98年8月15日(土) 2日目

船でミコノスへ(ミコノス全図)

ドバイから約5時間のフライトを経て、朝6:20やっとアテネに到着。日本との時差は−6時間だから、出国からなんと26時間もかけてたどりついたことになる。うんざりするくらい長い長いフライトだった。でもってこれからまたミコノス島に渡るわけだから、考えただけで気が遠くなってくる。

入国審査が終わると、出口にハワイアンぽい日本人現地ガイド(女性)が待っており、合流。荷物をピックアップ後、両替をし(2万円=40500ドラクマ、ギリシャは空港の両替率も特に悪くないので、着いてすぐある程度の両替をしてもいいと思います)、ミコノス島行きの船に乗るためツアーバスでピレウス港へ。
バスの中では、@ギリシャはヨーロッパのなかでは比較的治安がよく、物価も安い。A100ドラクマ≒50円なので2で割れば大体いくらかわかる。B最近は少なくなったが、ギリシャのタクシーはすぐぼったくろうとするのでツーリストは特に注意。
などの案内があった。

さて「ギリシャの海の玄関口」と呼ばれるピレウス港に着くと、現地ガイドは「船内でのお弁当と桃」(かなりまずかった)を置いて「この船に乗ってね」と告げ、そそくさと帰っていった。
僕らが向かう、エーゲ海の代名詞ともいえる「ミコノス島」は第二次世界大戦後にリゾート地として注目されはじめ、現在ではヨーロッパ中からバケーションを過ごす観光客が訪れる。
その「ミコノス島」に行く船は「ナイアス」という名前の割と大きな客船だ。
8:00出航。5時間半の船旅。だんだん港が小さくなっていく。海の水も港のあたりは濁っていたが、出航して20分もたつと真っ青な水が眼下に広がった。これが紺碧の輝きを持つ海といわれる「エーゲ海」だ。僕らは感動と興奮を胸に甲板に陣取り、写真を撮りまくる。
「甲板で日焼けにいそしむよ」という木村と別行動をとり、ひとしきり自分の好きな景色の写真を撮っていたが、それも一段落し、同じツアーの医者夫婦(以下 栗原夫妻)や不動産屋カップル、OL2人組らと談笑。これで結構時間がつぶれた。
船はそれほど揺れることもなく、クルージング気分を満喫。やはり船は正解だ。
(小さな船の場合は揺れるので、あまりお勧めできませんが、海風も気持ちいいし、夏に島に渡る交通手段は断然船が気分いいですよ。)

途中シロス島、ティノス島に寄港し、新たに人を乗せた後、しばらくするとついにミコノス島が見えてきた。
船からどっと歓声が沸きあがる。見渡すかぎりの白い家はまるでマッチ箱のようだ。有名な風車も見えてきた。「これが写真で何度もみたミコノス島か...」甲板で腕組みをして島を見つめる僕は、感動のあまり言葉につまる。「ついにあこがれの地に辿り着いたのか」と思うと感無量だ。

港に着くとホテルに行くバスが現地英語ガイドと共に待っていたので、すぐホテルへ直行。
ホテル「テオクセニア」は白と青で塗られたオーシャンビューの2階建て。僕らの部屋449号室は2階だ。中に入ってみるとシンプルなプチホテルといった風情。
設備はバッチリ整っているとはいえないが、テラスもついてて(この場所が滞在中僕がフレッシュオレンジジュースを飲む定位置となる)、すぐ外は紺碧のエーゲ海。
リゾート気分を満喫できる部屋だ。
場所はミコノスタウンの外れだが、目の前にはミコノス名物「カトミリの風車」もあり、ロケーションは完璧だ。

早速ビーチにくりだそうということになり、ホテル近くの「メヤリアモスビーチ」へ。16:00だというのに陽射しが強く、海に入ってもすぐ乾いてしまう。湿気も少なくて、砂も払えばすぐ落ちるし、ビーチとしては最高だ。
あつい陽をあびながら、疲れていたので昼寝した。気がつくと18:00。でもまだ陽はさんさんと照っている。今日は夕暮れ時が一番すばらしいという「カトミリの風車」の写真を撮りに行くつもりでいたので、いったんホテルに戻ってシャワーを浴びる(シャワーを含めてこのホテルの水は海水だった。でもお湯が出ない部屋もあったらしいので我慢我慢。)。日没は20:00くらいだというのでしばし休憩。

