外乗を楽しむために

ここでは外乗を色々な角度から考えてみましょう。外乗を選ぶ際や楽しむための参考にして下さい。

1. 人間が動かすか馬自身が動くか

馬は記憶力が高く同じパターンの動きはすぐに覚えます。また、元々群れで生きる習性から皆でまとまって動こうとします。特に一緒に飼われている馬たちはその傾向が強いです。そこで幅の狭い道を毎回縦一列で動くと前の馬の後に追随するようになります。先頭と最後尾のガイドに挟まれて縦並びで歩く海外の観光外乗はその典型です。乗馬未経験の方でも練習もなく簡単なレクチャーを受けるだけで長いと2、3時間の外乗へ出られます。馬任せでもほぼ大丈夫です。この場合は走ることはありません。歩く(並歩)のみです。何かで前の馬との間隔が広がった時に小走り(速歩)に追いつくことがある程度です。バランスが取れない時には鞍につかまることができます。イメージは機械でない生きているメリーゴーランドのようです。誰でも気軽にゆったりと景色を楽しみながら外乗ができます。もう一方でモンゴルの外乗ツアーなどは道もない平原をまとまってはいるものの縦一列ではなく自由な位置で先導の遊牧民に連れられて行きます。前に馬がいるわけではないので馬任せにはできません。自動車を運転する様に自分でスピードと方向をコントロールしなければなりません。簡単なレクチャーでは乗りこなすことは難しいでしょう。馬を動かす技術を必要とします。ただ鞍につかまっているだけでは思い通りには動けません。この場合は技量に応じてどんどん走らせることも可能です。例に挙げた二つの外乗の違いは乗り手がどれくらい馬を動かすかということです。馬を動かす技量がどの程度必要かが外乗によって変わってきます。当ファームでは速歩までの外乗は前の馬についていく感じで、駈歩からはしっかり動かすことが必要となります。自分の技量に応じた外乗を選びましょう。不安な方は各施設に確認しましょう。

2. 手綱の持ち方

手綱の持ち方に違いがあることを記します。当ファームでは左右どちらかの手で左右2本の手綱をまとめて一緒に持ちます。つまり片手で馬を動かします。ウェスタンスタイルの外乗に多いと思います。空いた片手は鞍につかまることができます。鞍につかまっていても手綱を使うことができます。つかまっているのでバランスも崩しにくく、手綱も使えるのでコントロールも失うことはありません。少しハードなコースも鞍につかまれれば安心です。もう一方は2本の手綱を左右に分けて右の手綱は右手で、左の手綱は左手で持ちます。ブリティッシュで乗っている方ならいつもと変わり無しです。鞍につかまれば手綱はうまく使えなくなります。鞍につかまることがなければ問題はありませんが、手が空きませんから写真を撮ったり木の枝を避けたり出来ません。多分手綱を持つ以外に手を使わなくてもよい外乗となっていると思います。

3. 目線と姿勢

外乗中、どこを見ていれば良いのでしょうか。まずは景色を見てください。外乗のできるところはロケーションの良いところが多いと思います。四季折々の森の中、海岸、田園風景、雪景色、富士山、草原などに目をやってください。ところが普段馬場で乗っている方はどうしても馬を見てしまいがちです。足元が心配な方は地面が気になりやはり下を見がちです。足元の狭い範囲を見ていてはバランスも悪くなり、前方でのトラブルに気付けません。馬たちは危険を察知しようととても広い視野で2~300m先を見ていると思われます。馬が見ている範囲まで見ることができれば申し分ないでしょうが、せめて自動車の運転の時の目線位にして下さい。特に下り坂で足元に目線がいかないように気を付けて下さい。下り坂では目線を水平に少し遠めに置くと体も起きバランスが良いです。そして上り下りのある外乗での姿勢は上体が常に垂直を保つようにして下さい。馬がどんな体勢になろうとも垂直を維持して下さい。地球に対して上体が垂直であれば大きくバランスを崩すことはありません。不安定になるとどうしても上体は背中を丸くした前傾となりがちですが、実際は上体を起こすことが安定を得ることができる姿勢となります。背筋を伸ばして広い視野で臨みましょう。

