生命科学 2007年 6月

6月4日(月)授業

タンパク質7

酵素の種類

−12−
酵素は6つの種類に分類されています。
呼吸反応に関わる酸化還元酵素,エネルギーの生産に関わります。
消化酵素は,加水分解酵素で,生体高分子を低分子に分解します。
非加水分解的に原子団を除去するのが除去酵素,デカルボキシラーゼがこれに当たります。
原子団を分子から分子へ転移させる転位酵素は,アミノ酸が作られる時に働きます。
高分子を作る時にはエネルギーを消費する合成酵素(リガーゼ),異性体を作る時には異性化酵素が働きます。

6月8日(金)授業

タンパク質8

代謝

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生体内でおこる化学反応を代謝metabolismといいます。代謝は大きくわけると,異化cataborism同化anabolismに別れます。
生物は生存のためのエネルギーを異化によって得ています。異化とは,体内で有機物を無機物に分解する反応でエネルギーを取り出す反応です。有機物を分解する際,酸素を使うと,有機物は無機物にまで完全に分解し,大きなエネルギーを取り出すことができます。私達多細胞生物は生存に多くのエネルギーが必要ですから,酸素を使う,好気呼吸を行ないます。地球上に酸素が増加し,酸素呼吸をする単細胞生物が,多細胞生物に進化できたのでしょう。
一方,酸素を使わない嫌気呼吸は最初の生物が行なった異化で,有機物を十分に分解できないため,少量のエネルギーしか得ることができませんでした。私達の筋肉などでは,酸素が不足する時,緊急避難的に嫌気呼吸も行なっています。

6月11日(月)授業

タンパク質9

呼吸の反応経路

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生物の細胞が生存に必要なエネルギーをつくり出す呼吸は,嫌気呼吸,好気呼吸両方に共通の反応過程があります。グルコースからピルビン酸までの解糖と呼ばれる反応過程がそれで,はじめにATPのエネルギーが消費された後,脱水素反応がおこり,ATPが生産されます。酸素が無いと,この過程で分子から離れたエネルギーを持った水素が戻り,乳酸やエタノールになります。一方酸素が存在すると,この過程でとれた水素はミトコンドリアの電子伝達系に運ばれます。また,ピルビン酸が脱炭酸反応と脱水素反応で活性酢酸になり,それが,オキサロ酢酸と結合してクエン酸になりクエン酸回路がまわりまs。クエン酸回路は,脱炭酸反応と脱水素反応が起きて,そこでとれた水素はやはり電子伝達系に運ばれます。電子伝達系では,水素の持っている電子が,段階的にエネルギーを放出し,ATPが作られ,最終的に吸収された酸素と水素が結びついて水ができます。

6月15日(金)実習

タンパク質10

アルコール発酵の実験

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キューネの発酵管を用いてアルコール発酵の実験を行ないました。酵母菌に,グルコース(ブドウ糖),スクロース(ショ糖),ラクトース(乳糖)をそれぞれ基質として与え,約40℃に暖めて,アルコール発酵により二酸化炭素が発生する様子を観察しました。発酵管の盲管部に徐々に気体がたまっていきました。ラクトースを基質として与えたものと対照実験(基質の変わりに蒸留水を与えたもの)では,気体は発生しませんでした。発生した気体が二酸化炭素であることを確認するため,発酵管に水酸化ナトリウムを入れ,気体が溶解して管の中が減圧されるのを体感しました。

6月18日(月)授業

タンパク質11

アルコール発酵の実験考察

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前回の実験の考察を行ないました。アルコール発酵の基質はグルコースです。スクロースを与えても発酵がおこるのは,酵母菌がスクラーゼ(スクロース分解酵素)を持っていて,スクロースがグルコースとガラクトースに別れたからです。しかし,ラクトースでは発酵がおこらなかったのは,酵母菌がラクターゼ(ラクトース分解酵素)を持っていないからだと考えられます。ちなみにラクトースは加水分解されると,グルコースとガラクトースに別れます。
班によって,二酸化炭素が多く発生したのが,グルコースを与えた場合と,スクロースを与えた場合とふた通りありました。どちらが酵母菌のアルコール発酵に有効かは,単に気体の発生量を調べるのでは無く,単位時間当たりの二酸化炭素発生量(反応速度)を比較する必要があります。そのためには,記録した表から,2分当たりでもっとも多く気体が発生した所をもちいて,反応速度を求めてみましょう。

6月21日(木)実習

タンパク質12

脱水素酵素の実験

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呼吸反応の中で活躍するのが脱水素酵素です。脱水素酵素は有機酸から水素を奪い,自らの補酵素として働く原子団にその水素を運ばせます。メチレンブルーを加えると,補酵素に結合していた水素はメチレンブルーを還元し,青かったメチレンブルーが透明になります。しかし,反応液中に酸素があると,メチレンブルーは酸素により酸化形に戻るので,透明では無くなります。と言うわけで今回の実験はツんベルグ管と言う器具を使い,あらかじめ試験管の中の酸素(空気)を抜いておいてから反応を確かめました。基質としてコハク酸を与えると,肝臓をミキサーにかけた酵素益は,脱水素反応をどんどん起こし,メチレンブルーを還元しました。阻害剤を加えた試験管も,少しではありますが反応が起きています。基質を入れず蒸留水だけを入れた試験管でもほんの少し完納が起きているようでした。それはなぜでしょう。今日の実験は写真が無くてゴメンなさい。

6月25日(月)授業

タンパク質13

脱水素酵素の実験考察

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先週の実験の考察です。
酵素液に基質であるコハク酸を加えたものではおよそ10分で青い色が消えたのに対し,コハク惨に競争阻害剤であるマロン酸を加えると10分経っても少ししか色が薄くならないのは,マロン酸が酵素に結合し,活性部位を塞いでしまうからです。しかし,酵素反応が完全に起らなくなるわけで無く,反応速度が小さくなるだけでした。
基質を加えずに酵素液と蒸留水を混ぜたものでも,メチレンブルーの青色はいくらか薄くなりました。つまり,基質を加えなくても脱水素反応が起ったのです。そのわけは,酵素液として使用した肝臓の懸濁液にありました。肝臓の細胞の中には,呼吸反応の中間産物もあれば,そこで働く何種類もの脱水素酵素も含まれているのです。

6月28日(木)授業

一学期の復習

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一学期の学期末試験までの最後の授業になりました。
一学期に学習した内容を振り返りました。
試験対策プリントも配布しました。十分に復習して試験にのぞみましょう。

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