19:30くらいに出かけると、ホテルの側に立つカトミリの風車はだんだん赤く染まっていくところだった。シャッターチャンスを逃すまいと、僕らは写真を撮る(左の写真)。
ミコノスの夕暮れを楽しんでいると、イタリア人の女の子が「シャッターを押して」と僕に声をかけてきた。僕が「はい ちーず」なんていいながら写真を撮ってあげると、なぜか木村が「ウィズ・ミー!」とかいって、その女の子と一緒に写真を撮ろうと横から入ってきた。僕は仕方なく二人の写真を撮った。木村はすごく嬉しそうだったので、まあよしとしておこう。(これは木村の「ウィズミー事件」として、この旅中彼をいじめるネタとして使った。以下は木村の本件についてのコメント。「美しいものは景色だけでなく、人も美しい。俺は美しいものは何でも好きだ。」)

風車をみた後、ミコノスタウンをしばらくうろついていたが、ハラが減ってきたので夕食をとることに。行き先は現地の人々にも人気でペリカンのペドロがいることでも有名な「NIKOS TAVERNA」だ。
現地に着くとさっそくペドロが現れた。ペドロはこの島のアイドルで、初代は交通事故で死んでしまったので現在いるのは2代目なのだそうだ。彼は「魚をくれ」と厨房の中をのぞきこんでいた。とってもおちゃめなヤツだ。
シーフードスパゲティ、ムサカ(ひき肉となすのラザニアっぽい包み焼き。ギリシャ名物料理。)、ラザニア、パン、ビール、ミネラル、グリークコーヒー(粉が下にたまった甘みのある濃いコーヒー)、カプチーノをオーダー。
以前、会社の荒岡さんと当時の派遣社員の北澤さんと3人で渋谷にある「ギリシャ料理 エーゲ海」に行ったときに、ムサカを食べたことがあるのだが、NIKOSのムサカの方が断然おいしい!シーフードスパゲティもボリュームがあってなかなか。
チップ込みで8500Drs(=4250円/2人)で安くて満足。

帰りにもう一度ミコノスタウンでショッピング。
僕と木村は革製品のお店でレザーのサンダル(3500Drs=1750円 安い!)をそれぞれ購入。また木村はアクセサリー店でシルバーリング(3500Drs=1750円)を購入し、ホテルに戻った。
ホテルに帰ると、疲れからかバタンキューといった感じで寝てしまった(木村曰く「何でお前は10秒で寝れるんだ?」→睡眠の欲求は何よりも優先するのです。)。
明日は早起きして猫の写真を撮りにいくぞ!


98年8月16日(日) 3日目

ミコノスの猫

朝4:30に目が覚める。辺りはまだ真っ暗。今日は早朝からこの旅の真の目的である「猫の写真」を撮りに行くのだ。早く陽よ昇れと祈る。
6:30。やっと明るくなってきた。「さあ出かけよう」とすると木村もごそごそと起きてきた。木村は昨日からお疲れモードに入っていたので、今朝は一人で出かけてゆっくり寝かせておこうと思っていたのだが、どうやら一緒にいくらしい。

さっそく出かけて猫探し。まずは港へ。
昼夜の喧騒とはまた違って、島が静かな穏やかな顔をのぞかせている。朝焼けが美しい。早朝に来ないとお目にかかれない姿だ。朝の路地もまた、人がいないためか
白さが際立って美しい。(ミコノスの路地はラビリンス。まるで迷路のように曲がりくねっているためなかなか元の場所に戻れないのもまた楽しい。)

しかしなかなか猫が見つからない。路地に入ってみる。いた!ついにいた!あわててカメラをかまえる。
総じてこの島の猫は人慣れしていて、あまり逃げたりすることはないのだが(きっと島の人々が猫たちを島の構成員の一人として大切にしているからであろう)、やはりベストショットは難しい。「そのままだよ〜」といっていい感じで撮ろうとしても、あっかんべーをするかのようにすぐソッポを向いてしまうのがくやしい。
猫に僕の存在を忘れさせながら、猫をみるたびシャッターを切る。黒猫は白い壁に良く映える。まるで影絵のようだ。日本猫っぽい三毛猫も多いのはちょっと意外。
街の外れに行けば行くほど猫が次々姿をみせた。

猫を追ってどんどん路地に入っていくうちに、「アノミリの丘」まで着いた。ここにも風車があり、有名な夕暮れスポットだ。
アノミリの丘から眺めた街並みもまた絶景。早朝だって夕暮れに負けず劣らずだと思うよ、きっと。昼間は人でいっぱいで、お祭りのような騒ぎだし、風景を眺めたり写真を撮ったりするのであれば、島の早朝はおすすめです。(木村は「丘からの朝焼けは最高だったが、朝からこんなに歩くとは思わなかった」とついてきたのをちょっと後悔していた)

