性がそれぞれ同じ確率であります。

「血液型の遺伝は興味が持てるので,よく頭に入ります」(生徒)

10 月2日(木)実習

酵素の実験

デヒドロゲナーゼの活性

−60−

2年生の酵素の実験が終わったので,ついでに1年理数科もやってしまいました。今日の実験の目的ですが,実際に起る反応は,泡が出るとか分かりやすいものではありません。そこで,指示薬を用いて反応が起きたかどうかを確かめます。ところがその指示薬は酸素があるとうまく働きません。

酵素と基質をそれぞれツンベルグ管の副室と主室に入れ,アスピレーターで空気を抜いた後,混合して40℃の水槽につけておくと。左の写真の右の管のように,メチレンブルーの青色が透明になり,反応が起きたことが分かります。左は,基質を入れていません。でも少し反応が起るのは,酵素液の中に基質が少量含まれていたからです。

右の写真は,副室をはずして空気を入れたところ。酸素があると,メチレンブルーはたちまち青くなってしまいます。

「今日から,白衣着用」(B) 「汚すといけないから,着たくない」(生徒s)

10月3日(金)授業

遺伝子の相互作用

−61−

一つの遺伝形質に二組の対立遺伝子が相互にかかわっている場合,一遺伝子雑種とは異なる交配結果が得られます。例えばスイートピーの花の色は有色(紫)が白に対して優性なのですが,劣性形質である系統の違う白どうしを交配した場合(CCpp×ccPP),F1はCcPpとなり形質は紫になります。一遺伝子雑種なら,劣性形質を持つものどうしを交配したら,劣性形質を持つものしか生まれてきませんでした。さらに,F1を自家受粉すると,紫と白が9:7の比でF2が得られます。
他にも,ある遺伝子の作用を他の遺伝子が打ち消したり,2つの優性遺伝子を持つと別の形質になったり,相互作用は様々です。
実は生物自体は,様々な遺伝子の相互作用によって作られているので,当たり前と言えばそれまで。

「次回はいよいよキイロショウジョウバエを扱います」(B)

10月7日(火)実習

ショウジョウバエの遺伝

−62−

    ×

痕跡翅のメス

野生型のオス


キイロショウジョウバエの交配実験は1.痕跡翅(vg)×野生型(OR)と2.白眼(w)×野生型(OR)の2つの交配を行ないました。すでに交配してあるものを,今日は,親(P)を確認して親を出す操作です。間違いなく,ラベルにある通りの交配がなされていました。

「みんな上手に麻酔をかけ,雌雄や,形質を見分けることができ感心」(B)

10月9日(木)授業

遺伝の復習 問題演習

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もう,中間試験まで明日あと1時間です。先にはすすまず,問題演習をやりました。「いろいろな遺伝」の分野です。遺伝の問題は,問題を多くすればするほどなれてきて,早く解けるようになります。「すべて自家受精」のときは,子の数が,親の数に比例しているということを忘れずに。

「遺伝子型の遺伝は興味があるのですぐ慣れました」(みんな)

10月10日(金)授業

遺伝の復習 問題の解説

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中間試験まで最後の授業。今までやってきた,遺伝の問題の解説です。難しく考えずに,パズルをとくように考えましょう。パズルをとくコツは,ルールをしっかり頭に入れることと,慣れることです。できるだけたくさんの問題をやって,慣れて下さい。試験範囲はたった,13ページです。

「せんせ,実験やろ!」(生徒) 「そんなに白衣を着たいのか?」(B)

10月21日(火)実習

ショウジョウバエの遺伝

F1の確認とF1mating

-65-

10月7日の実験のF1が大量に出てきました。先週中ごろから羽化が始まり,金曜日ぐらいに実験できればよかったのですが,先週は試験と遠足で,今日にずれ込みました。そのため,班によっては1つの飼育ビンから100匹あまりのF1が出ていました。
1.痕跡翅×野生型の交配では,F1はすべて野生型,2.白眼(♀)×赤眼(♂)ではメスはすべて赤眼で,オスはすべて白眼,3.赤眼(♀)×白眼(♂)では雌雄ともすべて赤眼になると予想されますが,2の交配でいくつかの班で赤眼のオスが出てきました。どうしたことか?