4. スピードの維持

馬場で動く馬たちはどんどんスピードアップする感じではないと思います。外乗へ出た馬はどんどん行きたがります。我々と違って馬たちは一歩外へ踏み出したところから自分の馬房へ向かっています。曲がり角でどちらに曲がるか馬に任せれば最短であっという間に帰ってしまうでしょう。うちから離れていく方向にはのんびりで後半のうちへ向かいだすと急ぎ足になっていきます。そこで馬が行きたがってどんどんスピードが上がって前の馬を追い越すような勢いにならないための手綱の使い方を紹介します。どんどん速くなる馬は自動車に例えると下り坂を下るときのような感じです。ブレーキをかけなければどんどん速くなります。そこで下り勾配に合わせてブレーキを下り終えるまでかけ続けます。ブレーキを緩めると速くなり、踏みすぎると遅くなります。ちょうどいいブレーキの加減が必要です。滑らかに下れるようにブレーキをかけ続けるのです。手綱の加減も同じです。手綱を緩めると速くなり、引きすぎると遅くなります。引きすぎて緩めすぎてのように使うと速くなったり、遅くなったり、馬はどうすれば良いのかわからなくなります。一定に速さを保てるように一定にちょうど良い強さで引き続けてください。このブレーキの感覚は動かしている本人にしかわかりません。運転手が隣の人にブレーキの踏み加減を聞けないのと同じです。自分で見つけてくださいね。同じスピードで走り続けると馬もスピードを理解します。さあ前の馬に遅れないように追い越さないようにスピードを保ちましょう。歩様は関係ありません。歩いているときも走っているときも速すぎず遅すぎずペースを保ってください。縦並びでなく前に馬がいない時にもスピードを保って乗る方が乗りやすいです。

5. 道脇の草が曲者

飼われている馬たちのほとんどは乾草や麦などの穀類を食べています。ところが本来は生草が主食なのです。馬たちにすれば道脇の草を食べたくて仕方ないのです。歩く両脇に御馳走が続くわけです。チャンスは外乗に出た時だけになります。乗り手の様子を伺いながらここぞとばかりにグイっと頭を下げて一口いただきとなります。一口いけるともう一口もう一口ときりがなくなり、何度も馬の頭を引き上げなければなりません。この食欲はなかなか調教では解決できません。当ファームでは6月から10月まで生草で飼うので、ほとんど道草無しで外乗できます。生草はうちで食べると思っているようです。さて道草に悩まされないためには、始めから一口も食べさせないことです。食べようとしたところで食べられる前に手綱を引いてください。食べられてしまってからでは手遅れです。何度かトライして食べられないと諦めますが、その後も油断しないようにしましょう。

6. 安全に外乗

馬場と違い色々な状況の中を進む外乗では、時には思いもよらないことが起きることもあります。その時の対応を考えましょう。緊急ではないが違和感があるときには先導のガイドに伝えましょう。馬具の不備、鐙から足が外れた、馬の動きがおかしい、体調が悪いなど気付いたらすぐに伝えましょう。頭数が多く隊列が長い場合は後ろの方から前へ伝言してください。まとまって動こうとする馬ですから自分の馬だけ止めて態勢を整えようとすると遅れまいと慌てて追いつこうとしたり、その場でイラついていざこざしたりすることがあります。先頭が止まれば全体が止まりますから、止りたいときには先導のガイドに止まってもらいましょう。いずれにしても遠慮なくどんなことでもガイドに進言してください。また、緊急時は慌てないことが一番なのですが、これはなかなか難しいです。むやみに手綱を引っ張るのも問題です。手綱を引くのは止まれの合図なのですが、引き過ぎてしまうと下がれの合図になります。真後ろが見えないで下がればぶつかったり、踏み外したりと更に危険な状態になりかねません。前傾にならず鞍につかまり、できるだけ周りの状況を見ることがポイントになります。ガイドの指示に従い少し間を置けば次第に収まってきます。どこの外乗も安全に楽しんでもらえるように配慮しているのですが、生き物である馬に乗って様々な場所を進む外乗では100%安全を確保することは難しいのが現状です。日本全国、海外でもいろいろな外乗を楽しむことができます。海外では自己責任で馬に乗ることが当たり前となっています。事前に承諾書にサインを済ませてから出発します。日本ではそこまでにはなっていないと思います。気になる方は事前に安全面に関する確認をお勧めします。危険なこともあり得ることが前提です。自転車でも100%安全ではありません。しかしながらほとんど問題ありません。外乗もその位だと思ってもらえればよいかと思います。

7. 外乗についてもっと知りたい方

これまでに紹介した以外にも興味のあること疑問などがあれば下記よりお問い合わせください。