ホテルに帰る途中、路地の白い部分に白ペンキを塗る少年をみかけた。「なるほど、この島の白さはこうして保たれているのか」と納得。


ミコノスのビーチ

1時間半後の8:00頃、ホテルに戻り朝食。コンチネンタル・ブレックファーストで、自分でスクランブルエッグ、ハム、チーズ、ソーセージ、パン、ミルクを取ってきて、海の見える席に陣取り、食べる。
青い椅子、白いテーブルでの優雅なひととき。時折涼しい風が吹く。こんなすがすがしく、気持ちのいい朝食をとったのは久しぶりだ。
前の部署にいる時、休みを取るとき決まって上司に「一生帰って来なくていいよ!」といわれたものだったが、「ここだったら一生帰らなくてもいいかな」と思えてくる(帰ったら仕事が忙しいのがわかっているし...)。

朝食後、今日はビーチへ。ヌーディストビーチ&ゲイビーチで有名なスーパーパラダイスビーチ(しかしすごい名前)に行こうと、木村と昨日から決めていたのだ。

スーパーパラダイスビーチはこの島で最もソフィスティケイトされた人々が集まることでも有名。僕らにそのテの趣味はないが、興味本位もありさっそく出かけることにした。
ミコノスタウンからスーパーパラダイスビーチまでは直行のバスはなく、パラダイスビーチからボートで行かなければならない。
まずパラダイスビーチ行きのバスに乗る(220Drs=110円)。30分ほどしてパラダイスビーチに着くと、乗り継ぎのためボート乗り場に向かった。
ボート乗り場の横にはダイブショップの看板があり、「エーゲ海のダイビングなんてカッコイイ!!」と思い「木村、スーパーパラダイス行ってすぐ戻ってダイビングやろうよ」というと木村も乗り気。あとでダイビングをやることで合意し、「グランブルーのエンゾとジャック」になった自分たちを想像してニヤニヤした。

ボートが来てスーパーパラダイスに向けて出発。定員オーバー気味に客を乗せたボート(木村曰く「一見難民船のよう」)はエーゲ海を進み、10分ほどで到着。
適当な場所に陣取り、周りを見ると、結構いるいる。トップレスのパイレーツみたいなおねーさんが。
村上春樹著「遠い太鼓」によると、エーゲ海のビーチには「エーゲ海の法則」というのがあり、女は「ここはエーゲ海なんだから別にいいのよ」みたいな感覚があり、男は男で「ここはエーゲ海なんだから当然なんだ」という感じで別にまじまじと見たりはしないそうだ。
僕らもエーゲ海の法則にならって(まじまじと見たらにらまれそうだったので)、何事もなかったかのように海に入ったり、陽を受けたり。
でもゲイっぽい人達はいないなあ。それほどオシャレっぽい人達もいないし、ちょっと拍子抜け。

1時間ほどたち、「じゃあパラダイスビーチに戻ってダイブやろうか」ということになり、着いたボートに「パラダイスに行きたい」と告げると、「パラダイスビーチに行くボートは14:00だから、ここで待ってろ」という。現在12:00。ちょっとそれはないよ。
スーパーパラダイスビーチの先に「エリアビーチ」というビーチがあり、そこがこのボートの終着場になっている。「いくらなんでも終点まで行けば戻るボートがあるだろう」と思い、再びボートに乗り、エリアビーチへ行く。

エリアビーチに着くと、女性のトップレスも多いが男性のヌーディストも多いのにびっくり(要は何も着ていないのだ!)。しかも男性ヌーディストの、いかにもゲイっぽい2人組がお互いにサンオイルを塗りっこしている。うーん異様な光景だ。
ビーチも奥に行けば行くほど過激になっている気がする。おいそこの男!座ってる俺の前をそのカッコで歩くな!!
気持ち悪いのでとっととパラダイスビーチに戻ろうとボートの時間を見るが、ガーン!なんと16:00までなく、あと3時間も待たなければならない!
やむを得ずダイブはあきらめてビーチレストランでアイスティーを飲み、近くにバス停をみつけミコノスタウン行きのバスに乗り、街に戻る。
30分ほどでミコノスタウンに着き、バス停からホテルに向かう途中のタベルナで昼食。僕はツナのサンドイッチとオレンジジュース(1200Drs=600円)、木村はギロとピーチティー(800Drs=400円)。木村は実は「ピザ」を頼んだのに、なぜかギロがでてきてしまった。多分「ピザ」が「ピタ」と聞こえてしまったのだろう。これはあとで気付いたことで、その時彼は「このピザうまい!」といって食べていた。
(ギロとはピタというナンのようなうすいパンにクリームチーズ、オニオン、薄切り肉などをはさんでくるくるっと巻いたファーストフード的食べ物。ギロピタともいう。日本でも渋谷の明治通り沿いのユナイテッドアローズ前あたりにギロを売る車がいつも止まっていて、回転する肉のかたまりからその場で肉を切り落として売ってくれる。このギロがなかなか美味で、僕は滞在中何度も食べた。)