「たくさんですぎて大変です」(生徒)

10月22日(水)授業

中間テスト返し

−66−

先週行なわれた中間テストの答案返しと,問題の解説を行ないました。カタラーゼの実験と遺伝に関する問題でした。
実験に関する問題は,実際にその実験を実施していることを考えながら,考えてみて下さい。実験の目的や,期待する結果を考えれば,答えが導き出せる問題が多いです。

「応用問題もよく考えればとけます」(B)

10月23日(木)授業

染色体による性の決定

−67−

今まで遺伝子は仮定のものとして扱って来ましたが,減数分裂での染色体の振る舞いや,メンデルの分離の法則などから,遺伝子は実在し,染色体の決まった場所にいつもあるということが分かりました。
ところで,メスになるかオスになるか,性の決定は染色体によって決まる生物がいます。ヒトも22種類の常染色体を2本づつと,女性の場合はX染色体を2本,男性の場合はX染色体とY染色体を1本づつ持っています。染色体の持ち方で雌雄が決まります。

「染色体がXYでも,女性型の外形で生まれてくる場合はけっこうあります。」(B)

10月24日(金)授業

伴性遺伝

ー68ー

性染色体に着目する遺伝子がある場合,交配によっては,子の表現型や分離比が雌雄で異なります。今,実験で行なっているキイロショウジョウバエの眼の色(赤と白)は,白眼の純系のメスと赤眼の純系のオスを交雑すると,F1ではメスはすべて赤眼,オスはすべて白眼になります。

「ヒトの毛髪が濃いか薄いかも,伴性遺伝形質である場合があるそうです,ポイントは母方の祖父」(B)
「オー,ノ−」(生徒A) 「ラッキー!」(生徒B)

10月28日(火)授業

連鎖と組み換え

−69−

スイートピーの花の色と花粉の形に着目して交配すると,F2では独立の法則で学習したような9:3:3:1という比が出てきません。それは,着目した花の色をきめる遺伝子と花粉の形をきめる遺伝子が同じ染色体上にある,すなわち「連鎖」しているからです。さらに,F1が配偶子を形成する時には,染色体の乗換えがおこり,それが,着目する遺伝子の間に生じた場合,遺伝子の組換えが起ります。

「今日の授業は説明がくどくて,時間がかかりすぎて,おもしろくなかった」(反省 B)

10月30日(木)授業

組み換えかと遺伝子地図

ー70ー

連鎖している遺伝子の組換え価は,その遺伝子間の距離に比例します。なぜなら,染色体の乗換え(交叉)は,染色体のどの位置でも一様に起りやすいので,着目する遺伝子間の距離が大きければその間で乗換えが起る確率は大きくなり,狭ければ小さくなるからです。組換え価をもとに,染色体上の遺伝子の位置を表したのが,染色体地図です。

「今日は,高志高校SSHの江崎玲於奈氏の講演会に招かれました。授業は25分で終わりフェニックスプラザへ」(B)

10月31日(金)授業

遺伝子の本体

−71−

メンデルの遺伝学(古典遺伝学)は前回で終わり,分子生物学の世界へ。グリフィスが実験した肺炎双球菌の形質転換から,エイブリーはその原因物質が核酸であることを突き止めました。また,ハーシーとチェイスはウイルスが細菌に自分自身を作らせる時も,細菌の中に核酸を注入していることから,核酸(DNA)が遺伝物質であるということを裏付けました。

「今週は実験がありませんでした。週3時間ある週に,実験をしなかったのは初めてです」(B)

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