I don't forget the Mykonos forever

ホテルに戻ってシャワーを浴び、現地の人々にならいシェスタをする。眠ること3時間。起きると19:00だったので、「朝行ったアノミリの丘で夕陽を見よう」と出かけた。
朝は誰もいなかったこの丘にも、夕焼けをみるために多くの人々が集まっていた。アノミリの丘からみる夕陽は、朝のそれとはまた違った表情をみせており、また美しい。「うーん、俺ってロマンチスト」なんて思いつつ、腕組みしてうっとりしながら夕陽が沈んでしまうのを確かめ、丘を下りて再びミコノスタウンへ。
ミコノス島最後の夜だからと、ブラブラしながらいろんなお店に入ってみる。
木村が「アクセサリーの店が見たい」(木村君は光モノが好き)というので、地球の歩き方に載っていた「THE WORKSHOP」という店へ。
この店は兄弟二人でオリジナルジュエリーを作って売る店で、シルバーリングやチョーカー、ブレスなどがたくさん並んでいる。店に入ると店員が日本語で声をかけてきた。
「コンニチワ、ワタシノ ナマエハ クリストス デス」 日本語を勉強していたことがあるらしく、ある程度は理解できるようだったので英語+日本語でしばらく話しをしていたが、地球の歩き方にこの店が載っていたことを思い出し、クリストスに掲載ページをみせる。すると彼は嬉しそうに、店中の人だけでなく店の外の人々にもそれを見せてまわる。
彼はよほど嬉しかったのか、僕らに「何か飲み物はいらないか?ビール、ジュース、ウィスキー?」と飲み物をすすめてくれる。僕が「ウォーター」というと冷蔵庫の中から水を出してきて差し出し、アクセサリーを加工するところ見せてくれたり、自分が「ブズキ(ギリシャの楽器。ウクレレみたいなもの。)」をやっていることを教えてくれたりしてすっかりフレンドリーになってしまった。
僕は本の掲載部分を切り取って彼にプレゼントすると、彼は大変喜んでくれて、一緒に記念写真をとる。木村がいいデザインのブレスレットを見つけたのでみせてもらうと「14000Drsを12000Drs(=6000円)にディスカウント!」してくれたので木村はそれを購入。1時間以上店にいたので、「そろそろ帰るよ。ありがとうクリストス。」
というと彼は「ちょっとついてこい」という。彼と近くのギャラリーまで一緒に行くと、「ここは自分達の経営しているギャラリーです。スモールプレゼントとして君たちに油絵をあげる。」と数十枚あるミコノスの風景画から好きなものを選ばせてくれた。僕も木村も白い教会が描かれているものをセレクト。
「ミコノスとクリストスのことは絶対わすれないよ!」と握手をし、店を後にした。いいヤツだった。また現地の人とふれあえたことがすごく嬉しく感じられた。
僕はいつかきっとまたこの島に戻ってくるだろう。
(なお、会社の営業の池谷さんと総務の笠野さんが9月下旬にミコノスに行くらしいので、この時撮った写真を彼に届けてもらうようお願いしてあります。彼は覚えてくれてるかな?)

夕食を「KOUROS」というタベルナでとる。ギロ、クラムスパゲッティ、チキン、ビール、コーラで10000Drs(=5000円)。昨日のNIKOSのほうが味は数段上か。パスタが太麺で味付けが薄いのがいただけない。
食べながら今日の出来事を話していると、木村が「いいこと考えた!」というので何かと思ったら「パツキンギャルが隣を通るタイミングでその娘がはいるよう俺の写真を撮ってくれ」という。(ちょうどストリート沿いの席に座っていたので。今回の旅における木村の金髪への執着心はすごかった。)しょうがないので木村を撮るふりしてパツキンギャルにレンズを向ける。僕がカメラを構えるたびに、木村がすごく嬉しそうな顔をし「撮れた?ばっちり?」と聞いてくるのがすごく滑稽だった(写真下が木村。ピントは後ろに合ってます)。

明日の出発が早いので、早めに食事を切り上げてホテルに戻る。
ミコノスはいい島だった。この島のすべてが僕の脳裏に焼き付いて、しばらく離れそうにない。「また来たい」と心底思える場所というのはそうはないだろう。
木村に感想を聞くと、「もう一度行きたい。でも今度こそダイビングしたい。言葉がもっと出来ればキンパツとコミュニケーションとれるのにと思うとちょっと残念だ。」と相変わらずキンパツにこだわっていた。





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